関門海峡の高速道路橋「関門橋」の開通からまもなく50年を迎えます。一方、地元では関門海峡へもう1本、新たな橋を架ける「下関北九州道路」実現への動きが活発化。関門トンネルと関門橋に次ぐ第3のルートの必要性が訴えられています。

「関門橋」全通から50年 経済効果は多大

 関門海峡に架かる高速道路橋「関門橋」が2023年11月14日で開通から50年を迎えます。その一方、地元では関門海峡に新たな橋を架ける「下関北九州道路」の実現へ向けた動きが活発化。地元では、「もし関門海峡が寸断されたら……」という危惧が大きいようです。

 関門橋の50周年に向け、NEXCO西日本は10月25日、50年の整備効果などについて取りまとめました。それによると、関門橋は1958(昭和33)年の関門トンネル(国道2号)開通を皮切りに、バイパス建設促進の機運が高まり、5年の歳月をかけ1973(昭和48)年に全線開通。中国道・九州道とつながり本州と九州が高速道路で結ばれました。

 その交通量は約50年間で約4倍、1日あたり3万7200台(2019年)になっているといいます。特に、貨物輸送は鉄道からトラックへシフトし、本州〜九州間の貨物流動量は約5倍に増加。九州7県の製造品出荷額は50年で約3倍になったそうです。

 NEXCO西日本は、関門橋の整備による経済波及効果を50年で約5.6兆円と試算しています。

 山口県下関市では、他市町村へ通勤・通学する人の約4割が北九州市へ通勤しており、関門橋などでつながる北九州市が一体となった生活圏ができているといいます。これは医療も同様で、下関市消防によると救急搬送のみならず、下関在住で北九州市の病院を「かかりつけ医」にしている人もいるとか。

 地域にとってなくてはならない存在だからこそ、関門トンネルと関門橋ともに老朽化による損失の影響が懸念され、1990年代から関門海峡に新たな橋を架ける「下関北九州道路」の必要性が議論されてきました。

「関門海峡寸断」のほうがダメージ大きい?

 下関北九州道路は2020年に、国の委員会で概略ルートが決定しており、下関と門司を結んでいる既存ルートよりも西側を通って、下関市内の彦島と、北九州市街地の小倉を直結します。延長は約8km。活断層の影響を考慮して、海峡部は約2.2kmの吊り橋とされています。関門橋よりもずっと長い橋になる見込みです。

 渋滞緩和や移動時間の短縮などもさることながら、この道路で一般の人から「特に重視すべき」との声が大きいのが、関門橋や関門トンネルの代替路という観点です。

 どちらも、老朽化にともなう補修工事が多くなっているほか、事故などでどちらかが通行止めになった際に大渋滞が発生し、相当な時間を要したという経験を持つ人が少なくないのです。計画段階評価の意見聴取では、関門トンネルの片側通行規制時に関門橋が通行止めとなった際、路線バスで最大8時間の遅延が発生したという意見もありました。

 地元の経済団体などからなる下関北九州道路建設促進協議会(会長=倉富純男九州経済連合会会長)は2023年8月、国に対し同道路の早期実現に関する要望書を提出しています。それによると、「関門トンネル及び関門橋が交通遮断された場合の経済損失額は1年間に約14兆円(間接被害のみ)」との試算です。

 関門橋、関門トンネルを利用する交通の約8割は広域交通で、この部分が通行止めになると、その影響は全国の1日約7万台に波及する可能性があるともされています。下関北九州道路によって利便性が向上することによる経済波及効果も取りまとめられていますが、それ以上に、いまある2ルートが失われることへの危惧が大きくなっているのかもしれません。