『ホットファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』や『ショーン・オブ・ザ・デッド』で知られるエドガー・ライト監督が、31日に都内で実施された映画『ベイビー・ドライバー』の来日記者会見に出席。主人公との共通点や、制作の舞台裏について語った。



幼少期の事故が原因で耳鳴りを抱えているものの、天才的なドライビング・テクニックを持つ主人公・ベイビーが、強盗団とともに繰り広げるカー・チェイスを描く本作。主人公の“音楽を聴くことで耳鳴りを抑えることができる”という設定が生まれた背景を聞かれたライト監督は、「オリバー・サックスの著書『ミュージック・オフィーリア(原題)』の中で、本作の主人公が抱えている耳鳴りについて書かれていることを見て思い出したんだけど、実は7歳のころに、僕自身が耳鳴りの症状を抱えていたんだ」と意外な過去を告白。



続けて「家族の中で引き継がれてしまっているものだったんだけど、幸運なことに今はないんだ。そんなこともあって本を読み込んだら、人によっては耳鳴りを抑えるために、一日中ずっと音楽を聴いている人もいるということを知って、ハッとしたんだ。ベイビーが、なぜいつも音楽を聴いているのかという理由づけになると思ったんだよ」と振り返る。



その耳鳴りを抱える主人公・ベイビーを演じたのは、『きっと、星のせいじゃない。』などで知られるアンセル・エルゴートだ。主演にエルゴートをキャスティングした理由について、「音楽への愛を共有していたことが、彼を私と脚本に結び付けてくれたんだ」と明かすライト監督は、「カリスマ性がある役者だと思うよ。あの年頃の役者では珍しく、スクリーンの中で自信のようなものを漂わせているね」と若手俳優を絶賛する。



演出で意識した点に話が及ぶと「現場では、必ず音楽をかけて撮影していたんだ。音楽がかかるシーンでは、音楽をかけてリハーサルを行っていたんだけど、会話がないシーンでは大音量で音楽をかけたりしていたね。アンセルが演じるベイビーだけが楽曲を聞いている場合は、アンセルがヘッドフォンで音楽を聞きながら撮影を行った。また、すべての登場人物が音楽に反応しているシーンでは、カメラには映らないイヤーピースを使って、音楽を聴いてもらいながら撮影を行ったんだ」と回想。そして「それぞれメソッドは違うけれど、全編で音楽をかけながら撮影したよ。重要だったのは、観客が本編で聞いている音楽を、役者が演技しているときに聞いていたということだ。現場でかけていた楽曲は、すべて作品で使われている楽曲なんだ」と制作の舞台裏を明かした。



これまでにも日本のポップカルチャーからの影響を明かしてきたライト監督。日本での映画製作に対する意欲を問われると、「ぜひ作りたいと思っているよ。イギリス以外で作った2本の作品を本当に楽しんで作ることができたから、日本でもやってみたいね。でもそのためには、まずはぴったりくる物語に出会わなきゃいけないかな」とニッコリ。本作の劇中にはスバルWRXが登場するが、これについては「もともと脚本の段階ではトヨタのカローラと書いていたんだけど(笑)、スタントチームからWRXを使うようすすめられたんだ。全輪駆動車で、セダンタイプだから、日常で見かける車ではあるけれど、ラリーカーと同じような動きができるということでおすすめされたのさ。そういうわけでWRXを起用したんだけど、スバルのファンからはすごく好評だよ」と笑顔で語った。



全米で1億ドル突破が見込まれる大ヒットを飛ばしている本作。大成功を受けて、続編への意欲を持っているか聞かれたライト監督は、「もしかしたら、ね。実は、公開前から続編の話はもらっていたんだけど、着手するまでは続編について考えていなかったんだ。でも、制作を通じてキャラクターを描くことをすごく楽しんだから、次に彼らがどうなっていくかに興味を持っているところさ。決定しているわけではないけれど、そういう話もちらほら出てはいるよ」と話していた。



(取材・文・写真:岸豊)


映画『ベイビー・ドライバー』

8月19日(土)新宿バルト9 他全国ロードショー





監督・脚本:エドガー・ライト『アントマン』

製作:ニラ・バーク、ティム・ビーバン、エリック・フェルナー

出演:アンセル・エルゴート『きっと、星のせいじゃない。』/ケヴィン・スペイシー『アメリカン・ビューティー』/リリー・ジェームズ『シンデレラ』/エイザ・ゴンザレス『フロム・ダスク・ティル・ドーンザ・シリーズ』/ジョン・ハム『MAD MEN マッドメン』シリーズ/ジェイミー・フォックス『ANNIE/アニー』

2017 年/アメリカ映画/原題:Baby Driver

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント