最近では見かけることが少なくなったバグガード付きのパトカー。しかも当初は装備していても、転属に伴って外してしまうこともあるようです。あると便利そうなのに、なぜ非装備になったのでしょうか。

2000年代初頭が有り無しのライン

 ひと昔前のパトカーには備えられていたものの、最近のパトカーではあまり見かけなくなった装備品のひとつに「バグガード」があります。

 これはボンネット上面に取り付けられたにアクリル製の透明な板のことで、その名のとおり「虫除け」を目的としたものです。高速道路を走行中、フロントガラスに小虫や飛び石などが衝突するのを防ぐ目的で、昭和の時代から全国の高速道路交通警察隊(通称、高速隊)の所属車両に採用されていました。また、高速隊から一般道を取り締まる交通機動隊や市井の警察署へ転属した車両が、バグガードを取り付けたまま、街なかを走っていることもありました。

 パトカーの代表的車種である「クラウン」で見てみると、170系ベースのパトカーまでは取り付けられていたものの、2005(平成17)年度から配備されるようになった180系、いわゆる「ゼロクラウン」のパトカーからは姿を消しており、その後は復活することなく現在に至っています。

 バグガードがあるとフロントガラスが汚れたり、飛び石などで傷やひび割れが入ったりするのを予防でき、便利なようにも思えますが、装備されなくなったのはなぜなのでしょうか。埼玉県警に聞いたところ、バグガードを取り付けなくなったのは、警察庁の方針によるものだとのこと。ゆえに警察庁に問い合わせると、資料が残っておらず、経緯は不明との答え。

 そのため、警察車両に詳しいカメラマンに話を聞いてみると、断定はできないものの、バグガードが不採用になったことについて次の理由を話してくれました。

バグガードが姿消した複数の要因

 ひとつめの理由は、コストの削減。パトカーには都道府県の予算で購入する、いわゆる「県費モノ」といわれる車両と、警察庁が一括購入して全国の警察へ必要数ごとに割り振る「国費モノ」といわれる車両がありますが、後者の場合は数百台単位でバグガードが取り付けられていたそうです。そうなると、1台当たりの単価はそれほどでなくとも、それがまとまると結構な金額になります。

 実際、2002(平成14)年度に国費調達された170系クラウンベースの交通取締用四輪車と、2006(平成18)年度に国費調達された180系クラウンベースの交通取締用四輪車の1台当たりの単価を比べた場合、前者は201万円なのに対して後者は245万円です。排ガス規制への適合や、安全装備の充実などベース車自体のコスト上昇も含まれているものの、この金額の差を鑑みるとバグガードをなくすことで少しでもコストの上昇を抑えようと動いたのも納得できるでしょう。

 ふたつめの理由は、いわゆる「外部突起規制(外突規制)」に対応したというもの。これは歩行者保護の観点から、衝突時あるいは接触時に歩行者へ傷害を与える恐れのある突起を車両外装からなくそうというもので、国際基準に合わせる形で2001(平成13)年に日本の法令へ盛り込まれました(猶予期間を経て2009年以降の新車から適用)。バグガードのようなパーツだけでなく、乗用車のフロントグリル上に見られる立体のエンブレムやマスコットが数を減らしたのも、この規制が関係しています。

転属に伴い外してしまう例も

 最近のクルマは、自車に対してだけでなく、相手、特に歩行者などと接触してしまった場合にダメージを軽減するよう、バンパーだけでなくボンネット自体が衝撃を吸収するように設計されています。そのような構造とバグガードの装着は相反するといえるでしょう。前出のカメラマンは、とくにこの「外突規制」の影響が大きいではないかということでした。

 また、ほかにも車両の空力性能がよくなったことで、フロントガラスに虫があまりぶつからなくなったというのも、バグガードが姿を消した理由の一つとして挙げていました。

 なお、常にきれいな状態を維持するパトカーの場合、洗車のさいにバグガードは意外と邪魔だそう。そのためなのか、高速道路交通警察隊から交通機動隊や警察署へ転属になったパトカーのなかにはバグガードを外してしまう車体も少なくないようです。

 このように日本では見ることが少なくなりつつあるバグガードですが、海外では「ボンネットガード」などの名称で純正オプションになっているものも多く、「ランドクルーザー」や「ジムニー」といった車種のものが日本にも輸入されています。それらの多くは、ボンネットの先端に寝かせる形で取り付ける形状です。