ANAも導入したL-1011「トライスター」は、ロッキード社が最後に開発した旅客機です。実はこの機は、最初は特徴的なルックスではなかったようです。どのような経緯で開発されたのでしょうか。

「3発」だから「トライスター」?

 ロッキード社のL-1011「トライスター」は、ANA(全日空)もかつて使用し、同社の念願だった国際線定期便就航も担当した3発ジェット旅客機です。1970年11月16日に「トライスター」は、カリフォルニア州のロッキード社の工場がある空港から初飛行に成功しました。

「トライスター」の最大の特徴は、「Tri-Star(三ツ星)」の名称から想像できるように、主翼に2基、最後尾に1基、合計3基のエンジンを装備していること。その一方で、JAL(日本航空)などが導入したライバル機、ダグラスDC-10も同じようなスタイルを採用していますが、2機種は尾部のエンジン・ダクトの形状に違いがあります。

 というのも、「トライスター」の尾部エンジンは、空気の取り入れ口と吐き出し口が直線的ではなく、S字型に曲がった形状を採用しています。ここは、直線型の尾部エンジンを採用しているDC-10との見分け方のひとつになっています。

 全長は約55m、翼幅は約50m。胴体幅は約6mで、通路を2本持ち、エコノミークラスであれば横に2-3-2の7列の座席を配置可能です。航続距離は約5000kmで、その後開発された長距離派生型では約7000kmのものや、太平洋を横断できる約1万kmの航続距離を持つものまで登場しました。

 この「トライスター」が開発された1960年代は、航空機メーカー各社が、多くの旅客を収容でき、ある程度の距離を飛行できる大型のジェット旅客機の開発に挑戦していました。代表的なものでは、「ジャンボ・ジェット」と呼ばれたボーイング社の747,そしてダグラスDC-10などです。そのようななか、ロッキード社でも新型ジェット旅客機の開発に着手したのですが、当初からこの3発機スタイルを導入したわけではありませんでした。

実はいろいろあった「トライスター」開発経緯

 当初ロッキード社が検討していた新型旅客機案は、エンジンを2基搭載した形状のものでしたが、この当時はまだエンジン2基のジェット旅客機の運航に関して、洋上飛行に制限がありました。そこで長距離飛行でも制限がかからない、3発エンジン機として開発が進められたとされています。

 そして「トライスター」には、エンジンそれ自体にも特徴があります。搭載されているものは、この機のために開発されたイギリスのロールス・ロイス社製「RB-211」ターボ・ファン・エンジンです。実はこのエンジンの開発が頓挫しかかり、結果的に「トライスター」の完成に暗雲が立ち込めことがありましたが、最終的にはイギリスが国家の命運をかけて実用化にこぎつけています。

 ちなみに、RB-211は実用化してからは、経済的に優れたエンジンとの評価を得ることができ、のちにボーイング747をはじめとする他社機にも使用されています。

 冒頭のとおり、わが国では、ANAが1974年より「トライスター」を1974年より採用しました。これは、JALがDC-10を採用したことも関係があったのかもしれません。ANAでは、同型機就航にあわせ、5代目のCA(客室乗務員)制服を導入。この制服は「トライスター・ルック」と呼ばれました。

 世界的に見ると製造機数250機とヒット作とはいえず、ロッキード社が最後に手掛けた旅客機となってしまった「トライスター」ですが、ANAでは、躍進を支えるステップのひとつになりました。

 ANAの「トライスター」はおもに国内幹線で使用されたほか、先述の通りANA念願の国際線定期便であるグアム線も担当。同社の整備士の技術の更なる向上などに関しても大きな役割を果たしました。国内の航空ファンのあいだでは、「トライスター」もしくは、「エル・テン」と呼ばれ親しまれることが多く、いまでも根強い人気がある機体と記憶しています。

 ちなみに、「トライスター」の名称は、ロッキードが社員から募集して名付けられたそうです。同社では、空の事象や宇宙の名称を機体に付けることが多く、この機にそれにのっとったものとなりました。