東京都心を流れる神田川の下流域は、間近に鉄道各社の路線が走り、列車もひっきりなしに通過していきます。船からしか眺められないその風景は、どのようなものなのでしょうか。

神田川、外濠部分は鉄道のビューポイント?

 東京都心を流れる神田川は、井の頭恩賜公園の井の頭池を水源とし、隅田川へ流れ込む全長25km弱の川です。かつては神田上水が取水されており、またその下流域は江戸城(現、皇居)の外濠の一部としても位置付けられていました。

 東京ドームが近い日本橋川との分岐点から下流へ進み、駅名にもなっている水道橋をくぐったあたりは、川べりにJR中央線快速や中央・総武線各駅停車が走っています。いずれもダイヤが密なため、列車がひっきりなしに近くを通過していきます。短時間のあいだにシャッターチャンスが何度も訪れるので、初めて鉄道写真を撮るような人にも比較的易しいスポットといえるかもしれません。ただし、水面からだとかなり上方を見上げることになります。

 このあたりは、かつて神田山とも呼ばれた丘陵でした。江戸初期にこれを掘削し駿河台と本郷湯島台に分割、神田川はその間隙を流れる現在の姿になり、「茗渓(めいけい)」または、工事を担当した仙台藩祖、伊達政宗にちなみ「仙台堀」あるいは「伊達堀」とも呼ばれます。

走行中の列車、真下から眺めると…?

 鉄道写真撮影的観点からこの神田川下流域を見た場合、白眉は東京メトロ丸ノ内線の橋でしょう。JR御茶ノ水駅のホームやその上にかかる聖橋から、神田川に渡された丸ノ内線の橋を眺めた場合、ずいぶんと下のほうに見えますが、逆に水面からだと、手が届くほど近くになるのです。

 さらにはこの丸ノ内線の橋、まくらぎの隙間から上空が見えます。そして船はもちろん、この橋の下をくぐります。つまり、線路の真下、まくらぎの隙間というレアな角度から、頭上を走る丸ノ内線の列車を、手が届くほどの間近で眺めることが可能なのです。

 今回、操船にあたった勝どきマリーナ(東京都中央区)の今野大樹キャプテンは、この鉄道橋の下からのアングルで、「まくらぎの隙間に、ちょうど丸ノ内線の先頭が収まった写真を撮られたお客様がいらっしゃって、見せてもらったことがあります」といいます。それを聞き、このたびの取材でも同行カメラマンがずいぶんと橋の下で粘りましたが、結局うまく撮影できませんでした。

 とはいえ、視界一杯に広がる橋の造形物と、その隙間からのぞく空、そして突如として轟音と共に視界をふさぐ丸ノ内線の列車。その迫力を味わえるだけでも、橋の真下で列車を待つ価値は十分にあるでしょう。運行本数が比較的少ない時間帯でも、荻窪方面、池袋方面行きの列車がそれぞれ数分ごとに通過します。

川と道路を渡る鉄のダイナミズム

 神田川をさらに下り、御茶ノ水をあとにすると、昌平橋付近にダイナミックな総武線の鉄橋が現れます。川を渡る橋(総武線神田川橋梁)と道路を渡る橋(松住町架道橋)とが組み合わされた、巨大な鉄の構造物です。日本橋川との分岐点から川下側では、これが最後の鉄道的見どころといえるかもしれません。

 というのもこの先、山手線、京浜東北線、および新幹線の橋が控えるのですが、いずれも川面からの眺めがあまりよろしくないためです。実際のところ、川上方面からは線路をひっきりなしに行き交う山手線や京浜東北線の列車の姿が見えるものの、ビルとビルに切り取られた川幅ぶんの狭い範囲しか眺められず、また川下方面からは新幹線の橋に設けられた壁が高く、新幹線車両の窓より上あたりがわずかにのぞくばかりでした。

 新幹線の橋を過ぎると、川べりに係留される屋形船の姿が増えてきます。井の頭池に始まり、全長25kmにおよぶ神田川もいよいよ終わり、隅田川との合流地点です。

 そこは両国橋の西詰より少し川上付近。これまでの神田川とは比べものにならない川幅の隅田川ですが、河口(竹芝桟橋付近)まではまだ6km弱あります。海へと走る船上から振り返ると「東京スカイツリー」の威容が、川面と街並みの向こうからのぞいていました。