F-14「トムキャット」戦闘機を広く知らしめた映画『トップガン』ですが、主人公のマーヴェリックたちは劇中最後のドッグファイトで、どこの誰と戦っていたのでしょうか。描写された情報や当時の世界情勢などから考察してみました。

映画『トップガン』公開は冷戦さなかの1986年

 2020年は、世界中の戦闘機ファンにとって忘れられない年となるかもしれません。多くの人たちが戦闘機の魅力にとりつかれた、そのきっかけのひとつであったであろう、伝説的な飛行機映画『トップガン』の続編にあたる『トップガン マーヴェリック』の公開が予定されているからです。何度か公開された予告編も、そのできの良さを期待できる内容となっています。

 映画『トップガン』は1986(昭和61)年に公開され、当時アメリカ海軍の主力戦闘機であったF-14「トムキャット」と、操縦士マーヴェリックの活躍を描きました。そのクライマックスでは敵戦闘機とのドッグファイトが行われましたが、この敵はいったい、どこの国のなんという戦闘機だったのでしょうか。

 敵戦闘機は映画のなかで「MiG-28」または「ミグ」と呼称されており、これはアメリカ海軍のF-5E/F「タイガーII」が演じた「架空のソ連製戦闘機」でした。映像描写からは、赤外線誘導型空対空ミサイル、エグゾセ対艦ミサイルが装備可能であり、ガトリングガンを2門搭載、単座/複座機があり、マイナス4Gに及ぶ比類なき「機首下げ機動」が可能である、などの性能を有していると推測できます。

 ではこのMiG-28は、いったいどこの国の所属だったのでしょう。映画では「相手」「敵」などの表現にとどまり名指しはされておらず、尾翼の国籍表示も架空のものでした。ただ、ストーリーの状況からほぼ特定が可能です。そしてそれは、ほぼ間違いなくインド空軍です。

映画『トップガン』の敵 なぜインドと断定できるのか?

 なぜインドと断定できるのでしょうか。

 まず、クライマックスとなる最後のミッション前ブリーフィング(会議)では、マーヴェリックらが所属する空母「エンタープライズ」の座標がホワイトボードに、「北緯20度43分、東経64度24分」と記されています。これはインド洋上であり、東のインド、北のパキスタン、西のアラビア半島からほぼ等距離の位置です。

 そして、マーヴェリックが最後に空母から発艦した時点における、敵MiG-28の位置は、セリフ中で真東へ距離180海里(340km)であると報告されています。さらにその少し前のシーンにおいて、真東から敵機が接近中であるとされ、MiG-28がインド沖合からアメリカ海軍の空母へ向けて飛行し、その途上においてアメリカ海軍のF-14とドッグファイトに入ったことが分かります。

 以上のように、映画の劇中描写から判断するに、インド空軍以外は地理的にほぼ考えられない状況となっています。ただ、パキスタン空軍である可能性もゼロとは言えません。

舞台はインド洋 当時の「ミグ」保有国…状況証拠は揃ったか

 2019年夏、公開された『トップガン マーヴェリック』の予告編において、マーヴェリックが着用していたジャケットから、日の丸と台湾のワッペンが無くなっていることが話題になりました。代わりに「インド洋クルーズ85-86」というワッペンになっていて、すなわち1作目『トップガン』で描かれた作戦行動を記念したものと見られます。また『トップガン』では夏服を着用していたことから、恐らく1985(昭和60)年の夏季のできごとだったと推測されます。

 ここからは、映画の描写にはない筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)の考察ですが、当時のパキスタン空軍はアメリカまたはフランス、イギリス製の機種に加えアメリカからはF-16を購入するなど「西側」の航空機を配備し、ソ連とは時折、交戦状態にありました。一方インド空軍はMiG-21などソ連製戦闘機を多数、保有していました。

 また、現実世界におけるアメリカ海軍戦闘機兵器学校、すなわち『トップガン』では、MiG-21をシミュレートする仮想敵機にF-5戦闘機を使用しており、架空のMiG-28もまた間接的にMiG-21がモデルであると考えると、やはり相手は地理的にも、MiG-21を保有していた事実からも、インド空軍であったのではないでしょうか。

 もちろん映画はあくまでもフィクションであり、当時のアメリカがインドと戦う理由はありません。1981(昭和56)年には南地中海において、アメリカ海軍のF-14とリビア空軍のスホーイSu-22が交戦した「シドラ湾事件」があり、こちらなどもシナリオに影響を与えていたかもしれません。しかしながら上述したような状況から見て、インド空軍を意識していたことはほぼ間違いないところでしょう。

 映画第2作『トップガン マーヴェリック』では、何と戦うことになるのでしょうか。