模型ファンの間でウクライナは東欧随一の模型大国として知られています。ロシア侵攻後、同国の模型業界はどうなったのか? その様子はなんともたくましいものでした。

「MADE IN UKRAINE」を強くアピール!

 静岡模型教材協同組合主催の「第61回静岡ホビーショー」が、2023年5月10〜14日まで静岡市のツインメッセ静岡で開催されました。同イベントでは、国内外の新製品プラモデルが公開されました。

 海外製のプラモデルも同イベントでは多く見かけますが、そのなかでも、2022年2月からロシアの侵攻を受けているウクライナは、ICM、ミクロミル、AMP、ドラウィングス、クリアプロップなど、戦車や戦闘機などを縮尺した「スケールモデル」のメーカーが多く、東欧随一の模型大国として模型ファンの間では知られています。ロシアの侵攻から1年が以上経過した現在、それらウクライナ製品がどうなっているのか会場で聞いてきました。

 ICM製品の輸入代理店を務める模型メーカー、ハセガワの担当者は「ICMのスタッフは無事と聞いております。商品開発や流通の方も一時期は滞りしましたが、キーウに会社があるので、現在は落ち着ているようです」と話します。

 侵攻により、もの作りへの活気がなくなったと思いきや、「去年の9月には『キーウの幽霊』を発売し、大きな話題になりました」と驚きの答えが。ロシア侵攻直後に有名になったエースパイロット「キーウの幽霊」の乗るMiG-29戦闘機を再現したものだそうで、ウクライナ軍のデジタルパターン迷彩が、デカール(水を使って貼り付けるシールのようなもの)で再現されているのが特徴なのだそう。

 さらにICMは「ブレイブウクライナ」という模型シリーズを立ち上げ、ウクライナ侵攻中に話題になった兵器をどんどんキット化してく方針だそうです。なんともたくましい限りです。

 ICMは、プラモデルの流通を通して自国の置かれている現状を世界にアピールしていくことを狙いにしているようです。そのため、商品の箱には「MADE IN UKRAINE」とわかりやすいところに表記されています。

 AMP、クリアプロップ、アミュージングホビーなど、多くのウクライナメーカーの輸入卸を行なっているビーバーコーポレーションでも、「MADE IN UKRAINE」と表記されたプラモデルの箱を多数見かけました。

 ビーバーコーポレーションの担当者によると、去年のロシアによるキーウ侵攻が失敗し、首都周辺が落ち着きを取り戻してからこうした箱が増えているそうで、「『なぜ侵攻するのか?』や『暴力と戦ながら作っています』といったメッセージを添えて販売するメーカーもあります」と話します。

 ブース内での展示品では、「オークと戦争中です」という英語で書かれた箱を発見。「オーク」とは想像上の怪物ですが、最近のウクライナでは、ロシア兵を指す言葉でもあります。

 なお、こうした模型メーカーはキーウなどのウクライナ西側に多くあるそうで、侵攻の直接的な影響は現状では低いとのこと。ただ流通に関しては大変で「空輸で少しずつというのができないので、ある程度の量を揃えたらポーランドから陸路で輸送という方法で運んでいます」とのことでした。

国内のメーカーでもウクライナ軍関係の製品が

 一方、国内のメーカーでもウクライナにまつわるものをタミヤが企画しています。

 2023年4月にはウクライナ軍仕様の「1/35 レオパルト2A6戦車“ウクライナ軍”」を発売。この狙いに関して、同メーカーの広報担当者は「(メーカーとして)模型を作って楽しんでもらうというのは第1にありますが、情勢を鑑み、手に取ってなにかを感じて頂きたいという思いもありました」と話します。

 なお、タミヤはこれまでも時事ネタでキット化をしたことがあり、今回が特別という訳ではないようです。そして会場では、「1/35 M1A1 エイブラムス戦車“ウクライナ軍”」の製品化も発表しました。発売日はまだ決まっていないとのこと。

 ちなみに、「レオパルト2A6」はウクライナに供給はされましたが、全容のわかる映像はまだ公開されておらず、M1A1「エイブラムス」に関しては、まだウクライナへ供給されていません。

 そのため、現有のウクライナ兵器など参考に同国仕様のカラーリングーやマークの位置を考えたそうです。難しかったことについて同メーカーの営業企画部の担当者は「レオ2のときは、ウクライナ所属を示す白い十字マークの大きさがよくわからなかったので苦労しました。結局、複数の大きさを用意し、買った方にどれをつけるか選んでもらうことにしました」と明かしてくれました。

※一部修正しました(5/16 15:27)