韓国が独自に開発した戦闘機KF-21「ポラメ」は、F-22やF-35といった最新ステルス戦闘機と同じように見えますが、メーカーいわく目指すポジションはそこではないとか。開発目的について直接ハナシを聞いてきました。

「ステルス風」な外見の真意は?

 2023年10月下旬、韓国のソウルで開催された「ソウル ADEX 2023」において、韓国の国産戦闘機であるKF-21「ポラメ」が公開されました。同国初のオリジナル戦闘機は、実機が初飛行にも成功していることから、その動向は日本を始めとして世界中から注目を集めています。

 なお、今回のイベントでは複座型の試作6号機が参加し、機体展示だけでなく、一般公開イベントでは初めてとなるデモフライトも披露されました。

 KF-21は、韓国の国防科学研究所と韓国航空宇宙産業(KAI)が開発中の戦闘機です。2010年頃よりプロジェクトが始まり、2022年7月に最初の試作機が初飛行しています。外見は、F-22などといったステルス戦闘機によく似ており、レーダー反射断面積(RCS)を低減させるための措置なのか、インテーク角度と垂直尾翼の傾斜角度が揃えられています。また、インテーク内部もダクト内部が曲げられていてエンジン正面のファンが外部から見えないようになっていました。

 このようなデザインから、KF-21はステルス戦闘機というイメージを世間に持たれていますが、一方でステルス機には必須ともいえる兵器を機内に搭載するウェポンベイはなく、代わりに胴体下部には空対空ミサイルを半埋め込み式で搭載するための溝が用意されています。

 この、ウェポンベイではなくミサイルを機外搭載する仕様ゆえに「中途半端なステルス機」と揶揄する意見も見られます。しかし、この外見的特徴にはKF-21の開発スケジュールと将来の発展性にリンクした切実な事情が関係していました。

最初に目指すは旧式機の更新 その後は?

 もともとKF-21は、F-22「ラプター」やF-35「ライトニングII」のようなステルス性を持った第5世代戦闘機を目指したものではありません。では、何のために開発されたのかというと、長期運用で老朽化が進むF-4「ファントムII」やF-5「タイガーII」といった旧型機を更新するために計画された戦闘機なのです。

 性能的には、F-16「ファイティングファルコン」より上を目指しており、世代的に言えば第5世代戦闘機よりも下の第4.5世代戦闘機を想定しています。すなわちユーロファイター「タイフーン」やサーブ「グリペン」、ダッソー「ラファール」などと同じレベルだといえるでしょう。

 また、機体の開発は一度にすべての性能を満たすのではなく、必要な能力を段階的に実装する形で進めています。その理由は開発の長期化による開発失敗のリスクを軽減させるためで、それは「ブロック」という名称で区分けされています。

 まず、最初のブロックIでは空対空戦闘能力のみを実装するのだそう。このタイプは2026年頃までに韓国空軍への配備を予定しています。その後、センサーの能力を強化したり、対地戦闘能力を付与したりといった改良が施されてマルチロール戦闘機となったブロックIIの開発を進め、これによってKF-21は第4.5世代戦闘機としての能力を獲得することになる予定です。

 ステルス性といった第5世代戦闘機としての能力については、ブロックIIの後に開発が予定されるブロックIIIでの実装を目指しています。ブロックIIIでは胴体下部にウェポンベイを装備し、さらに第5世代戦闘機ではステルス性と同様に必須となった複数プラットフォームからの情報を統合できるデータフュージョン能力も付与されるそうで、恐らくはブロックII以上に大規模な改修が機体全体に施されることでしょう。

 しかし、「ソウルADEX」の会場で話を聞いたKAIのスタッフによると、ブロックIIIの実現はまだまだ未知数のようです。「ブロックIIIに関しては、現時点で社内プロジェクトの段階であり、軍などとの正式な契約はまだ結ばれていない」とのこと。そのため、現時点で確実に開発が進められているのは、第4.5世代のブロックIIまでのようです。

いろいろできる汎用性の獲得が主眼

 現地で取材してきた筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)の感想としては、メーカーがKF-21において一番アピールしているのはブロックIIのように感じました。会場の屋内展示エリアにあったKAIのブースには、KF-21の模型がいくつも展示されていましたが、そのほとんどが主翼下のパイロンに誘導爆弾やミサイルが装着されたモデルで、それらを用いて同機がブロックIIで実現する対地能力の高さを宣伝しているといった感じでした。

 また、KAIとは別会社のLIG Nex1社は、KF-21に搭載される国産の空中発射巡航ミサイル「KALCM(Korea Air-Launched Cruise Missile)」の実物大モックアップを展示。これは射程が500kmにもなる大型の巡航ミサイルですが、その大きさゆえにKF-21では主翼下のパイロンに搭載されるため、ウェポンベイ装備のブロックIIIではなく、ブロックIIにフォーカスした装備品といえるでしょう。

 この他に現地で発表されたKF-21関連の情報としては、KF-21の複座型を複数の無人機の司令機とする新しいコンセプトが展示されていました。これは共同戦闘システム(Collaborative Combat System)という名称で、囮(おとり)、電子戦、ISR(情報・監視・偵察)、攻撃の異なるミッションを行う複数種類の無人航空機(UAV)を、KF-21の複座型の後席乗員に統制・指示させるというものです。

 これら無人機を自機の身代わり的に投入することで、KF-21はステルス性がないブロックIIでも高脅威の作戦に投入することが可能になります。共同戦闘システムについてはコンセプト段階であり、KAIの担当者いわく「今後開発を進めていく場合、実現には長い歳月が掛かるかもしれません」とのこと。ただ同時に「現時点でのKF-21の複座型の目的は操縦訓練ですが、その別の用途のひとつとしてこのコンセプトを発表しました」とも語っていました。

UAVを指揮統制する「司令機」ポジションも

 このように、KF-21は開発段階ではあるものの、さまざまな形で将来の発展性をアピールしていました。その理由は、計画自体が決して順調ではないことの裏返しともいえるかもしれません。

 なお、開発資金を分担するために計画の公式パートナーとなったインドネシア(展示機の機首にはその国旗が描かれていた)は、その分担金のすべてを支払っておらず、残りの支払いについても交渉中だと報じられています。また、そのインドネシアのメディアの報道によると、現時点でのKF-21の製造コストは第5世代戦闘機のF-35よりも高額になる可能性があるとか。

 ただし、その一方で韓国の自主開発で進められた戦闘機ゆえに、KF-21は他国への輸出やそれに合わせた改良型の提案も容易に行えます。公式発表ではありませんが、UAE(アラブ首長国連邦)とポーランドがKF-21計画に興味を示しているという報道もあります。

 現在の戦闘機開発は、その能力が高度化されたために膨大な予算と長期の開発期間が必要となっています。新型戦闘機を単独の国で開発すること自体が難しくなり、日本も次期戦闘機に関して、イギリスやイタリアと国際共同開発で進めることにしたのは記憶に新しいところでしょう。

 KF-21の場合も韓国が主体となった開発ではありますが、予算面での他国の支援や輸出による生産数の増大を必要としているように感じられます。これらを鑑みると、KF-21について注目すべきポイントは、性能の優劣だけでなく、戦闘機開発を一国のみで進めるために韓国が行っているさまざまな方策とその柔軟性、そして今後の進捗具合だといえそうです。