新幹線はスピードの速い列車の代表格です。日本の主要都市を短時間で結びますが、在来線の列車も新幹線並みのスピードで走ることはできるのでしょうか。

倍近く違う最高速度

 現在、新幹線では「はやぶさ」「こまち」が最高320km/hで営業運転されています。

 一方、JR在来線や私鉄では、京成電鉄の特急「スカイライナー」が一部の区間で160km/hを出していますが、多くの特急列車は120〜130km/hを最高速度としています。

 新幹線と在来線、見た目は違いますが、どちらも線路の上を走る鉄道であることには変わりありません。ではなぜ、スピードが倍近くも違うのでしょう。

在来線よりもパワーが大きい新幹線

 新幹線の車両は、高速走行するために機器や車体の形などで多くの工夫を行っています。そのひとつが、強力なモーターの装備です。

 東北新幹線で最高320km/h運転を行っている新幹線E5系電車の総出力は9600キロワット。10両編成の重さが453.5tですから、1tあたりに使えるパワーは約21.2キロワット、馬力だとだいたい28.8馬力です。

 一方、在来線の列車でもっとも速い営業運転速度は、京成電鉄のAE形電車で運転されている特急「スカイライナー」で、最高160km/hです。AE形は、先頭車が流線型である点も新幹線と似ています。この電車は8両編成で総出力4200キロワット、総重量は300.5t。1tあたりに使えるパワーは約14キロワット(約19馬力)です。

 このように、新幹線は在来線の車両よりも大きなパワーを持っています。そして、さらに空気抵抗の少ない流線型の車体や、軽量化など多くの要素も加わり、高速運転が実現しています。

 それでは、在来線も新幹線の車両のようにパワーアップし、さらに長いノーズの車体にしたりすれば新幹線と同等のスピードを出せるのでしょうか。

新幹線の線路は「高速道路」

 在来線の場合、いくら車両や電力を強化しても、残念ながら新幹線のようには走れません。

 在来線は、たとえば踏切や急カーブ、急勾配など、スピードアップを妨げる要素のある路線が存在します。踏切が閉まっていても、横断する人がいたら列車は急停止する必要があることから、在来線の列車は、前方に危険を察したら急ブレーキで止まれるスピードに最高速度を抑えています。急カーブも、スピードを出しすぎると乗り心地が悪くなったり、最悪の場合は脱線したりします。そのためここでもスピードが制限されます。

 新幹線の本線には踏切がなく、カーブや勾配も在来線よりはるかに緩く造られています。たとえば東海道新幹線はカーブを基本的に半径2500m以上として、210km/h運転を可能にしました。しかし最高速度が285km/hにアップした現在では、これも「きついカーブ」になり、車両によっては速度制限がかかることがあります。

 東海道新幹線よりあとに造られた山陽新幹線や東北新幹線などでは、カーブが半径4000m以上とされています(ただし北陸新幹線の軽井沢〜長野間は半径3500m)。300km/h以上で運転するには、これくらいまでカーブを緩くしなくてはなりません。ちなみに、さらなる高速運転が計画されているJR東海の中央新幹線(超電導リニア)では、半径8000mまでカーブを緩くしています。ここまでくると見た目はほとんど直線です。

 このように新幹線は、車両とともに線路も、スピードが出せるように設計されています。自動車でいえば新幹線が高速道路、在来線が一般道というイメージです。

一般道では新幹線も速く走れない

 自動車は高速道路で100km/hを出せる性能を持っていたとしても、一般道でそこまでスピードを出すのは危険です。これは鉄道でも同じことがいえます。

 新幹線と在来線を直通する「ミニ新幹線」を例に挙げてみましょう。秋田新幹線「こまち」は東北新幹線の区間では最高320km/hで走行しますが、盛岡〜秋田間は在来線であり踏切や急カーブもあることから、最高速度は130km/hまで下がってしまいます。

 つまり、車両がいくら高速走行の性能を持っていても、線路などの設備がそれに対応していないとスピードを出せないのです。

 逆に線路を新幹線並みの規格で造れば、在来線でもある程度のスピードを出すことは可能です。実際に成田空港へ向かう成田スカイアクセスは高架で踏切もなく、「スカイライナー」が最高160km/hの高速運転を行っています。

 このように、高速運転を実現させるには、それに対応した車両や線路に加え、さらに電気設備や運行システム、環境対策、地震を早期に検知して列車を停止させるシステムなども求められます。新幹線と在来線は、このように様々な面で違いがあるのです。

【写真】最高320km/hで走る秋田新幹線「こまち」