時の悲運にも見舞われた、夢あふれる飛行機でした。

野心あふれる試作機

 もし飛行機が長い滑走路を必要とせず、地表からそのまま真上へ離陸できたなら――。そんな夢をいち早くかなえようとした機体が、イギリス製の複合ヘリ試作機フェアリー「ロートダイン」です。同機は今から65年前の1957(昭和32)年11月6日に初飛行を行いました。

 フェアリー・アビエーションによる「飛行機を垂直離陸させる」という理想を具現化したこの機体は、まさに飛行機の胴体上部にヘリコプターのような巨大ローターを組み合わせたものでした。

 このローターは、主翼プロペラで水平飛行している間にも役目を果たしています。飛行中の向かい風を受けて上方向の力を補助的に得るというものです。
 
 さらに、ローターの回転には、羽の先端部に空いた穴から高圧気体を吹き出すというシステムを採用しています。最大のメリットは、機体側に回転の反作用をもたらさず、テールローターによる制御が不要という点にありました。

 このように数々の新機軸が用いられていた「ロートダイン」。初飛行や試験飛行でも大きな問題は発生せず、最高速度324km/hで飛行可能で、かつ水平飛行からの急浮上もできるとあり、まさに次世代の扉を開く新ジャンルの航空機といった存在で、世界中から注目を集めていました。

 しかし、この機体は量産化されず試作機止まりでした。その理由は、ローターからの噴射音が爆音で不快だったこと、既存の航空機と比べ運用するさいの費用対効果(コストパフォーマンス)などで上回れなかったなどがあります。加えて開発元のフェアリー・アビエーションが国策による合併で事業を縮小することになったことが追い打ちをかけ、開発は打ち切られてしまいました。