2003年、代々木八幡商店街にレストラン「LIFE」はオープンした。訪れた人を心地よく包み込むような空間とほっとさせる料理だけでなく、カルチャーやライフスタイルの発信地としても多くのお客さんから愛されている。



そんな「LIFE」の生みの親であるオーナーシェフ・相場正一郎さんは、自他ともに認める“道具好き”。食はさることながら、山登り、サーフィン、インテリア、カメラなど、さまざまなことに造形が深い相場さんは、一体どんな道具たちと寄り添いながら一年を暮らしているのか。その月ごとの欠かせない愛用の道具をひとつずつピックアップして、相場さんと道具たちのストーリーを紡いでいく。



第3回目となる6月は、お気に入りの場所でゆっくり楽しむモーニングコーヒーのお話。代々木公園近く、梅雨の気配に緑が映える相場さん邸にて、話を伺った。




相場さんのコーヒータイムの定位置であるリビングのソファ。オットマンに足をかけて完全にリラックス。




地元の栃木で楽しんだ山コーヒーの思い出



――相場さんはコーヒーがお好きとお聞きしたのですが、いつ頃から飲まれるようになったのでしょうか?



実はコーヒーを意識して飲み始めたのはわりと最近なんですよ。数年前まではストレートで飲めなくてミルクを入れて飲んだりしていました。コーヒーをよく飲むようになったきっかけは、栃木・那須の知人に誘われた山登りでコーヒーを飲んだこと。山の上までコーヒーの道具を一式持ってきてくれて、頂上の景色の良い場所でバーナーを使ってコーヒーを淹れて……。山の上でコーヒーを囲む時間が心地いいなと感じて、それからでしょうか。



――想像するだけでリラックスできそうな素敵な時間ですね。那須の家とNASU SHOZO CAFEはご近所だとか。



そう、那須の家とSHOZO CAFEは車で15分くらいなんですよ。SHOZO CAFEは最初、名前がすごいな、と思って。ロゴは象だし、オーナーはどんな大柄な人かと思ったら、小柄で可愛らしくて……とても丁寧な方。店の洗練されたセンス、雰囲気のよさにも衝撃をうけました。そしてなにより店で出しているものも全て美味しくて、毎回行くたびに発見がある。



それにオーナーはバイクや山登りなど趣味が多くて話題が豊富で楽しい人。趣味や旅の話が尽きることがありません。



――コーヒーを飲むきっかけはSHOZO CAFEの影響が大きいのですね。



そうですね。SHOZO CAFEの影響もあってか今やコーヒーは完全にブラック派です。また、一時期「LIFE son」にパドラーズコーヒーができて、身近にコーヒーの道具や環境が整ってきたこともあるかもしれません。



愛用のケメックスを使って淹れるコーヒータイム





LIFEで一輪挿しとして使っていたというケメックス。10年ほど前のモデル。

LIFEで一輪挿しとして使っていたというケメックス。10年ほど前のモデル。








――相場さんは1日に何度かコーヒータイムを設けていらっしゃるとお聞きしたのですが、コーヒーは1日のどのタイミングに飲むことが多いですか?



まずは朝起きてランニングをして、帰ってから子供たちを学校に送り届けて朝食を食べた後や、ティータイムなどに自分で淹れることが多いですね。



――ご自身でコーヒーを淹れられるのですね。ちなみにコーヒーの道具は何を主に使われているのでしょうか?



ケメックスで淹れることが多いですね。これは10年ほど前のモデルで、人から譲り受けたものなのですが、最初はお店で一輪挿しとして使っていました。その後店の道具の配置換えの際に持って帰ってきて、自宅で使っています。ケトルはホーローの口が細口のもの、基本的にドリップで淹れています。



――ケメックスは使い込まれていて味わい深いですね。お豆はどちらのものをよく飲まれますか?



近所のリトルナップコーヒーか、SHOZO CAFEの豆。この2つを飲むことが多いですね。リトルナップは散歩がてら買いにいって、SHOZO CAFEは那須に行った時に購入します。他ですと、ディモンシュの豆などは湘南方面に行ったときに手に入れることが多いので、ディモンシュのものを飲むこともあります。



――どのお店もコーヒー好きにはたまらない名店ですね。長く愛されるお店同士、どこか通じるものがあるのでしょうか。



店は違えど、気取らず地域に根付いた店作りをしている点など、志すものに共通したところがあるのかもしれません。



――お手数ですが普段相場さんが飲んでいるコーヒーを淹れていただくことはできないでしょうか?



いいですよ。じゃあ今日はリトルナップコーヒーの豆でお淹れします。












――美味しい……。相場さんはコーヒーを淹れる時間がお好きなのでしょうか?



いや、どちらかというと人に淹れてもらう方が好きですね(笑)。家事など家での仕事の多くを奥さんがやってくれているので、役割分担的に流れで僕が淹れるようになりました。それに奥さんがもともとコーヒー好きなので、ねぎらう意味でも僕が淹れることが多いですね。



朝食後にコーヒーと読書を楽しむ時間



――朝のコーヒータイムに読書をされると伺ったのですが、普段はどのような本を読まれるのでしょうか?





普段はサーフィン関係の雑誌や趣味本が多いですね。今読んでいるのは薪ストーブの本で、かなり専門的に書かれていて面白い。これは那須暮らしにすごく役に立ちそうです。



――薪ストーブ! アウトドアを嗜む相場さんならではのチョイスですね。日々の生活に読書タイムを設けられていらっしゃいますが、昔から本がお好きだったのでしょうか?



もともと本を読むのは好きではなかったのですが、イタリア時代にひとりの時間がたくさんあって、時間を潰すために読み始めたところ面白くなったんです。今は朝コーヒーを飲む時間に他の家族が出かけていて、家にいるのが自分だけになることが多いので、その時間に読書をするようにしています。



――忙しい日々の中でもそういった時間を持てると、心にゆとりができそうです。その時間帯はリビングのどの場所で過ごされるのでしょうか?



窓際のソファが定位置ですね。コーヒーを片手にソファに深く腰掛けてオットマンに足を投げ出して……完全にリラックス状態(笑)。この場所だと動かなくてもライトを点けたり、後ろのデスクの上から別の本を取ることもできるんですよ。



甘いものと一緒に



――非常にリラックスしたコーヒータイムを過ごされていますが、コーヒーのお供でお好きなものはありますか?




甘いものに目がないという相場さん。伺った日のおやつは、相場さんがニュージーランドで買ってきたチョコチップクッキー。




昔から甘いものに目がないんですよ。僕は1日の食事は朝と晩の2回だけなのですが、それだと昼過ぎにどうしても小腹が空いてしまう。それで2〜3時くらいに昼食代わりに甘い物を食べたることが多いんですよ。それこそコーヒーと一緒に。



クッキーやチョコレートなどの洋菓子も好きなのですが、おまんじゅうやモナカ、鯛焼きなど和菓子とコーヒーを合わせるのも大好きですね。子供に買ったソフトクリームとコーヒーを一緒に飲んだら、それも美味しかったですね。



――まるでアフォガードのようですね。最後に、コーヒーのどのようなところに惹かれますか?



やっぱりコーヒーを飲む「時間」が好きですね。家でも野外でも。朝、自分で淹れたコーヒーを水筒に入れて、サーフィンに行って波に乗ったあと、一服する時間もいいですね。時間がたって少し温くなったコーヒーをバーナーで温めなおしたりして。山コーヒーのように、自分に立ち返ることができるほっとする時間なんです。









(インタビュー・文:山本加奈子、撮影:MASA(PHOEBE))



「LIFE」オーナーシェフ

相場 正一郎



イタリアのトスカーナ地方で料理修行をした後、2003年に代々木公園にカジュアルイタリアン「LIFE」をオープン。現在、「LIFE son」「LIFE Sea」など全国に5店舗を運営する。店舗では、イベントの開催、オリジナルプロダクトの制作、地元の情報を集積したフリーペーパー『PARK LIFE』の発行など、カルチャーの発信地としても多くのファンを持つ。最近、渋谷の東急本店に抜ける長い一本道「奥渋谷」に話題の店が続々と増えているが、その走りとなったパイオニア的な店が「LIFE」と言える。



著書は『世界でいちばん居心地のいい店のつくり方』(筑摩書房)、『LIFEのかんたんイタリアン』(マイナビ)、『LIFE OF THE MIND』(ネコ・パブリッシング)など。



公式サイト  Instagram