イスラム過激派組織「ハマス」が、最新の防御システムを備えるイスラエルの主力戦車「メルカバMk.4」に攻撃を加えました。それは、旧日本軍も行っていた極めてローテクな戦法。兵士の全力疾走がモノをいいます。

まさかの肉薄攻撃を実行!

 ガザ地区を実効支配しているイスラム過激派組織「ハマス」が、驚くべき方法でイスラエル陸軍の主力戦車「メルカバMk.4」に攻撃を加えました。それは、第二次世界大戦中の歩兵のように、戦車の近くまで生身で肉薄し、即席の爆発物(IED)を仕掛けるというものです。

 旧日本軍では「肉弾攻撃」や「肉薄攻撃」といわれ、自爆攻撃も含め多用されました。しかし、ほかの国でも歩兵が持ち運べる対戦車兵器の登場は大戦中盤以降で、大戦後半でもパンツァーファウストやバズーカといった装備が使えなかった場合などは、手近な爆発物や手榴弾などを用いた攻撃が行われていました。

 戦後は、対戦車兵器がさらに発展し、現代戦においては歩兵が対戦車ミサイルまで携行できるようになり、そこまで肉薄するケースは減っていました。にも関わらず今回、肉薄攻撃が行われたのは、「メルカバMk.4」が搭載するアクティブ防護システム(APS)である「トロフィー」が関係しています。

 イスラエルの主力戦車「メルカバ」のMk.4以降に標準装備されている「トロフィー」は、対戦車ミサイルやロケット弾から車両を守るために、レーダーで感知し散弾を発射・迎撃するシステムとなっています。そのため、ハマスが所有するRPGなどの対戦車てき弾は同システムが作動した状態だと迎撃されてしまうのです。

実は歩兵の援護が出来ないので死角だらけ!

 防御装置を無力化するには、「トロフィー」に感知されない生身の人間による肉薄攻撃で、同システムのレーダーを破壊する必要があります。レーダーは脅威を検知する都合上、爆発物に耐える装甲で守られてはいないので、車体に爆弾や砲弾などを仕掛けて爆破させれば無力化することが可能です。

 普通ならば、戦車に随伴した歩兵や車長などが敵を見つけて銃火器で反撃するところですが、実は「トロフィー」を使用した状態では、周囲に歩兵がいたり車長がハッチを開けて監視していたりすると、発射された散弾や迎撃したロケット弾の爆風で被害を受ける可能性があるため、歩兵が随伴していないケースが多いようです。

 またハマスは、「メルカバMk.4」の死角を徹底的に研究し、それを活かした訓練もしているようで、今回はその弱点を狙われたと推測されます。ハイテク戦車に超ローテクな手段で挑んだというわけです。

 SNS投稿された動画では、ハマスの構成員が茂みに潜んだ状態で停車している「メルカバMk.4」に全力疾走し、爆発物をしかけ地下道への入口まで逃げていく様子が映されています。爆発物を仕掛けた後は、他の構成員がRPGのような武器を持って応戦しており、トロフィーが無力化したことを確認し、追加攻撃を仕掛けていることが予想されます。

 なお、攻撃を受けた「メルカバMk.4」の損害は明らかとなっていません。また、巧妙に待ち伏せができる状況がいつも作れるわけではないとは思われますが、今回、第二次大戦時代の戦法に不意を突かれたのは確かです。

 ちなみに、イスラエルで量産間近だと噂されている「バラク」とも呼ばれる「メルカバMk.5」は、全周カメラシステムで車長のヘルメットディスプレイに画像を表示する「アイアンビジョン」という装備が追加されるそうで、今回のような死角もなくなる可能性はあります。