ポーランドが締結した韓国からの大型兵器調達契約、そのなかには戦闘機FA-50も含まれています。イタリアから導入していた練習機の戦闘機型ではなく、韓国から別の戦闘機を導入した背景には、ポーランドの危機感がにじみ出ています。

ポーランドが韓国から48機購入の戦闘機「FA-50」とは

 ポーランド国防省は2022年7月27日、韓国からFA-50軽戦闘/攻撃機を48機導入すると発表しました。あわせてK2戦車を約1000両、K9自動榴弾砲を約650両も韓国から導入するなど、非常に大きな兵器調達契約が結ばれました。

 FA-50は韓国のKAI(Korean Aerospace Industry)がロッキード・マーチンから技術支援を受けて開発した超音速練習機T-50の軽戦闘/攻撃機型です。このT-50からは今回ポーランド空軍に採用されたFA-50と、練習機としても使用できるTA-50という、2種類の軽攻撃機型が開発されています。

 TA-50はMk.82無誘導爆弾、AGM-65マーベリック対戦車ミサイル、無誘導ロケット弾、AIM-9サイドワインダー空対空ミサイルなどの運用能力を備えていますが、戦闘機搭乗員が実用戦闘機での勤務を開始する前の訓練の総仕上げを行うための練習機「LIFT」(戦闘機前段階練習機)、という性質の強い航空機です。

 対してFA-50は、韓国空軍が運用しているF-5EタイガーIIと、2007年に退役したジェット軽攻撃機A-37「ドラゴンフライ」の後継機として開発されました。TA-50をより本格的な軽攻撃/軽戦闘機としたもので、JDAM(無誘導爆弾の誘導装置キット)やレーザー誘導式ロケット弾の運用能力が追加されています。

 また2019年からはロッキード・マーチンの照準ポッド「スナイパー」の搭載能力と、AIM-120「アムラーム」中射程空対空ミサイルの運用能力を付与するための改良作業が開始されています。この改良を受けたFA-50は、飛行性能や兵装搭載量などは及ばないものの、F-16などと同等の空対空、空対地攻撃能力を持つことになります。

 ポーランド空軍は数年前から、旧ソ連製のスホーイSu-22を後継する戦闘攻撃機の導入を模索していました。同空軍はLIFTとして、イタリアのレオナルドが開発したM-346を導入しています。

 M-346からは軽戦闘/攻撃機型のM-346FAも開発されていますが、M-346FAではなく韓国からFA-50を導入したのは、ポーランド空軍の戦闘機戦力の構成が大きく影響しています。

FA-50 導入の理由は?

 ポーランド空軍は主力戦闘機としてロッキード・マーチンのF-16C/Dを使用しています。FA-50とその原型機であるT-50は操縦装置にF-16と同じサイドスティックを使用し、コックピットにもF-16C/Dと同様、2枚の大型液晶ディスプレイを配置するなど、F-16と高い互換性を備えているものです。

ポーランドのマリウス・ブワシュチャク国防大臣は、F-16の操縦経験のあるパイロットのFA-50への機種転換が容易であることを、FA-50導入の理由の一つとして挙げています。今回導入計画が発表された48機のFA-50のうち12機は、2023年中に引き渡される予定となっています。

なぜいま? ウクライナ侵攻後にポーランドが置かれた立場

 ポーランドはロシアのウクライナ侵攻に危機感を募らせており、2023年度から国防費を対国内生産(GDP)の3%にまで引き上げる計画を発表しています。Su-22の後継機を提案していた他のメーカーがどのような納入スケジュールを提案していたのかは定かではありませんが、防衛力を早期に強化したいポーランドにとって、導入計画発表から1年半で12機のFA-50の納入を可能とする韓国の提案は、ポーランドにとって魅力的であったことは間違いありません。

 FA-50はポーランドに「選ばれるべくして選ばれた」と言えますが、ポーランド国防省がFA-50と同時に導入計画を発表したK2戦車とK9戦車の導入の背景には、ポーランドのドイツに対する不信感もあるものと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

ドイツは助けてくれない

 ウクライナの隣国であるポーランドはNATO加盟国の中でもウクライナに対する軍事的支援に力を入れており、同国陸軍の主力戦車であるT-72Mを200両以上、ウクライナに供与しています。

 ポーランドはウクライナに供与したT-72Mの穴埋めとして、韓国にK2、ドイツにレオパルト2戦車の最新仕様、レオパルト2A7の購入をそれぞれ打診しましたが、ドイツ政府が難色を示した結果、2022年中に180両の納入を約束したK2を選択したと言われています。

 ドイツは2022年4月にゲパルト対空戦車をウクライナに供与すると発表しましたが、最初の3両がウクライナに到着したのは3か月を経た7月のことで、7月26日付のフィナンシャルタイムスは、ドイツ語で地上最速の動物であるチーターを意味するゲパルトが「亀のような速度でウクライナに到着した」と、揶揄交じりで報じています。

 ロシアのウクライナ侵攻を「明日はわが身」として危機感を募らせているポーランドにとって、ドイツのこのような姿勢は容認できるものではなかったと考えられます。

 今回ポーランドが導入を決めた韓国製兵器は、性能面において競合他社の製品と遜色はなく、またポーランド軍の要求に応じた早期の引き渡しや設計変更、ポーランド政府が求めた国内生産の要求に、韓国政府と韓国企業が柔軟に対応したことが最大の勝因であったことは間違いないでしょう。ただ、ことK2戦車に関していえば、意地の悪い言い方をすればドイツの“アシスト”も少なからず影響したものと、筆者には思えてなりません。