自動車保険に代表される乗りもの関連の保険は、その車両に紐づくものですが、その仕組みを大きく転換した「ヒトにつく乗りもの保険」の開発が始まります。レンタカーや自転車、バス、電車、さらには歩行中の事故も補償されるそうです。

クルマを持たない人向けの「乗りもの保険」どういうもの?

 自動車走行データなどを取り扱う株式会社スマートドライブ(東京都千代田区)と、損害保険大手の損保ジャパンは2020年6月23日(火)、「ヒトにつくモビリティ保険・サービス」開発のための業務提携契約を締結したと発表しました。

 従来の自動車保険に代表されるように、乗りもの関連の保険は「車両」に紐づけられるのが一般的ですが、損保ジャパンによると、「ヒトにつくモビリティ保険」は、これまでの自動車保険などの考え方を180度転換するものだと話します。

「レンタカーやバス、電車、自転車など、様々な移動手段を利用する際の、個人のケガや賠償責任を補償する保険を想定しています。それぞれの乗りものによる移動実績に応じて、乗りものを使った分だけ、事後に保険料を頂く仕組みを想定しています。また、歩行中にクルマにはねられるようなケースも対象と考えています」(損保ジャパン)

 たとえば、自転車運転中や歩行時の事故ならば、自動車保険の特約や、人身傷害保険、個人賠償保険などでもカバーできます。しかしクルマを手放せば、自動車保険の特約で付けていた保険はなくなるほか、傷害保険などは一般的に、使っても使わなくても年単位での契約が必要です。今回の「ヒトにつくモビリティ保険」は、乗りものを使った分だけ課金する仕組みとすることで、保険料を抑えるといいます。

「レンタカーやカーシェアの場合は、事業者が用意している保険も併用することが考えられます。こうした保険は対人や対物の限度額が様々で、たとえばクルマで電車にぶつかり、運行を止めてしまうようなケースの賠償額は億単位に上り、既存の保険ではカバーしきれないケースもあります。レンタカー会社などにもメリットがあるものになるでしょう」(損保ジャパン)

 ターゲットとしては、クルマを手放した高齢者、あるいは、もとからクルマを持たない若年層などを想定しているそうです。

世の中の変化に大きな危機感 実現は遠い未来にあらず

 このような保険を開発する背景には、クルマを持たずにレンタカーやカーシェアといったシェアサービスに軸足が移っていくという、「所有から使用へ」という価値観や行動の変化があるそうです。

「現在、当社の売上の50%は自動車保険が占めていますが、今後、クルマを手放す人が増えると考えられ、大きな減収につながる恐れがあります。しかしながら『乗りもので移動する』ことに変わりはないのです」(損保ジャパン)

 近年、自動車業界では「CASE(コネクティッド、自動化、シェアリング、電動化)」の流れが進んでいるほか、複数種類の公共交通やシェアサイクル、カーシェアなどをひとつのサービスとして提供する「MaaS(マーズ。移動のサービス化)」といった概念が、今後の目指す方向といわれます。それらの進展を見越し、あらゆる移動手段に対応する商品が必要になると予想したことから、今回の保険の開発につながったといいます。

 その仕組みとしては、レンタカーやバス、電車、自転車などの利用状況を、スマートフォンに搭載されている各種センサーのデータから取得し、保険料を割り出していくといいます。ちなみに損保ジャパンによると、スマートドライブは位置情報データから、その人がバスか、クルマか、自転車に乗っているかを判別できる技術を持っているのだとか。

「多くのお客様は、移動手段ごとのリスクを認識されていません。自転車保険が最近になって、高額な賠償例などが知られるようになり加入の進んだことが好例です。目指すのは、リスクを認識していなくても、何かあれば勝手に補償される、というものです」(損保ジャパン)

 この「ヒトに紐づくモビリティ保険」、2022年中にも提供を開始したいといいます。代理店経由ではなく、スマートフォンなどから、個人が直接契約する形を想定しているそうです。