溝の口駅と新横浜駅の間に、有料道路を経由する珍しい路線バスが運行されています。「南武線沿線→新横浜駅」以外の需要もつかみ盛況ですが、東急新横浜線の開業が迫る中で減便も。この路線はどうなっていくのでしょうか。

新幹線乗車にも、サッカー観戦にも!お値段強気のショートカットバス路線

 2023年3月に「東急新横浜線」が開業し、都心から相鉄沿線への直通運転が始まります。この開業によって、JR南武線の沿線である川崎市北部(中原区・高津区など)から新横浜方面への鉄道アクセスは大幅な改善が期待できそうです。
 
 一方で、南武線沿線から新横浜への現在のアクセス手段として、2001(平成13)年に運行を開始した東急バス「新横溝の口線」(溝の口駅〜新横浜駅)があります。この路線は“高速バス”ではないものの、有料道路「第三京浜道路」を経由して両駅をほぼ最短距離で結ぶとあって、新横浜から新幹線に乗車する際の移動手段として地域に定着しています。実際に乗車してみましょう。

 行き先表記に「直行」と太字で書かれたこのバスは、その名の通り、溝の口駅〜新横浜駅を途中4か所(溝の口側2か所・新横浜側2か所)のみの停車で駆け抜けます。

 車両はほとんど普通の路線バス仕様ですが、自動車専用道を通るとあってシートベルト完備、第三京浜では左側車線を終始慎重に走ります。両端の駅からインターチェンジ(京急川崎IC、港北IC)までの一般道区間もそれなりの渋滞はありますが、それでも所要時間は25分程度。鉄道での移動だと東急・JRなどの各路線で1〜2回の乗り換えが必要なことを考えれば、時間短縮の効果は相当なものです。

 新幹線への乗り換えだけでなく、6万人近い人々の仕事場がギュッと集まる新横浜のオフィス街(新横浜1丁目〜3丁目の合計)への通勤利用も目立ちます。全般的に朝の新横浜行き、夕方の溝の口行きで利用者がかなり多いようで、つい先日この路線に導入されたばかりの“スマホ定期券”で乗車する人々も。

 また、溝の口側では巨大なマンション群や「かながわサイエンスパーク(KSP)」がある「高津中学校入口」バス停、新横浜側ではオフィス街の北端にある「烏山大橋」バス停(橋の南側)での乗降も目立ちます。日産スタジアム(横浜国際総合競技場)の前にも停車するため、イベント時には南武線・田園都市線からのアクセス手段として乗客が急増し、通常時は20分に1本程度のバスも増便されます。

 なお運賃は現金500円(IC450円)と、鉄道利用に比べて少々強気です。それでも賑わっているバス路線ですが、「東急新横浜線」の開業でどう影響を受けるのでしょうか。

新横浜線が開通しても需要は高い? しかし「減便」

 このバス路線が健闘を続けてきた背景には、南武線の沿線である川崎市北部から、新横浜駅があるJR横浜線沿線(港北区・青葉区など)への“ヨコ移動”の難しさにあります。

 横浜市・川崎市の市域は山手に向けて長く伸び、海側の中心部への”タテ移動“手段は充実しています。しかし市境の多くは山間部ということもあり、“ヨコ移動”の事情はもとより今ひとつ。バスが安定して通れる道路自体があまりありません。

 なお横浜市側は、新横浜から川崎市の多摩川沿いまで1本で行ける計画の道路(宮内新横浜線)が2020年に地下鉄高田駅の北側まで延伸しましたが、そこから川崎市側にはつながっていません。

 しかし南武線の沿線からの新幹線利用となると、品川駅からの利用も視野に入る東急沿線と違い、距離的にどうしても新横浜駅を選択することになります。そこで大幅なショートカットができるこのバス路線が重宝されるのです。

 こうしたなかで東急新横浜線が開業すると、武蔵溝ノ口〜(南武線)〜武蔵小杉〜(東急線)〜新横浜という1回乗換のルートができます。運賃は454円(IC運賃)、乗り換えを含めない所要時間は約18分です。一見すると東急バスの方が不利にも見えますが、南武線の武蔵溝ノ口駅〜武蔵小杉間は、ラッシュが激しい南武線の中でも最も混み合う区間であるため、これを避けて座れるバスを選び続けるユーザーも一定数いるかもしれません。

 しかし東急バスは2022年12月1日に、この路線を管轄する新羽営業所の管内でダイヤ改正を実施し、「新横溝の口線」は日中を中心に運転本数を3割ほど削減、最終バスも30分ほど繰り上がります。東急新横浜線の開業まであと4か月。その先の動向次第では、さらなる減便や廃止もあるのかもしれません。「東急バス新横溝の口線」の今後が注目されます。