自転車通学の中学生に対するヘルメット着用義務は全国で見られますが、高校生を含めた義務化を検討する動きが広がっています。ただ生徒自身の抵抗感だけでなく、学校関係者からも「難しい」といった声があるようです。

自転車の死亡事故は高校生が最多 ヘルメット義務化の県も

 自転車通学の高校生に、ヘルメットの着用義務化を検討する動きが広がっています。大分県が2021年度からの義務化を予定しているほか、群馬県や東京都などは高校生にヘルメットを着用してもらうモニター事業やモデル校制度を設けており、一般社団法人 自転車協会によると、群馬県や東京都の事例はヘルメットの普及を図るとともに、着用の義務化を検討する動きの一環だといいます。

 道路交通法では、13歳未満の子供が自転車を運転する際にヘルメットをかぶらせるよう、保護者の努力義務を定めているほか、中学校では自治体や学校レベルで、着用を義務化しているケースが広く見られます。前出の大分県では、自転車通学する中学生のヘルメット着用率は100%に近いとのこと。

 しかし高校生になると、大分県でも「周りにかぶっている人がほとんどいない」(大分県学校安全・安心支援課)という状況とか。また2020年現在、都道府県レベルで公立高校の生徒に対し、自転車通学時にヘルメットの着用義務を定めているのは、愛媛県しかありません。

 愛媛県では、2014(平成26)年に自転車通学中の高校生の死亡事故が相次いだことから、ヘルメット着用義務化の機運が高まったといいます。警察庁によると、自転車乗車中の死亡事故率は高校生、とりわけ16歳が最も高く、自転車協会は、学校生活に慣れた5月から6月に事故が多いと話します。

 こうしたなか、冒頭のように各地で高校生へのヘルメット普及を図るべく、義務化を含めた検討が行われてはいるものの、その実現は一筋縄ではいかないようです。

高校生のヘルメット義務化、学校関係者からも「難しい」の声

 静岡県は2019年10月から、中学生の自転車通学時におけるヘルメットの着用義務を定めた条例を施行しましたが、当初の案では、高校生もその対象に入っていたといいます。県のくらし交通安全課によると、県立高校の校長会から「実効性を担保できない」という意見があり、高校生を含む生徒の保護者に対し、ヘルメットの着用をうながす努力義務を規定するに留めたそうです。

 自転車協会によると、高校生になればバスや鉄道など、通学方法が大きく広がり、自転車通学だけにそのような義務を課す点が難しいと思われること、また、ヘルメットにも数千円から数万円まで値段の幅があるため、親の負担の平等性といった観点も、義務化の検討に影響するといいます。

 また愛媛県でも、以前はほとんどの高校生がヘルメットを着用していなかったといい、「いきなり義務化となれば、当然、反発されたでしょうし、学校関係者のあいだでも『無理だろう』という雰囲気がありました」(県教育委員会保健体育課)と話します。

 義務化までのあいだに、愛媛県はメーカーと協力して生徒や教員に向けたレクチャーを開催したり、ヘルメットのデザインや、啓発ポスターのデザインを生徒主体で検討させたりと、相応の意識付けを行ったそうです。そのうえで、義務化にあたり3万人の高校生にヘルメットを無料配布したことが、実行性を高める大きなカギになったといいます。

これならダサくない? 流線形ヘルメット普及

 大分県は、高校生の自転車通学ヘルメット着用義務化に向け、「まずは『ヘルメットをかぶっている友達がいる』という環境を作ることが大事」と話します。そのために、群馬県などと同様、ヘルメットを着用してもらう高校生モニター600人を募集し、ヘルメットの購入に上限5000円の補助を行う事業を実施しているそうです。

 ただ高校生にとってヘルメットは、髪型が崩れるといったファッションの面からの抵抗もあるとのこと。自転車協会も「通学用ヘルメットといえば、工事用のヘルメットに近いイメージがあるでしょう」といいます。

「いまは通学用でも、通気性に優れ軽量なスポーツタイプのものもあります。まずは生徒に対し、ヘルメットに触れてもらう機会をつくるのが効果的です。全国で生徒と触れ合うなかでは、まずその軽さに驚かれますね」(一般社団法人 自転車協会)

 前出のとおり愛媛県では、生徒主体でヘルメットのデザインが検討された結果、流線形のスポーツタイプのものが選ばれ、それが3万人の生徒へ無償配布されました。大分県でも、モニター事業で購入を補助しているヘルメットについては、しかるべき安全認証があるものならば特に指定はしていないものの、実際にはスポーツタイプのヘルメットがほとんどだそうです。