長崎空港を拠点に、同県内の離島路線へ主に就航する地域航空会社「ORC」が新型旅客機「ATR42-600」を導入しました。従来機とはどのような違いがあるのでしょうか。実際に乗ってみました。
20年超ぶりの新型主力機
長崎空港を拠点に、同県内の離島路線へ主に就航する地域航空会社、ORC(オリエンタルエアブリッジ)では、2023年7月より、新型ターボプロップ旅客機「ATR42-600」の運航を開始しています。同社が20年超ぶりにメイン機として導入した、この新型機でのフライトはどのようなものなのでしょうか。
ATR42-600は、現在の国内地域航空会社の主力ターボプロップ機のひとつで、ORCのほか、HAC(北海道)やJAC(日本エアコミューター)、天草エアラインなどが導入しています。ORCは2001年から同社で運航されてきたメイン機「DHC8-200」の後継フラッグシップとして導入。客室は48席で構成され、DHC8-200の39席よりキャパシティも向上しています。
また、同社では、ATR42-600の導入を機に新たな機体デザインを採用しています。新デザインは、大きく羽根を広げ五島灘を悠々と飛ぶ海鳥をイメージしたものだといいます。
DHC8-200のフライトも筆者は数回経験しましたが、機内に入ると、大きく違うのが客室の明るさです。なお、DHC8-200ではバイオリン調のボーディング音楽が流れていましたが、ATR42-600の場合、現時点ではそういった音楽は流れていませんでした。
手荷物を収納する棚も大型のものとなっており、多少大きめのリュックサックくらいであれば、難なくしまえるようになっています。このアップデートはかなり”助かる”ポイントです。
ORC新型機に実乗! いままでとの違いは?
ATR42-600では、客室ドアが後方に設置されているため、「後ろから乗り降りする」というのも特徴的です。座席構成は横2-2列。最前列は進行方向と反対側をむく「後ろ向き」座席が2席設置されています。CA(客室乗務員)が座る「ジャンプシート」は客室最後部です。
シートはDHC8-200の場合、往年の旅客機でスタンダードだった厚みのあるクッション性の高いものが使用されていましたが、ATR42-600では、グレーのレザー調の配色による新鋭機らしい薄型シートが採用されています。また、DHC8-200ではシート下部に安全のしおりなどのカード類を収納できるスペースしかありませんでしたが、ATR42-600では、そのスペースは上部に設置。シート下部はスマートフォンや小物類がしまえるスペースとなっています。
今回は、長崎〜壱岐間の1往復で搭乗取材を実施しました。同路線は1日2往復が運航されていますが、2023年お盆期間は1往復にATR42-600が投入されています。壱岐空港では多くの便がDHC8-200運航であることから、搭乗直前に「客室ドアは後方に設置されています」といったアナウンスがありました。
ATR42-600は、フライトの静粛性もウリです。この機は、主翼が胴体の上に設置されている「高翼機」というDHC8-200と同じスタイルですが、一般的にこの型式は客席とエンジンの距離がとても近く、エンジン音がかなり響きます。一方でATR社はこの機について「大型ジェット旅客機の静粛性」をうたっています。たしかに、主力を大きくしていないときのエンジンの音量が、DHC8-200と比べると明らかに静かな感覚があります。
DHC8-200と同様に高翼機なので、窓側席を確保できれば、以前と同様に、九州の絶景を空から味わうことができるのは、ORCらしさを引き継いでいるポイントかもしれません。
ATR42-600のORC便は、従来と比べて静粛性や収容力が向上しながらも、以前と変わらず「絶景を楽しみ離島へいく」という同社便ならではのワクワク感を味わうことができます。