南海本線の堺市・高石市内の高架化で、いくつかの珍しい鉄道風景が、見納めとなりそうです。その中には、南海以外に影響が波及している例もあります。

4駅分を高架化工事中

 南海本線の堺市内から高石市内にかけて、2022年現在、連続立体交差事業が進行中です。諏訪ノ森・浜寺公園・羽衣・高石とその周辺部が高架化され、計13か所の踏切が除却されることになります。

 この工事の過程で2021年5月より、羽衣駅から2駅分だけ海側に走る支線「高師浜線」が、3年間の運転休止に入りバス代行となりました。異例の長期となる運転休止に話題が集まりましたが、そのほかにも、見納めとなる風景があります。

●【ほぼ消滅】浜寺公園駅の「変則待避線ホーム」

 浜寺公園駅のホームは2面4線で、通過待ちができる構造となっています。といっても難波方面は特殊で、ホームの両側を通過線と待避線が挟み込むのではなく、ホームの先端部が手前に切り欠かれ、そこへ待避線が分岐して進入する形になっています。

 似たような例は、京急蒲田駅やかつての東武線北千住駅ぐらいしかありません。終着駅では京阪の淀屋橋駅、JR京都駅0番線周辺などで、一本のホームで切り欠き直列に列車を扱う風景が見られます。

 2022年5月に仮線ホームの使用開始に伴い、この切り欠き待避線は本線から切り離され、使用終了となっています。高架化後は、線路4本の外側待避線2本のみにホームが設置される構造となる予定です。

もうひとつの「100年級」駅舎は使用終了

●諏訪ノ森駅の「上下線がズレたホーム」

 浜寺公園駅の北隣にある諏訪ノ森駅も、変わった構造です。上下線で、ホームが「千鳥式」に、踏切をはさんで北側と南側に分かれて配置されているのです。

 これもレアな配置で、全国で数例しか見られません。諏訪ノ森駅は「スペースが無かった」という理由で、1966(昭和41)年のホーム拡幅をきっかけに、現在の配置となりました。他にはトンネル内に設けられたえちごトキめき鉄道の筒石駅や、またがる2つの地区にのりばを配置した名鉄名古屋本線の島氏永駅などがあります。

 高架化後の諏訪ノ森駅は、真正面にホームが向かい合わせになる、ごく普通の駅構造となる予定です。

●阪堺・浜寺駅前駅「もうひとつの骨董品級駅舎」

 大阪市内と堺市の中心市街地をむすぶ阪堺本線は、終点の浜寺駅前駅の手前で、南海本線をまたいでいきます。これが南海の高架化工事に支障となるため、対応が練られました。

「立体交差の手前に仮の終着駅を設け、その先は5年間運行休止」という案もありましたが、利便性を損なうということで、南海をまたがずに並行し、浜寺公園駅の真横に浜寺駅前駅を移設する案が採用されました。

 南海よりも海側にある現在の浜寺駅前駅は、街の片隅に古い小さな駅舎がぽつんとあるだけの簡素な終着駅。駅舎は1912(明治45)年の開業時期からのものとされ、100年を超える歴史を持つ、味わい深い建築物です。

 南海の高架化工事後の同駅について、堺市は「浜寺公園駅での乗り継ぎ利便性を高め、交通結節点の機能向上を図るため、現在の場所に復旧することは考えておりません」という趣旨の説明をしています。よって今回の移設により、この古い駅舎も役目を終えることとなります。

 南海の浜寺公園駅も1907(明治40)年完成の駅舎が長らく使われていましたが、高架化工事に伴い運用を終了。しかし2017年に建物を丸ごと約30m移設し、線路の傍らでカフェとして保存活用されることになりました。

 これは先述の諏訪ノ森駅でも同様で、大正時代のステングラス入りの木造駅舎は国の登録有形文化財に指定されています。こちらは2020年に移設され、現在はNPO法人により試験活用として、交流スペースなどに転用されています。