自衛隊では部隊としての能力発揮が必須のため、ことさらチームワークが重視されます。その一環で海上自衛隊の教育カリキュラムに必ずあるのが「短艇競技」。団結力必須のこの競技、かなり過酷だとか。経験者のリアルな声はいかに。

海上自衛官ならもれなく最低1回は乗船経験アリ

 海上自衛隊が運用する船の代表格といえば、もちろん護衛艦でしょう。ほかにも潜水艦や掃海艦艇、補助艦といわれる補給艦や練習艦などもあるほか、そういった大きな艦艇以外にも、えい船(タグボート)を始めとした各種支援船などもありバラエティに富んでいます。

 しかし、これらとは別に、海上自衛官であれば必ずと言ってよいほど全員が乗船経験を持つ船があります。その名は「短艇(たんてい)」。いうなれば手漕ぎ式のボートと形容できるこの船、海上自衛隊の教育では欠かすことのできない存在です。

 短艇は、通称「カッター」とも呼ばれ、全長は約9m、重さは約1.5トンあります。短艇訓練ではこのボートを12名の漕ぎ手と1名の指揮者、1名の艇長によって動かしていくのですが、推進力は各漕ぎ手が操る櫂(かい)のみ。

 櫂は、いわばオールのようなものですが、その重さは10kg近くあるとか。10名以上の大所帯かつ超重たい櫂を操作しなくてはならないので、チームワークは必須です。

 自衛艦乗りはひとたび出港すれば、艦という閉鎖空間で共同生活をします。救援など呼べない海の上では、誰かのミスが命取りになりかねません。そこで、海上自衛隊の教育機関では、短艇の運用を通してチームワークを鍛えるのだそう。

 実際に部隊では、エンジンを備えた内火艇(ないかてい)などを運用していますが、技術が進歩した現在でも大事なカリキュラムの一つになっています。なお、教育期間の最後には短艇競技、すなわち班対抗の短艇レースが行われ、それまで培ってきた団結力を班員一丸となってぶつけます。

 そんな、汗と青春の代名詞的存在「短艇」。さぞかし身体を酷使するのだろうと思い、海上自衛官の夫であるやこさんに大変さを聞いたら「短艇は手やお尻の皮がむけるので、裏技としてパンツの裏に雑巾を縫い付けたりするんだよ」とのこと……。やっぱりハードだった!

 ちなみに、防衛大学校(海上要員)や海上自衛隊幹部候補生学校では「総短艇」という競技もあります。これは「総短艇用意」の号令がかかると、何をしていても短艇まで走って行って船を水面に降ろし、班員皆でコースを漕いで勝敗を決めるというもの。基本的に予告はないそうなので、せめてトイレに入っている時に号令がかからないよう、祈りましょう。