慢性的な赤字が続き、厳しい状況に立たされていることが多い地方空港ですが、利用者増に向け知名度アップのため奮闘している空港もあります。島根県の石見空港が考えた秘策は「ハチミツ」でした。

空港で20万匹のミツバチを飼育

 日本にはおよそ100か所の空港がありますが、地方の空港を中心に、利用者の減少や赤字に悩むところが少なくありません。島根県益田市に位置する石見空港もそのひとつ。「石見」とは現在の島根県西部にあたる、かつての石見国からくる呼称です。

 石見空港からは、ANAにより羽田空港行きの東京路線が通年で1日2往復と、伊丹空港行きの大阪路線が例年8月の夏季限定で運航されています。石見地方でも端のほうにあるため、愛称として「萩・石見空港」を採用するなど、山口県への近さもアピールしていますが、利用者数は芳しくありません。東京路線、大阪路線とも利用率は例年50%前後を推移しています。

 そのような状況のなか、石見空港では利用者増のため、ほかの空港にはない試みを行うことで知名度の向上を図っています。そのひとつが、空港内でミツバチを育てる「ミツバチプロジェクト」。空港内東側の未利用地に養蜂箱を10箱設置し、およそ20万匹ものミツバチを飼育してハチミツを採取しています。飼育に取り組んでいるのも空港の管理会社である石見空港ターミナルビルのスタッフです。

 同プロジェクトはANAの関連会社と石見空港ターミナルビルの共同事業として2016年から始まりましたが、ハチミツの品質が定評を得ているようです。2017年には、日本はちみつマイスター協会主催の最もおいしいハチミツを決定するコンテスト「ハニー・オブ・ザ・イヤー」で最優秀賞および来場者特別賞をダブル受賞しました。

「空港養蜂」の着想はどこにある?

 石見空港はさらに、従来のビン詰めとプラ容器詰めの「空港はちみつ」に加え、スティックタイプの容器に詰めた「そらはちスティック」も新商品として2018年から発売。こちらは携行しやすく、エネルギー補給に役立つとして、日本災害食学会から「日本災害食」に認定されています。

 このように石見空港の「空港はちみつ」は一定の成功を収めているようですが、空港で養蜂を行うというのは日本初の試み。一見ミスマッチなこの組み合わせ、どのようにして思いついたのでしょうか。

 じつは、空港養蜂はヨーロッパを中心に、いま広がりを見せているのだとか。その先駆けであり、最も発展しているのは養蜂が盛んなドイツ。ドルトムント、ブレーメン、デュッセルドルフ、ミュンヘン、ドレスデンなど、主要な空港の敷地内で養蜂家がミツバチを飼育しているほか、アメリカなどでも、地元の非営利団体と協力して養蜂箱を設置している空港がみられます。

 ミツバチの活動範囲は半径数キロに及び、その範囲に農薬を使用している田畑があると、汚染され死んでしまいます。そのため広範囲に未利用地が広がる空港は、養蜂に適した立地なのです。近くに住宅が少なく、迷惑をかける心配がないのも強みです。

 こうして広がった空港養蜂ですが、アジアではまだ普及していません。石見空港の養蜂事業は日本のみならずアジア全体を見渡してみても、初の試みなのです。

「空港マラソン」ではトップランナーの石見空港!

 石見空港の知名度アップ作戦は、ミツバチプロジェクトだけではありません。これも空港としては異例の、「萩・石見空港マラソン全国大会」を例年10月に開催しています。

 この大会の大きな特徴は、現役空港の滑走路がコースに組み込まれていること。2008(平成20)年に、日本で唯一、空港の滑走路を走れるマラソン大会として始まりました。10年目となる2018年の種目はハーフと10kmの2種目で、いずれも滑走路がコースの一部になっています。

 ただ、いまとなっては「滑走路を走れるマラソン大会」は日本唯一ではありません。陸上自衛隊木更津駐屯地で、滑走路を走る「木更津トライアスロン大会」が開催されています。また、2018年は八丈島空港で7月に「滑走路マラソン大会」が行われました。

 しかしながら、木更津の大会は空港ではなく自衛隊駐屯地の滑走路。八丈島は空港ですが、こちらは4km、2.5kmの2コースという比較的小規模な大会です。そう考えると、「空港マラソン」のトップランナーは現在のところ、石見空港といってよいかもしれません。

記事制作協力:風来堂