首都圏の私鉄は、「園」や「遊園」といった駅名にも見られたように、自社系列の遊園地を持っていました。しかし、多くはすでに閉園しています。なぜ鉄道会社が娯楽施設である遊園地を建設し、そしていまは存続していないのでしょうか。

西武系「としまえん」の閉園が決定 そのほかの私鉄の遊園地とは

 東京の大手私鉄には、かつて沿線に自社系列の遊園地が多数ありました。それらはおおむね大正時代から昭和初期にかけて建設されたものです。2020年8月末に閉園する「としまえん」もそのひとつです。1926(大正15)年の開園で当初は非鉄道会社による経営でしたが、1941(昭和16)年に武蔵野鉄道(現・西武鉄道)が買収します。としまえんは、都内にある私鉄会社系遊園地として唯一いまも営業しているものなので、閉園はその点でも特筆されるものといえましょう。

 都内とその近郊へ、前述の時期に建設された遊園地を挙げていきましょう。

・京急関連「花月園」、最寄駅 花月総持寺、1914(大正3)年から1946(昭和21)年まで。
・東急関連「二子玉川園」、最寄駅 二子玉川、1922(大正11)年から1985(昭和60)年まで(開園時は玉川電気鉄道による)。
・東急関連「多摩川園」、最寄駅 多摩川、1925(大正14)年から1979(昭和54)年まで。
・東武関連「兎月園」、最寄駅 成増、1924(大正13)年から1943(昭和18)年まで。
・京成関連「谷津遊園」、最寄駅 谷津、1925(大正14)年から1982(昭和57)年まで。
・西武関連「としまえん」、最寄駅 豊島園、1926(大正15)年から2020年まで(予定)。
・京王関連「京王閣」、最寄駅 京王多摩川、1927(昭和2)年から1944(昭和19)年まで。
・小田急関連「向ヶ丘遊園」、1927(昭和2)年から2002(平成14)年まで。

 以上は鉄道会社が直営、有力株主、協賛などとして関係したもので、遊園地名は閉園時のもの、最寄駅は現在の名称です。

 花月園と京王閣は、後に跡地を利用して競輪場となったので(花月園競輪場は2010〈平成22〉年閉鎖)、そのことから名前を知っている人も多いでしょう。向ヶ丘遊園は閉園後も小田急線の駅名はそのままです。

遊園地の建設 発端は阪急の創始者 小林一三

 このほか1922(大正11)年開園の「あらかわ遊園」(最寄り停留場 都電荒川線荒川遊園地前、2021年夏ごろまで休園中)もぜひふれておきたいものです。現在は荒川区営ですが、都電荒川線の前身にあたる王子電気軌道が経営していた時代があります。

 大正から昭和初期に、各私鉄が遊園地を建設したのは、第一に遊園地を訪れる人たちによる乗客増、第二に沿線のイメージアップを図り沿線の居住者を増やすこと、第三に鉄道収入以外でも利益増を図ることなどが挙げられます。休みの日は電車に乗って家族そろって遊園地へ、といった都市社会の生活スタイルを、鉄道会社が創出していったわけです。

 これらは、阪急グループの創始者 小林一三の発案で、箕面有馬電気軌道(現・阪急電鉄)が行った宝塚の開発に影響を受けたものでした。湯治場的温泉地だった宝塚に、1911(明治44)年、大理石造りの大浴場と家族向けの温泉施設「宝塚新温泉」を開場、1924(大正13)年には遊園地と大劇場を開設し、大きく発展させています。

 宝塚は武庫川に面していますが、二子玉川園、多摩川園、京王閣も多摩川のすぐそばに建設されています。としまえんは、園内を石神井川が貫いています。そのほか川沿いの丘の上に向ヶ丘遊園(多摩川)、兎月園(白子川)、海辺に谷津遊園、海沿いの丘の上に花月園が建設されるなど、いずれの施設も川や海の風向明媚な地に立地させているのが特徴です。

戦後は規模を大きくして郊外へ 一方で大正期からの遊園地は衰退へ

 二子玉川園の例を見てみます。現在の二子玉川は、タワーマンションが立ち都内でも有数のお洒落な街となっていますが、たとえば1934(昭和9)年、玉川電気鉄道(後に東急が買収、現在の田園都市線 渋谷〜二子玉川間などの地上を走っていた)は広告で、「幽邃境玉川!御遊覧は玉川電車で」とうたっています。当時の二子玉川付近は、春は花見、夏は納涼船、秋は栗拾いや芋掘りなどが楽しめる自然豊かな場所でした。

 施設内容については京王閣の例を見ると、ドイツ風の大浴場、メリーゴーランド、プール、ミニゴルフ、バッテリーカー、動物園、各種遊具などがそろっています。

 戦後は、1950(昭和25)年に開業した「西武園ゆうえんち」を皮切りに、第二次遊園地建設ブームが訪れます。鉄道会社系では、西武系の「ユネスコ村」(1951〈昭和26〉年から1990〈平成2〉年まで)、「京急油壺マリンパーク」(1968〈昭和43〉年開園)、「小田急御殿場ファミリーランド」(1974〈昭和49〉年から1999〈平成11〉年まで)など、都心から離れた地に建設されていくのが特徴です。非鉄道会社系も、「東京ドームシティアトラクションズ」(旧称・後楽園ゆうえんち、1955〈昭和30〉年開園)、「横浜ドリームランド」(1964〈昭和39〉年から2002〈平成14〉年まで)、「よみうりランド」(1964〈昭和39〉年開園)など複数登場してきます。

 昭和40年代以降、多摩川を例にとれば河川汚染が進むなど、各地で風光明媚の魅力は減少し、大正時代からの遊園地が次々と閉園していきます。

 そして1983(昭和58)年、遊園地界に超ド級の黒船来襲、「東京ディズニーランド」の開業で「テーマパークの時代」を迎えます。「東武動物公園」(1981〈昭和56年〉開園)、「東武ワールドスクウェア」(1993〈平成5〉年開園)など、規模の大きい施設が誕生します。

 多摩川園は現在、田園調布せせらぎ公園、二子玉川園は「二子玉川ライズ」(タワーマンションなど)へと、時代に合わせて様変わりしています。