アメリカ海軍仕様の輸送機型CMV-22B「オスプレイ」が初飛行しました。航続距離が長く垂直離着陸が可能な同機を導入するメリットは想像に易いですが、実はアメリカ海軍に同機がどうしても必要である切実な理由がありました。

ちょっとずんぐり? 米海軍仕様「オスプレイ」が初飛行

 2019年12月19日(木)、アメリカ海軍の次期艦上輸送機ベル・ボーイングCMV-22B「オスプレイ」が、初飛行を成功裏に実施しました。「オスプレイ」シリーズは現在、アメリカ海兵隊、アメリカ空軍、陸上自衛隊が保有しており、今後アメリカ海軍は第4番目の「オスプレイ」オペレーターとなる予定です。

 2019年末現在、アメリカ海軍は原子力空母を11隻保有し、その航海中における人員や物資を空輸するための艦上輸送機(COD)として、グラマンC-2A「グレイハウンド」を使用しています。C-2AはE-2「ホークアイ」早期警戒機を原型とする輸送機型で、ベトナム戦争さなかの1960年代に実用化されました。現役機は全て1980年代に再生産された後期型ですが、最も新しい機体でもすでに機齢は30年に達しています。

 このC-2Aの老朽化にともなう後継機選定において、CMV-22BはC-2「再々生産型」を下し勝利、アメリカ海軍はCMV-22Bを44機調達する予定です。

従来の輸送機や他軍の「オスプレイ」とはなにが違う?

「オスプレイ」シリーズはアメリカ海兵隊型MV-22B、同空軍型CV-22B、陸上自衛隊型V-22が存在しますが、これらは基本的には同じ航空機であり、その違いは自己防御装置など電子機器類です。

 一方CMV-22Bは長距離の海上飛行に必要な、見通し線外(水平線下)通信装置といった電子機器類を備えるだけではなく、輸送機としての能力を強化するため機体自体に改良が加えられており、胴体側面部のスポンソン(張り出し)が大型化され燃料タンクを増設しています。これにより燃料搭載量は6.3tからさらに2.5t上積みされ8.8tとなり、航続距離は1600kmから2200kmに延伸されています。

 C-2Aに対するCMV-22Bの優位点は、何といっても垂直離着陸機であるという点です。これによって飛行できるコースは、空母と陸上飛行場のあいだに限定されることなく、空母から陸上の任意地点への輸送やそのほかの艦艇への発着艦が可能であり、ほかにも捜索や救難など多様な任務をこなせるようになります。さらにカタパルト発進やフック着艦の必要が無いことから、搭載する機材や乗客の負担も小さくなります。

 また最大搭載量は5tで、2000km以上の輸送においても、2.7tの物資を空輸可能です。C-2Aで同等の距離を飛行するためには、搭載量を減らさなければならず363kgに制限されていました。

日本に全タイプの「オスプレイ」が集結することに

 C-2Aでは不可能であった、F-35C用のF135エンジン搭載能力も有しており、逆を言えば、CMV-22Bを導入しなければ空母へ予備のエンジンを空輸する手段がなく、F-35Cの運用に大きな制約が生じてしまう可能性があります。よって海軍としては、可能な限り早くCMV-22Bを配備したい状況であり、当初の計画では2027年までにC-2AをCMV-22Bへ置き換える予定でしたが、これを2024年へ3年前倒しする見込みです。

 アメリカ海軍は現在、第30および第40艦隊後方支援飛行隊においてC-2Aを運用しており、空母「ロナルド・レーガン」の艦載機部隊としては岩国航空基地(山口県)に駐留する第5空母航空団に第30艦隊後方支援飛行隊第5分遣隊が所属しています。数年のうちにC-2Aは本国へ引き上げ退役、その後継としてCMV-22Bが来日し常駐することになるでしょう。これによって日本は世界で唯一、すべてのタイプのオスプレイ(MV-22B/CV-22B/V-22/CMV-22B)が配備された国となる見込みです。

 なお2019年末現在オスプレイシリーズは米空軍50機、米海兵隊360機、陸自17機、米海軍44機、合計471機の生産を見込み、残受注数は100機弱です。今後は一度調達計画を延期したイスラエル空軍向けに、さらに12機から14機の発注があると見られます。