ボーイング747のトレードマークとなっている“コブ”のうえに、さらに大きなコブをつけた異形の貨物機「ドリーム・リフター」があります。この二重コブ飛行機は、なぜ生まれたのでしょうか。

747-400Fの3倍の収容力

 2006年9月9日、一風変わった形に改造された「ジャンボ・ジェット」、ボーイング747貨物機が空へ飛び立ちました。「ドリーム・リフター」と称される747-400LCFです。この機は「ジャンボ」のトレードマークとなっているコブ(アッパーデッキ)の後ろに、さらに巨大なコブがついているのが特徴です。

「ドリーム・リフター」は、同じベースモデルの貨物型である「ジャンボ貨物機」のひとつ、ボーイング747-400Fと比べ、約3倍の容量を積み込むことができる収容力が特徴。その貨物室は、縦7m、横7m、長さ30mで、「ミニクーパーが80台入る」ほどの収容力を持つそうです。

 日本で「ドリーム・リフター」は中部空港に頻繁に飛来してきますが、ほかの国内空港ではまず見られません。それどころか、この機は4機だけしか製造されておらず、世界的に見ても、非常に珍しい飛行機ということができるでしょう。

 このユニークな巨大機が生み出された背景には、ボーイング社が手掛け、「ドリーム・ライナー」の愛称で、現在も主力商品として製造されている旅客機「787」の存在があります。

 ボーイング社は787を開発するにあたり、自社だけでなく、イタリア、そして日本と協同し開発が進められることになりました。

 その際、資金の分担以上に、最も大きな課題となると想定されたのが、部品をどのように輸送するかということでした。アメリカ国内であれば、別の場所である程度組み立てられた状態の胴体や主翼など、比較的大きなパーツであったとしても、トラックなど陸送を使うことができますが、海を超えてしまうとそうはいきません。とくにアメリカ〜イタリア・日本を海上輸送するとなると、時間がかかりすぎて、最終的には787の生産効率の悪化につながってしまう可能性もありました。

「ドリーム・リフター」が中部に来まくりなワケ

 そのため、ボーイング社はパーツの輸送で「ジャンボ・ジェット」の改造機を用いることに。背中に大きな貨物スペースを設け、787むけの大型パーツを輸送することにしたのです。また機体も、長尺パーツを搭載できるよう、胴体後部が横に折れ曲がるように開く構造が採用されています。

 日本で787のパーツを製造する工場は中部地方に集中しています。中部空港に「ドリーム・リフター」が発着するのは、そこで作られた主翼などのパーツを、同機を用いてアメリカの最終組立工場に空輸するためです。ちなみにこういった関係から、787の初号機は中部空港内の複合施設「フライト・オブ・ドリームズ」で見学可能です。

 2006年の「ドリーム・リフター」の初飛行は、機体の改造作業を行った台湾で実施されました。初飛行のフライト時間は約2時間で、担当したテストパイロットは「LCF(ドリーム・リフター)に乗っていることを忘れしまうこともあったほど、うまくいった」といった趣旨のコメントを残しています。

 なお、旅客機の背中を大きく膨らませて、巨大貨物機とするアイデアは、「ドリーム・リフター」が初めてではありません。

 たとえば往年の貨物機であれば、ロケットなどの部品を運ぶためプロペラ旅客機「ボーイング377」をベースに改修が図られた「グッピー」シリーズがあります。また現代であれば、エアバス社が、ヨーロッパ各所で作られた大型の旅客機パーツを輸送する目的で、A300やA330を改造した貨物機「ベルーガ」シリーズを運用しています。

 ちなみにエアバス社、実は「ベルーガ」をデビューさせる前は、前述の「グッピー」を契約して借用し、パーツ輸送に充てていました。そのため一部からは、「エアバスの翼はボーイング製」と揶揄されたエピソードもあったそうです。