自衛隊や在日米軍などと民間機が滑走路を共有する「共用空港」は全国に8か所あります。茨城空港の事例を眺めつつ、その設置経緯や特徴など、どのような空港なのかを解説します。

ひと口に「空港」といってもいろいろある

 民間機が離着陸する空港には、自衛隊機や在日アメリカ軍の軍用機と滑走路を共用して利用するものがあります。これらの空港は、なぜ共用するようになったのでしょうか。

 日本の空港は管理者と規模によって航空法で分類されており、民間企業が管理する「会社管理空港」、国土交通省が管理する「国管理空港」、地方自治体が管理する「地方管理空港」、いずれにも該当しない「その他空港」、自衛隊や在日アメリカ軍と共用する「共用空港」に分かれています(ほか、ヘリポートや非公共用飛行場があります)。

「共用空港」は航空自衛隊とアメリカ空軍が共用する三沢空港や、海上自衛隊と共用する徳島空港をはじめ、丘珠空港、千歳飛行場、茨城空港、小松空港、米子空港、岩国空港の8つが空港法で定められています。那覇空港や名古屋空港も自衛隊と共用していますが、那覇空港は「国管理空港」、名古屋空港は愛知県の県営で「その他空港」と分類されています。

 共用空港の多くは、元々は旧日本軍の基地として作られた施設が多く、三沢空港や徳島空港は海軍航空隊の飛行場としてそれぞれ建設されました。敗戦により戦後はアメリカ軍に接収されましたが、その後は自衛隊の基地として使用されることになります。そして空港のある自治体からの要請などにより、民間との共用空港に指定がなされ航空会社の路線が開設されてきました。

航空自衛隊と民間共用する茨城空港の場合

 2010(平成22)年に航空自衛隊の百里基地と民間共用化された茨城空港ですが、どのようなプロセスで共用化されたのでしょうか。

 茨城空港によりますと、1993(平成5)年に茨城県の旧小川町(現:小美玉市)から地域活性化推進のため百里基地の民間共用化の要望書が県に提出され、計画がスタートします。地元からは地域振興対策として、「人・もの・情報」の交流拠点となるような施設整備を、空港建設と合わせて進めて欲しいとの要望があったといいます。

 そして県は「百里飛行場民間共用化可能性調査」を実施し、1995(平成7)年に「百里飛行場民間共用化構想」を発表します。2000(平成12)年には、旧運輸省において事業着手のための事業費が予算化され、航空整備法施行令改正により共用飛行場として指定されます。2007(平成19)年には新滑走路工事が開始され、計画から17年後の2010(平成22)年3月11日に、茨城空港が開港します。

 共用化に際しては、防衛省と国交省により滑走路維持管理、管制業務、エプロン誘導など効率的な各種運用に向けた役割分担などについて協議され、県側では、空港ターミナル施設、駐車場など周辺環境整備や二次交通などの旅客利便性に対応したということです。また、訓練など基地の本来業務と民航機の運航計画の双方を担保するための調整作業が行われました。

「飛行場」? それとも「空港」?

 地元の要望で開港した茨城空港ですが、実は正式名称ではありません。

 国土交通省によりますと、「茨城空港」の正式名称は空港法施行令附則第二条により「百里飛行場」と定められており、「茨城空港」という名称は、「地元自治体が航空関係者や地元経済団体等と協議を行ったうえで、合意形成を図った結果として、これらの関係者が時刻表等を通じて愛称として用いている状況」だということです。これは、鳥取県の共用空港である米子空港も同様で、こちらは航空自衛隊の美保基地との共用であり、正式名称は「美保飛行場」となっています。また米子空港は、「米子鬼太郎空港」という愛称でも呼ばれています。

 この「空港」と「飛行場」の違いはどこにあるのかというと、国土交通省は、「飛行場」は「航空機の離陸または着陸の用に供するため設けられる施設」で、「空港」は「公共の用に供する『飛行場』」と説明します。

 空港を離発着する航空機には、着陸料や停留料などの空港使用料が発生しますが、では防衛省が管理する共用空港の場合、使用料はどこに払うことになるのでしょうか。

 国土交通省によりますと、防衛省が管理する共用空港の場合、空港使用料のうち着陸料は設置管理者である防衛省の収入になりますが、民間航空機の使用料は特別会計法に基づき空港整備勘定として国の歳入になるということです。また、共用空港の民航地区(エプロンなど)の空港使用料のうち停留料や保安料は、国土交通省航空局の収入(空港整備勘定)となります。

 では、逆に自衛隊の航空機が民間空港を使用する場合はどうでしょうか。たとえば首相が外遊の際、航空自衛隊が運用する政府専用機を羽田空港で使用しますが、国土交通省の説明によれば、公用のために使用される航空機は空港使用料が免除されるとのことで、この事例の場合は免除の対象になるということになります。

共用空港、赤字続きになったらどうなる?

 かつて、石原元東京都知事は「横田基地の軍民共用化」プランを掲げたことがありました。都知事選の際にはなにかと話題になりますが、今後、共用空港は増えていくのでしょうか。

 国土交通省は2018年6月現在、「現在進行中の共用空港計画は無い」といいますが、茨城空港のように自治体からの要請があれば新たな共用化の可能性はあるかもしれません。

 ところで、茨城空港は前述のように、地域活性化のために共用化したという経緯がありますが、計画が持ち上がった当初から、近くには名実ともに日本の玄関口といえる巨大な成田空港がありました。これに比べ便数や交通の便で茨城空港が不利なことはもちろん明確だったわけですが、どのような勝算、言うなれば、どのような差別化を目指しここまで歩んできているのでしょうか。

「茨城空港はコンパクトな空港のため、旅客動線が短く乗降にかかる時間が短く、空港ビルの目の前に駐車場があり、荷物の搬入・搬出が簡易です。また高速道路ネットワークで東京はもとより北関東、福島などへのアクセスが容易です」と茨城空港は説明します。そうした点で差別化を図り、「元祖LCC対応空港として、旺盛なアジアの訪日需要を受け止めるとともに、首都圏のほか、北関東の航空需要に対応できる空港として発展していきたいと考えています」ということです。

 では、仮に共用空港で航空会社の赤字が続いた場合、共用の取りやめなどはあるのでしょうか。国土交通省に問い合わせたところ、「空港は、各地域において交通・交流を支える重要なインフラであり、かつ、災害時の防災拠点としての機能も有しているなど、空港の果たしている役割や機能は多岐に及んでおり、収支のみでその空港を判断することは必ずしも適切ではない」との回答でした。

 国防の要としての自衛隊基地と、地方発展の要望が取り入れられ誕生した共用空港。茨城空港のように、成田空港との差別化を目指し、今後の地域発展が成し得るのか、また自衛隊や在日アメリカ軍と民間との共存がどのような形で成し得るのか、注視したいところであります。