日本の鉄道車両は、車体や機器類を見てもそのほとんどが自国の重工メーカーや電機メーカー製で、外国製が入り込む余地は一見なさそうです。しかし、一部では外国製が多く採用されています。それはどこで、理由は何でしょうか。

外国製の車両が走る各地の路面電車 新規導入の計画も

 日本の鉄道車両の多くは2020年現在、国内の電機メーカーが製造した機器や内装を、国内の車両メーカーが製造した車体に組み付けた「日本製」の車両が主流ですが、車種によっては外国製の車両が一定のシェアを持っている場合があります。

 それは路面電車です。2020年現在は、ドイツのボンバルディア・トランスポーテーション社製の低床路面電車が各地で運行されています。もっとも、これらの車両はドイツで造られているわけではなく、ボンバルディア社と技術提携している新潟トランシスがライセンス生産をしています。

 これは、新潟トランシスの前身である新潟鉄工が1997(平成9)年、熊本市交通局の9700形電車を製造したのが始まりです。2020年現在は、富山、高岡、福井、岡山、熊本の各都市で見られるほか、建設中の宇都宮ライトレール(栃木県)でも同型の車両が導入予定です。

 このほか広島電鉄は、同じくドイツのシーメンス社が製造した路面電車5000形を導入していますが、2019年以降の導入車両は国産に切り替えています。

 路面電車に外国製車両が多く導入された背景には、1960年代から80年代にかけて、日本国内で路面電車が次々と廃止されたことが挙げられます。存続を決めた路線も、これら廃止された路線から中古車を購入することで車両の融通を行っていたため、新型車両の需要が小さかったのです。

あの通勤形電車も一部に外国製部品

 また、現在の主流である低床車両の技術の多くは外国が特許を持っており、それらを回避、あるいは使用料を支払ってまで製造しても、価格面で競争が難しいという点も挙げられます。そこで、外国の路面電車技術を日本の車両メーカーがローカライズする方法が編み出されたといえます。

 このほか、厳密には車両ではなく作業機械ですが、保線車両も外国製の車両が多い分野です。線路の砂利を突き固めるマルチプルタイタンパーや、線路の砂利を整えるバラストレギュレータ―は、オーストリアのプラッサー&トイラー社製品が多く使われています。

 路面電車以外の外国製車両は、現代ではあまり見かけませんが、1990年代に製造された車両では、制御器やドアエンジン、座席などに外国製のものを採用した例があります。

 有名どころでいえば、「歌う電車」と呼ばれた京急電鉄の2100形と一部の1000形でしょう。これらに使われている制御器は、シーメンス社製の「SIBAS32」で、路面電車から高速鉄道まで世界各国で使われている汎用品です。大量生産による価格の安さがセールスポイントでした。

 ほかにも、JR東日本209系電車のドイツ・クノール社製コンプレッサー(ドア開閉などに使う空気の圧縮装置)や、フランス・フェベレー社製のドアエンジン、JR東日本253系電車に採用されたフランス・コンパン社製の普通車座席などが挙げられます。

漁船にヒントを得た? アメリカ製のエンジンを採用した理由

 1990年代、鉄道各社は製造、開発費用を低減するためのひとつのやり方として、部品や機器で国産改め外国製を積極的に採用しました。これらの試みの多くは、さまざまな問題から再び国産品に戻ったものも多いのですが、JR東海のディーゼルカーのように、すべてのエンジンをアメリカ・カミンズ社製のものに統一し、2020年現在も運用しているケースもあります。

 実はカミンズ社のエンジンは、JR東海が採用するよりも前、1982(昭和57)年に大井川鐵道がDD20形機関車で採用しています。これは当時、日本の鉄道用エンジンに適当なものがなかったため、出力、価格、保守性に優れたカミンズ社のエンジンを採用した経緯があります。静岡県内では多くの漁船がカミンズ社のエンジンを採用していたこともあり、メンテナンス面でも不安がなかったというのも理由のひとつでした。

 日本の鉄道黎明期は、イギリスやアメリカ、ドイツなどから車両を購入していましたが、その後の工業技術の進歩などにより、徐々に国産化にかじを切ってきました。しかしながら、現在でも部分的とはいえ、外国製品は活用されています。