ほぼマッハ10の「超音速領域」を打ち立てました。

記録達成とともに退役

 今から18年前の2004(平成16)年11月16日。NASA(アメリカ航空宇宙局)の無人実験機「X-43」が、航空機としては史上最速となる1万1845km/h(マッハ9.68)という速度記録を打ち立てました。

 これを達成したのはロケットエンジンではなく、概念としては古くからある「空気を吸い込んで燃料と混合させ、燃焼して推進力を得る」スタイルのエンジンでした。これだとロケットよりもコストが低いため、実用化が実現すれば高速移動に革命をもたらす技術です。

 古くから構想されていた新機構の「スクラムジェットエンジン」は、飛行中に自らが正面から受ける空気そのものが圧縮空気となるもの。ただ、この原理が働くためには、音速を遥かに超えたスピードで進んでいることが前提のため、実験でもロケットに搭載されて加速し、マッハ2付近で切り離されて、そこからようやく自力飛行を開始しています。

 搭載された約1kgの水素燃料を10数秒で完全燃焼し、記録達成後はそのまま海上へと落下、そのまま機体は失われています。なお、飛行は音速の10倍に達したにもかかわらず安定しており、プロジェクトは成功と判断され、スクラムジェットエンジンの研究は「X-51」に引き継がれていきました。

 NASAのスタッフは当時、「いずれは民間機にも採用されるだろう」と話しています。今年(2022年)7月24日には、日本でもスクラムジェットエンジンを開発するための基礎研究として、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の観測ロケットを使ってスクラムジェット燃焼試験が行われ、マッハ5.5まで速度を出すことに成功しています。

 JAXAは将来、宇宙往還機や大陸間高速輸送機などにスクラムジェットエンジン搭載機が使われるだろうとしていることから、もしかしたら今後、有人のスクラムジェット機のテストも行われるかもしれません。