沖縄県にはリニアモーターを使う「普通鉄道」の建設構想が存在。2014年11月16日に投開票される同県知事選挙でも各候補が何らかの形での鉄道建設を公約にするなど、同地で新鉄道誕生の気運が高まっています。沖縄県の「普通鉄道構想」とはどんなものなのでしょうか。

全国最下位の「混雑時平均旅行速度」

 沖縄県には現在、沖縄都市モノレール(ゆいレール)という鉄道があります。ただ2本のレール上を走り、高速性や輸送力の面で有利な「普通鉄道」は存在していません。かつては旅客営業を行っていた普通鉄道が沖縄を走っていましたが、太平洋戦争で運転中止に追い込まれ、そのまま消えてしまいました。

 普通鉄道が存在せず、主な交通手段が自家用車やバス、オートバイである沖縄県では道路の渋滞が激しく、那覇市における「混雑時平均旅行速度」は2005年度が13.7km/h、2010年度が12.9km/hと、共に全国で最下位でした(資料「道路交通センサス」H17、H22)。沖縄県は同県に普通鉄道がないこと、米軍基地の存在や無秩序な市街地形成、急激な自動車交通の増加といった歴史的、社会的事情によって「慢性的な交通渋滞、公共交通の衰退、環境負荷の増大などの問題」が生じているとしています。

 この問題を解消し、沖縄の振興を図るため同県には普通鉄道の建設構想があります。そして毎日新聞によると、2014年11月16日に投開票される沖縄県知事選挙では4人すべての候補者が、何らかの形で沖縄へ鉄道を建設することを公約にしました。

沖縄県の「普通鉄道構想」とは

 沖縄県は2013年3月、普通鉄道の建設構想を発表しました。その内容を解説します。

 建設区間は、沖縄県が「本島における南北方向の骨格をなす軸」とする那覇(空港)〜沖縄〜名護間。所要時間は次の通りで、那覇空港〜名護間は58分で結ばれるとしています。

那覇空港〜(5分)〜県庁前〜(19分)〜沖縄〜(34分)〜名護

 現在、那覇空港国内線ターミナルから名護バスターミナルまで、111番の高速バスで約1時間45分必要ですから、それが半分近くになり、渋滞の心配も無用。輸送力もバスは1両に50人程度しか乗れませんが、この普通鉄道構想では4両編成でおよそ280人の定員があります。

 路線の長さは約69kmで、うち70%が地下・地上のトンネルです。運行本数について、通常時は那覇空港〜沖縄間が5本/時、沖縄〜名護間が3本/時。ピーク時はそれぞれ12本/時、4本/時が想定されています。

 運賃は、20kmまでがゆいレールと同等、20km以上はJR九州と同等のものが考えられており、県庁前〜沖縄間(19.9km)は360円、県庁前〜うるま具志川間(27.9km)は540円、県庁前〜名護間(64.0km)は1250円との例が挙げられています。現在、那覇バスターミナル〜名護バスターミナル間は1900円なので、所要時間が半分近くになったうえ、3割以上安くなる計算です。

導入予定の「小型リニア鉄道」

 沖縄県の構想では、普通鉄道建設にあたり「小型リニア鉄道」という方式を採用するとしています。

 これは「リニア」といっても、浮上して500km/h以上で走行する「超電導リニア」ではありません。2本のレールのあいだに設置された「リアクションプレート」と、車両に搭載したコイルとのあいだで発生する磁界によって推進力を得る「鉄輪式リニアモーターカー」と呼ばれるものです。浮上はしません。すでに都営地下鉄大江戸線や大阪市営地下鉄長堀鶴見緑地線、福岡市地下鉄七隈線など各地で採用例があります。

 この「鉄輪式リニア」は「スマート・リニアメトロ」とも呼ばれ、次のようなメリットがあります。

・車両の床下に大きなモーターを搭載せずに済むため、車両を小さくすることが可能。つまりトンネルの断面も小さくできるので、建設費が安くなる。
・一般的な電車はモーターで車輪を回して走る。しかし車輪とレールは摩擦力が小さく滑りやすいため、一般的な電車は急坂や急カーブに弱い。しかし「鉄輪式リニア」は車輪の回転ではなく、車両とリアクションプレートとのあいだに発生した磁界で動くので車輪が滑りにくい。そのため急坂や急カーブに強い。
・急坂や急カーブに強いと路線のルート選定に自由度が増し、建設費を安くしやすい。
・車両にギアなどの可動部分がないため保守が容易。

 最高速度は100km/hが目標とされており、長さ12mの車両の4両編成が考えられています。1両あたりの長さが約15.7mである長堀鶴見緑地線の車両が、4両編成で定員が380人なので、12m×4両では単純計算で290人程度の定員があることになります。

 またコスト削減のため、地下区間については運転士が乗らない「ドライバーレス運転」も検討されています。

 運営はインフラ部分を公が負担し、別の事業者が運行を担うという「公設型上下分離方式」が想定されており、1日の利用客が4万3000人あれば年間9億8000万円の黒字と計算しています。ただ建設コストは、沖縄県の計画では5600億円です。沖縄への新鉄道建設については内閣府でも2010年から事業費とその圧縮について調査、検討が行われており、そのゆくえが注目されます。