飛行機内で下半身を露出する行為は、当然「即アウト」で許されないものです。しかし実は過去に、この行為が許され、乗客全員が下着を脱いだ状態で飛んだフライトが存在。この実現には、とある背景が関係しているかもしれません。

「ドリンクは冷たいもののみ」などの工夫も

 海外メディア「New York Post」などが、機内での「トンデモ事件」を報じています。とあるアメリカ人ラッパーが、デルタ航空の東京発ミネアポリス行きの機内で2023年4月17日、CA(客室乗務員)に対し局部を露出し、さらにわいせつな行為におよんで逮捕されたというものです。機内で下半身を露出する行為は、当然「即アウト」で許されないものです。
 
しかし実は過去に、この行為が許され、乗客が下着を脱いだ状態で飛んだフライトが存在しました。

 2003年、チャーターされた1機のボーイング737が、100人弱の乗客を乗せ、マイアミからメキシコまで飛びました。この便は、直訳すると「原則裸の旅行」という社名の旅行代理店がチャーターしたものです。このフライトでは、シートベルトサインが外れると、下着を含む服を脱ぐことが許されていました。

 CNNなど当時の現地メディアの報道によると、担当する乗員は当局の規則に従い制服を着用すること、やけど防止のためドリンクは冷たい物のみ、降下する際の機内アナウンスで乗客に「服を着るよう」説明する、などの条件があったといいます。

 このフライトは冒頭のラッパーの事件とは全く異なる趣旨で行われたものですが、背景には、当時のアメリカの航空事情が関わっていたという論調もあります。

「全裸フライト」実行時の米航空事情

 この「全裸フライト」があった2年前の2001年9月、アメリカでは同時多発テロが発生し、航空業界に大きな衝撃を与えました。航空需要は減退を余儀なくされ、デルタ航空のほか、アメリカの大手航空会社であるユナイテッド航空、ノースウエスト航空(のちにデルタ航空に合併)が経営破綻を起こすほどの影響を及ぼします。

 また、この事件をきっかけに旅客機のテロ対策も大幅に強化され、同国の搭乗客への身体検査や手荷物の検査が厳重化されました。

 このようななか、たとえばニューヨークタイムズのコラムニスト、トーマスL.フリードマンは「服を脱ぐことによって機内の安全性、安心感を高めることができる」趣旨のコメントをしています。つまり、テクノロジーが進化しても、乗客がみな裸ならば武器などを服の中に隠し持つことができなくなるということです。

 先述のとおり「全裸フライト」は、少々ユニークな旅行代理店が主催したものであり、直接的な関連性は不明ですが、アメリカ国内でこのような論調もあるなか行われました。

 なお、このフライトが実施されたのはこの一度きり。ほとんどの乗客は、同じくこの旅行代理店が主催するツアーに向かうための乗客で、フライト時間は1時間少しだったそうです。


※一部修正しました(5月15日11時24分)。