事前に十分な睡眠をとっているにもかかわらず、クルマを運転していると眠くなることがあります。なぜでしょうか。

十分な睡眠をとっていても眠くなる?

 クルマの運転中、気を付けたい「眠気」ですが、高速道路の課題研究に取り組む高速道路調査会(東京都港区)が2015年3月に発表した、1000人のドライバーを対象とするアンケート調査よると、高速道路を運転中に眠くなった経験のあるドライバーは全体の78%、また、実際に事故を起こしたり、事故に至らずとも「ヒヤリ」と感じたことがあるドライバーは50%に上るそうです。

 同調査ではまた、実際に事故を起こしたり、事故に至らずとも「ヒヤリ」と感じたことがあるドライバー501人を対象にして、眠気や居眠り運転の発生に、道路の線形や交通状況などが関係することも明らかにしています。

「居眠り運転がもっとも発生しやすい道路の線形は『直線区間』(75%)で、2位の『カーブ区間』(7%)を大きく引きはなす結果となりました」(高速道路調査会 研究第二部)

 居眠り運転が発生しやすい交通状況では、「空(す)いていた」(72%)が「混んでいた」(15%)や「渋滞していた」(6%)を大きく上回り、運転時の同乗者の有無についての質問には、同乗者が「いなかった」もしくは「眠っていた」という回答が、70%以上を占めました。

 これらの結果から、線形が「直線区間」で、交通状況が「空いて」おり、同乗者が「いなかった」もしくは「眠っていた」場合に、居眠り運転が発生しやすくなることが浮き彫りとなりました。高速道路調査会では、これらは「高速道路だけでなく、一般道路にも当てはまる」としています。

 このことは、体調や事前の睡眠時間以外にも、眠気を誘引する外的な要因があると言い換えられ、また、おそらく経験則として誰しも感じていたであろうことを裏付ける結果といえるでしょう。

 では、なぜそうした環境では眠くなるのでしょうか。

「頭のオンとオフ」の切り替えを

 交通諸問題について研究を行う日本交通心理学会(東京都新宿区)の太田博雄会長は、この結果を受けて「直線区間のような単調な線形や、ほかの自動車が少なく空いた道路では、緊張感を欠くため、ドライバーの脳が活性化しなくなります。同乗者がいなかったり眠っている状況は、話しかけられるという緊張感がないため、同様の結果となるのです」と話します。

「視覚や聴覚といった五感への刺激が少なくなると、意識の水準を保つ脳幹網様体(のうかんもうようたい)が影響を受けて、人間の脳は活性化しなくなり、眠気を誘発します。また、五感への刺激が少なくなるだけでなく、単調な線形や、代わり映えしない景色といった似たような刺激が繰りかえされることも同様です。いわば、居眠りをせざるを得ない環境にいるということなのです」(日本交通心理学会 太田博雄会長)

 このような眠気を少しでも改善するために、太田会長は「オンとオフを切り替え、単調さを断ち切ること」をすすめています。

「数分でかまわないので、眠くなったら近くのパーキングにクルマを停めて、いったんクルマから離れましょう。近くの自動販売機にジュースを買いに行くだけでも効果はあります」(日本交通心理学会 太田博雄会長)

 もちろん道路の管理運営側も、こうした眠気を誘発しかねない環境に、そうならないよう対策を施しています。

 たとえばNEXCO東日本は、高速道路のレーンマークなどに「ランブルストリップス(注意喚起溝工)」や「バイブラライン」と呼ばれる、走行中のクルマが踏むと音や振動が伝わる凹凸の加工を施したり、本線上では音の出る「薄層舗装」という舗装を施したり、また交通安全標語などを掲示する看板を設置するなど、居眠り運転の防止に努めているそうです。

【写真】電車ではなぜ眠くなる?