運賃を徴収しない配車サービスの実現を目指し、22歳の実業家が立ち上げた「nommoc」が資金調達を実施したところ、わずか4分半で5000万円を調達しました。広告収入で運賃を賄うというビジネスモデルの実現性を、代表者はどう考えているのでしょうか。

ドライバーは自前、メーターなし 「タクシーではない」

 運賃を広告収入で賄うことで、利用者から運賃を徴収しないという配車サービスを実現するプロジェクトが始動しています。

 このサービスを計画しているのは、22歳の実業家、吉田拓巳さんが立ち上げた株式会社nommoc(福岡市博多区)です。2018年5月8日(火)にインターネット上の株式投資サービス「FUNDINNO」で資金調達を開始したところ、わずか4分半で254名から5000万円を集めました。これは、日本のクラウドファンディング史上最速の記録だといいます。

 どのようなサービスなのか、nommocの吉田さんに聞きました。

――具体的にはどのようなサービスなのでしょうか?

「移動の無料」を実現する新しい配車サービスです。スマートフォンなどのアプリ上で場所を指定するだけで配車ができ、利用者は目的地まで移動できます。

――無料のタクシー、ということではないのでしょうか?

 タクシーとはビジネスモデルが違います。乗客から運賃を受け取りませんので、旅客自動車運送事業にはあたりません。ドライバーは自前で雇用する予定で、たとえばタクシーメーターを使用するようなことも想定していません。

――乗客は車内でどのような体験をするのでしょうか?

 乗客の性別や年齢、趣味嗜好、行動範囲などに応じて、ターゲティングされた広告が社内のディスプレイで流れます。生活者の行動範囲と利用時間を特に意識しており、最適なタイミングで、その人のライフスタイルに合った訴求効果の高い広告を流せると考えています。乗客にとっては、無料で移動ができ、さらには有益な情報が収集できるという価値ある体験が可能です。

――長時間の運行は、そのぶんコストもかかると思いますが、行先の制限などはあるのでしょうか?

 2019年3月に開始する福岡での試用運転では、最長20分の乗車時間を考えています。具体的には、その試用運転の結果に基づいて決定していく予定です。

正体は「移動式の広告メディア」

――多くの投資を集めたのは、どのような点でしょうか?

 クラウドファンディング市場が盛り上がっているタイミングで、かつ「nommoc」が生活者のインサイト(潜在的な欲求)をうまく結びつけたアイデアだったことが挙げられます。生活者のニーズという点では、結果として多くのメディアや、そのメディアに触れた人から反響がありました。また、今回利用した「FUNDINNO」は、株式投資型クラウドファンディングと呼ばれるものですが、柔軟かつスピーディーに資金調達ができる利便性から、市場が急拡大していると聞きます。

――アイデアを思いついた直接的なきっかけはあるのでしょうか?

 わたしは2011(平成23)年、15歳のときに「セブンセンス」という会社を起業して、映像演出や音楽フェスなどのイベントプロデュースを行ってきました。そのようななかで、4、5年ほど前から感じるようになったのが、「実体験」や「リアルの場」をプロデュースしてほしいという依頼が増えていることです。ただ、「リアルの場」で広告を打つ際の大きな悩みは、テレビも同様ですが、特定の消費者にターゲティングする方法があまり発達していないということでしょう。

 そこで、プライベートな空間である「車」を広告媒体に変えてはどうか、ということを思いついたのです。年齢や性別、向かう場所などの情報がわかっている消費者に対し、「決め撃ち」ができるような、「移動式の広告メディア」を作ろうと思いました。

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 近年はタクシーでも、車内にタブレット端末を設置して広告を流す取り組みが進んでいます。たとえば、業界大手の日本交通(東京都千代田区)グループが開発した「Tokyo Prime」という動画広告商品では、タブレットに搭載されたカメラで乗客の性別や年代などを認証、GPSと連動し、乗る人や走行している場所に応じた広告を流すというものです。nommocの場合は、あらかじめ利用者がアプリで個人情報やアンケートなどを入力したうえで、そうしたユーザー情報や行先に基づいた広告を車内で流すといいます。

 前出のとおり、nommocはまず2009年3月から福岡市で、8台による試用運転を行うとのこと。将来的にはクルマの自動運転を導入し、人件費を削減するとしています。東京オリンピック・パラリンピックなどで移動の需要がさらに増える2020年をめどに、東京や大阪といった主要都市、さらにはアジアを中心に世界市場にも拡大したいとのことです。