JR高麗川駅の近くに、「ポッポ道」と名付けられた遊歩道がありますが、途中には踏切警報機が立っています。それもそのはず、ここは廃線跡なのです。

あの踏切は何線…? 列車は来ず

 遊歩道を歩いていると、突如にして踏切警報機が現れる場所があります。そこに鉄道はなく、その警報機が鳴ることはありません。なぜ設置されているのでしょうか。

 場所は埼玉県日高市の「ポッポ道」。高麗川駅の近くにあります。同駅はJR八高線の電化・非電化の境目になっていることでも知られますが、そんな駅からかつて、北東方向に約1.4kmの専用線が延びていました。線路の先には太平洋セメントの埼玉工場があり、駅と工場のあいだを貨物列車が行き来していたのです。

 線路の所有者だった太平洋セメントは、1998(平成10)年に秩父小野田と日本セメントが合併して誕生した日本最大のセメントメーカーです。同工場は元日本セメントの工場で、1963(昭和38)年に運行開始した専用線は、高度経済成長で次々とビルなどが建てられた東京の発展を支えた歴史遺産といえるでしょう。

 しかしセメント輸送は、1983(昭和58)年に運搬用の地下ベルトコンベアーが完成したことで、列車運行の必要性がなくなり、1999(平成11)年に廃止されました。

 その後、専用線の跡地は日高市へ寄贈されました。市は「ポッポ道」と名付け、遊歩道へと再整備。レールや踏切といった専用線時代に使用されていた鉄道遺構の一部も残されたのです。

 遊歩道にはベンチのような座れる場所も整備されているので、天気のよい日には子連れのママたちが井戸端会議をしている様子も見られます。ママたちがおしゃべりに興じているあいだ、子どもたち線路や踏切の周囲で遊んでいます。本来なら、踏切やその周辺で遊ぶことは厳禁ですが、ここでは列車が通過することはありません。

 線路や踏切といった鉄道関連の施設は交通公園などでも見られますが、廃線跡である「ポッポ道」なら元“ホンモノ”。往時が偲ばれます。地域のボランティアが清掃や緑化活動に勤しんでいるほか、近隣の保育園児の散歩コースにもなっています。