高速道路の「スマートIC」が増え、これまであまり見られなかった大都市の混雑区間にも整備されるようになってきました。そうなると心配なのが「一旦停止」運用による渋滞。一旦停止は解消されないのでしょうか。
異例の交通量になりそうなスマートICも
高速道路のETC専用出入口「スマートIC」は、2023年3月末現在で全国153か所まで広がっています。さらに事業中のスマートICも51か所あり、今後数年で200を超える見込みです。地方都市から整備が進みましたが、近年は大都市圏でも増えてきました。
たとえば、2015年には東京都内に中央道の府中スマートIC(府中市)が開通したほか、2021年には東名高速の渋滞区間に綾瀬スマートIC(神奈川県綾瀬市)が完成しています。また現在、外環道に整備中の外環八潮スマートIC(仮称、埼玉県八潮市)なども、東京からかなり近いスマートICになります。
従来型のICのETCレーンはノンストップで通過できますが、スマートICは、レーンの前で一時停止が必要です。府中や綾瀬では、接続する一般道側の交通量がそれほど多くないこともありICでの渋滞はほぼ見られないものの、場所によっては、休日などにスマートICの入場待ち渋滞が起きているところもあります。
こうしたなか、東京に近い場所で、一般道側の交通量が極めて多い場所に建設が予定されているスマートICがあります。東関東道の「検見川・真砂スマートIC」(仮称、千葉市)です。
場所は東関東道の湾岸千葉IC〜宮野木JCT間で、東京方面への入口と、東京方面からの出口のみの“ハーフIC”が設けられます。接続するのは国道357号と国道14号が合流・分岐する箇所付近で、その交通量は1日6万台以上。千葉市の道路計画課も、スマートICとしては交通量がかなり多い場所になるといいます。
「スマートICだけを設けると確かに渋滞が懸念されます。接続部については、現在の片側2車線に対し、その容量を侵さないよう部分的に車線を増設します。また下り線側(市原方面)については渋滞対策として、IC出口の先の主要渋滞箇所となっている2交差点を高架で越える『検見川立体』を国の方で整備することとしています。もともと渋滞の課題を抱えていたところであり、スマートICの整備にあわせ解決を図ります」(千葉市 道路計画課)
渋滞しない? それでも「一旦停止」のワケ
検見川・真砂スマートICの一時停止による渋滞については、ゲートを2レーン分整備することもあり、そこまで大きな問題は想定していないといいます。開通後の状況を見ながら、一旦停止が不要な従来型のICへ格上げするような構想もないとのこと。
「従来型のICにすると、本格的な料金所を設けなければならず、規模がもっと大きくなり、用地買収などで周りへの影響が出ます。スマートICにすることで、スピード感をもって利便性の増進が可能です」(千葉市 道路計画課)
実はこの「一旦停止」こそが、スマートICのキモともいえる特徴です。非ETC車にも対応する有人料金所を基本としていた従来のICに対し、スマートICは約3分の1の用地で設置可能。通常のETCゲートは4台の車両検知器で車両の位置を管理しながらノンストップで通過させるところ、検知器を1台にし、車両停止後に道路側の設備と車載器の通信を行う仕様になっています。
検見川・真砂スマートICの場合は、隣接する湾岸千葉ICが成田方面への入口と、成田方面からの出口のみとなるハーフICであるため、従来、千葉市街から東関東道を東京方面へ向かう場合は、湾岸習志野ICもしくは京葉道路の穴川ICへ回る必要があります。この事業は、千葉市の都心部から東京方面の高速道路へのアクセス性を高めるだけでなく、穴川IC周辺の渋滞緩和にもつながると期待されています。
ちなみに、検見川・真砂はスマートICの分類としては「本線直結型」ですが、同じく東京に近い外環道の混雑区間にできる外環八潮スマートICは、「SA・PA接続型」です。高架の外環道からランプで通じる地上の「外環八潮PA」が整備され、そこにスマートICが接続する形となります。