日本国内でロシア(ソ連)製戦闘機が見られる機会は貴重で、インド空軍のSu-30MKIが来日することにはそうした意義もありますが、実はこの戦闘機、輸出元ロシア国内のモデルよりも高性能といいます。どういうことでしょうか。

インド空軍のロシア製戦闘機が日本へ

 2019年11月30日、防衛省は2020年中にインド空軍主力戦闘機Su-30MKIと飛行隊を日本国内へ招待し、航空自衛隊戦闘機飛行隊とともに共同訓練を行う方針であることを明らかにしました。

 もし実現したならば、航空自衛隊の歴史において初めてとなるロシア製戦闘機が来日しての国際共同訓練となり、またロシア(ソ連)製戦闘機が来日する事実そのものも、恐らくは1976(昭和51)年9月6日に発生した、ヴィクトル・ベレンコ防空軍中尉の亡命事件においてミグMiG-25Pが函館空港へ強行着陸した事例以来、44年ぶりのできごととなる見込みです。

 インド空軍Su-30MKIは、名機ユナイテッドエアクラフト(スホーイ)社製Su-27シリーズの、数ある派生型のひとつであり、各種誘導兵器の運用能力に優れた複座多用途戦闘機型として、同軍は242機を保有しています。特に2002(平成14)年の配備開始時点においては、本家ロシア空軍の配備機を性能面で凌駕する逆転現象が生じていました。

 冷戦が終わり市場経済に晒されるなか、ロシアの工業製品としては国際競争力を持つ唯一の存在といってもよい戦闘機は、貴重な外貨獲得手段として高い性能が付与されました。また00年代のロシアは経済的に低迷しており、空軍の古い機体を近代化改修や更新する余力が全く無かったたため、必然的に他国機(インド空軍向け)の方が高性能になるという、輸出用に性能を制限する「モンキーモデル」とちょうど真逆の現象が生じたのです。

インド空軍のSu-30MKI そもそもどんな戦闘機?

 Su-30MKIは「ロシア空軍機よりも強力なロシア製戦闘機」のなかでも、とりわけ強力でした。従来型レーダーよりも高性能な電子走査型レーダーを搭載するなど最新鋭の電子機器に加え、機体自体も実用化に至ったSu-27シリーズの中において数少ない、「カナード」と「推力偏向式ノズル」の両方を備えるという特徴を持っています。

「カナード」すなわち先尾翼は、特に高高度や低速飛行時に高いGを掛けた旋回の際などにおいて、より高い操縦性を与えます。また推力偏向ノズルはエンジンの排気方向を制御することで、やはり同じように操縦性を高めることが可能です。

 ただし元のSu-27の状態からカナードや推力偏向式ノズルを追加するということは、そのぶんだけ高価かつ整備に手間が掛かるデメリットがあります。また機動性自体、現代の空中戦において勝敗を左右するようなことがあまりないため、コストパフォーマンス面においては課題があります。

 Su-27自体が元々トップクラスの高機動性を持った戦闘機ですから、後に生産されタイプのなかには、カナードも推力偏向式ノズルもあえてどちらも備えないモデルや、どちらか片方だけを備えるモデルなど、運用思想によってさまざまなタイプがあります。

 いずれにせよSu-30MKIは、このカナードと推力偏向式ノズルのふたつを備えることで、Su-27シリーズとして最も高い機動性を目指した機種となっています。

インド空軍の実力のほどは…?

 近年、日本では従来から実施していた日米間のみならず、友好国の空軍を招待し国際共同訓練を行う事例が増えつつあります。2016年10月には、イギリス空軍のユーロファイター タイフーンFGR.4戦闘機が三沢基地(青森県)へ来日、2019年9月にはオーストラリア空軍のF/A-18戦闘機が千歳基地(北海道)へ来日しています。

 Su-30MKIがどの基地へ展開し、どの飛行隊と訓練を実施するのかは、現時点(2020年1月)では明らかとなってはいませんが、性能面においてSu-30MKIは近代化改修型F-15MJやF-2に勝るとも劣らない高性能機です。

 またインド空軍は実戦経験もあり、2019年2月にはパキスタン空軍とのあいだに撃墜をともなう空中戦がありました(パキスタン空軍はSu-30MKIの撃墜を主張しているがインド空軍は否定)。

 インド空軍が持ち込む「東側戦闘機」は、航空自衛隊にとってよき訓練相手になることでしょう。