旅客機の離着陸時に鳴る「ポーン」という音。JALとANAでは回数が違うようです。なぜでしょうか。

シートベルトの着用サイン、実際の使い道は

 旅客機が滑走路を離陸する直前、機内には「ポーン」という丸みを帯びた音が鳴り響きます。シートベルト着用のサインとして搭乗時に必ず目にするこの光景ですが、音の鳴る回数とタイミングなどは、JALとANAで異なるようです。

 JAL(日本航空)では、運航乗務員(主に副操縦士)が離陸時に2回、音を鳴らすといいます。

 この音は、コックピットに取りつけられている「シートベルト着用サイン」のスイッチを切り替えると鳴るとのこと。スイッチは多くの機種でダイヤルタイプを採用し、左から「オフ」(消灯)、「オート」(自動)、「オン」(点灯)の順に切り替えられ、旅客の搭乗前から離陸前までは基本、オンに設定されているといいます。音の鳴るタイミングは「オンまたはオートからオフ、オフからオートまたはオンに切り替える際となっています」(JAL)とのことです。

 JALによると、離陸時に音が2回鳴るのは、オンからオフ、オフからオンの切り替えを2回行っているためで、主な目的は「運航乗務員が客室乗務員に対して、離陸開始を合図するためです」といいます。

「加えて、客室乗務員はお客さまのシートベルトの着用や、テーブル、座席の背、足置きが正しい位置に戻されていることを最終確認する機内アナウンスを実施しています」(JAL)

 このことからも、旅客にシートベルトの着用を促すというより、運航乗務員から客室乗務員に向けた離陸サインといった色合いの方が強いようです。前述のとおり、シートベルト着用サインは旅客の搭乗前からオンに設定されているため、旅客に対して「搭乗し着席したら、安全のために速やかにシートベルの着用をお願いしている」(JAL)ということも、その傍証になるでしょう。

 離陸後は高度1万フィート(約3000メートル)に達すると、天候や機体の揺れが激しいなどの例外をのぞき、運航乗務員がスイッチをオンからオフに切り替えるため、ここで1回音が鳴ることになります。

 着陸時にはオフからオンへ切り替え、サインを点灯させるために1回鳴ります。これはシートベルト着用を客室乗務員と旅客に指示するという、サイン本来の意味合いを持っているといいます。このタイミングは高度によるもので、天候や機体の揺れなどにより異なるとのことです。

ANAは4回?

 一方、ANA(全日空)は、音を鳴らすのが主に機長で、音の回数は離陸時4回、離陸後1回、着陸時4回とのこと。音を鳴らす意味と方法は基本的にJALと同じとのことで、つまりスイッチのオンからオフ、オフからオンの切り替えを2回ずつ行っているそうです。これにより音は4回鳴るというわけですが、この理由についてANAは、そのルーツが1998(平成10)年の機内の全面禁煙化にあるといいます。

「運航乗務員が客室乗務員に離陸時などのサインを伝える際、1998年以前はノースモーキングサイン(禁煙サイン)を使用していました。しかし、1998年以降は機内が全面禁煙となったため、そのサインが使えなくなりました。そのため、『ピンポン』という音のアテンダントコール(運航乗務員から客室乗務員への呼び出し)を使うようになりました。その際、1回だけ鳴らすと、通常時のアテンダントコールと客室乗務員が勘違いしてしまうために、それと区別するために2回鳴らすようになったのです」

 このアテンダントコールの『ピンポン』という音は、『ピン』と『ポン』の音の高さが異なるため、『ピン』と『ポン』が別々の音に聞こえていたそうです。これを2回繰り返すことで、音としては4回聞こえることになります。

「その後、当社で使用する機種が増えたこともあり、サインの統一化を図りました。このとき、シートベルト着用サイン『ポーン』で4回の音を表すことになったのです」(ANA)

 またJALは離陸後、高度1万フィートでサインを消灯し音を1回鳴らしていましたが、ANAの場合は「機長が機内の安全を確認した時点で鳴らしている(サインを消灯している)」(ANA)といいます。着陸時の4回の音(サイン点灯)も、高度ではなく着陸の10分前に鳴らすというスタイルをとっています。天候や機体の揺れなどが事前に予想される場合には着陸の15分前に鳴らしているそうです。

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 なお「ポーン」という音の音色そのものは、JALとANAはともに「旅客機メーカーの仕様で、独自に採用した音色ではありません」と話しています。

 またANAによると、旅客が客室乗務員を呼び出すためのボタン「パッセンジャーコール」の使用時にも、同じ音色の音が鳴るとしています。

【写真】エアバスの「天井から空が見える飛行機」