駅に到着する電車のブレーキ音、ホームドアが開く音、そして発車のモーター音……こうした音を文字や手話で視覚的に表現する装置「エキマトペ」がJR上野駅に設置されていています。どこまで“視覚化”されているのでしょうか。

JR上野駅ホームの自販機上に登場した「エキマトペ」

 ビュウウウウウウン ヒューーン ガタンガタンゴトンゴトン ルルルルルルルルルル ポロン♪ポロン♪ポロン♪
 
 このような“オノマトペ”を、あたかも漫画に書かれた効果音のように文字で表示するディスプレーが、2022年7月現在、JR上野駅のホームに設置されています。

 上野駅1・2番線、山手線と京浜東北線ホームの自動販売機上に設置されたこの専用ディスプレーの名は「エキマトペ」。耳が不自由な人に、ホームで鳴る様々な音や、車掌のアナウンスを文字と手話で伝える装置です。

 冒頭で紹介したオノマトペはその一部。発車した電車の変化するモーター音や、レールの継ぎ目を通るガタンゴトンの音、発車ベルやホームドアの開く音などが文字であらわされているのです。

 これは、突発的な事件・事故のほか、災害による電車の遅れや運休を、アナウンスだけでなく、視覚化(文字化)することで、耳の不自由な人にも漏れなく伝えようという実証実験です。何かが起きた際、駅員がその場で専用マイクを使ってアナウンスする内容も表示し、その声のトーンに応じて文字のフォントも変化するといいます。

 この視覚化にあたっては、富士通のスーパーコンピュータ「FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX1000」で構築したAIの学習モデルが活用されていて、マイクで集音した駅の音情報を識別しているとのこと。ではこのエキマトペ、どこまで文字化できるのか、富士通の未来社会&テクノロジー本部の方にお話を伺いました。

アドリブも文字化? エキマトペへの思い

 富士通の担当者によると、前出の通りエキマトペにはAIの学習モデルをつくっており、上野駅にて事前に収集した音にラベル付けを行ったといいます。

「まず、『まもなく1番線に各駅停車〜』と流れてきたら、アナウンスと同様の文字と手話をディスプレーに流す、ホームドアの開く音が流れてきたら、「ポロンポロン」と表示する、というように、特定のアナウンスや音に応じて表示する文字や手話の内容をAIに学習させています。そしてエキマトペの筐体にはマイクが設置されていますので、そこでリアルタイムに音を集音し、AIが音を識別、事前に学習させていた通りにディスプレイへ表示させる流れとなっています」(富士通)

 なお、1・2番線でホームドアの開く音などに差異があるのか、という問いには、「1・2番線ホームに関しては、どの車両がきても音は一緒です」ということでした。
 
 ただ、もうひとパターンあって、その場で車掌などがマイクで話した内容を富士通の「FUJITSU Software LiveTalk」がテキスト変換し、さらにDNP(大日本印刷)の「DNP感情表現フォントシステム」を通じて、文章の内容に適した感情豊かなフォントで表現するケースもあるそうです。

 最後に、ホームに行った際に“このエキマトペは観ておいた方がいい”というものを紹介してもらいました。

「どれもぜひ観て頂きたいのですが、ひとつは、上野駅での実証実験ということもあり、オノマトペと一緒に表示される手書きアニメーションにはパンダが登場します。あともうひとつは、各番線アナウンスとともに表示される手話動画です。これは事前に撮影したものを流しておりますが、実際に上野駅で働いているJRの駅員さんに手話をしていただきました」(富士通)

 富士通の担当者はエキマトペの設置目的について、「ろう者にとって安全安心な鉄道利用環境になることはもちろんですが、健常者の方がエキマトペを見たときに、考え方や行動が変わることを期待しているところもあります」と話します。そのひとつとして「今回のように、駅員さんが手話を覚えてくれることなども、行動の変化の一つだと思っています」ということでした。

 エキマトペの実証実験は12月まで実施。JR上野駅を利用する際には是非チェックしてみてください。