2003年、代々木八幡商店街にレストラン「LIFE」はオープンした。訪れた人を心地よく包み込むような空間とほっとさせる料理だけでなく、カルチャーやライフスタイルの発信地としても多くのお客さんから愛されている。



そんな「LIFE」の生みの親であるオーナーシェフ・相場正一郎さんは、自他ともに認める“道具好き”。食はさることながら、山登り、サーフィン、インテリア、カメラなど、さまざまなことに造形が深い相場さんは、一体どんな道具たちと寄り添いながら一年を暮らしているのか。その月ごとの欠かせない愛用の道具をひとつずつピックアップして、相場さんと道具たちのストーリーを紡いでいく。



第5回目となる8月は、アウトドアから街乗りまで幅広く頼りにしているという愛車のディフェンダーのお話。「LIFE Sea」にほど近く、よくサーフィンに行くという湘南の海で話を伺った。



「アウトドア好きのためにあるような車です」







――ディフェンダーは、山道など過酷な状況での運転に強い、オフロード向けの車ですね。購入のきっかけは?



僕はサーフィンをするので、長いボードを入れられるという理由で選びました。9人乗りの車なのですが、サーフボードを入れても4人は乗れますし、アルミボディで軽量なので燃費もよく、普通の四駆の倍は走れて実用性も高い。アウトドア好きにはたまらない車ですね。



――見た目も格好いいですし、アウトドアで大活躍しそうです! アウトドアシーンでは車中泊などもされるのでしょうか?



座席を前に倒すとスペースができるので車中泊もできますが、網戸がないので夏は暑いですね(笑)。





――たしかに。車内を板材などを利用してカスタマイズされているようですが……。



ベニア板を買ってきて足を下ろす場所を作ったり、サーフボードを固定するためのロープを通せるようにしたり、つっぱり棒を取り付けたりと、自分で使い勝手がよいように工夫しました。



ディフェンダーも中古で購入しましたし、道具は新品より中古やもらいものが好きで、手をかけるプロセスが好きなんですよ。







手間に思えることが愛着につながる



――ディフェンダーは日本であまり見かけない、どちらかというとニッチな車ですが、乗りこなすのは大変なのでは?



最初の2年くらいはクセがあって苦労しました。例えば部品を扱っている業者さんや修理できる車屋さんが限られているので、クーラーが壊れたりしたらなかなか直せない。遠方までディフェンダーを扱っている店を探して修理をしたり、何かあったときのためにあらかじめ部品を自分で取り寄せたりしておく必要がある。車屋さんにお世話になったときに細かいメンテナンス方法を聞いておいて、次からは自分でやるようにして、少しずつ勝手がわかってきて扱いやすくなりました。









――仕事などにも使われているのでしょうか?



僕はこれでケータリングや店のものを運んだりしています。ただこの車は奥さんはもちろん、スタッフも運転できないんですよ。自分以外の人が運転できないことが一番の難点ですね(笑)。僕はこれ一台で山も街もどこへでも行けるんですが、東京の細かい道は難しくて。家族用にもう一台買おうかと思ったりもするのですが、持ち物がふえるほど気持ちが分散されてしまう気がして、なかなか踏み出せないでいます。



――ひとつのものとじっくり向き合う……。相場さんらしい選択ですね。



音は大きいし、車高は高いし、誰もが乗りやすい車ではありませんが、他に乗りたい車がないんですよ。







――誰もが手軽に楽しめるわけではないからこそ、逆に愛着も強くなるのでしょうか。



普通は趣味か、たまに足として使うのが一般的かもしれません。でも自分はこの車が好きで、今いる環境にも適していると思っています。



海は浄化、山は癒し……それぞれの魅力



――ディフェンダーを相棒に、海へ山へと常にアクティブに動かれている相場さんですが、それぞれの楽しみ方はありますか?



僕は海も山もどちらも好きなのですが、若いときは海、年をとったら山を中心に出かけたい気がします。海はスカっとして、入ると体が浄化される感じが好きですし、山は木々のにおいや霧に包まれた感じ、鳥の鳴き声を聞いてゆったりとリラックスできるのがいい。







――お休みのときは基本的に東京から少し離れたところに行かれるのでしょうか?



できるだけ色々出かけたいのですが、急な休日ができて遠出が難しい場合は、一瞬で何をするか想像するんです。遠くに行く時間がなければ友だちの店に声をかけに行こうかとか。ぼーっとするのが苦手で、休日ひとりきりで人と会ってないとちょっと不安になってしまう(笑)。



――オンもオフも変らず活動的だからこそ、さまざまな出会いが生まれるのでしょうね。



基本的に寝るか動いているかですね。僕は時間に対して人より貪欲なのかもしれません。





(インタビュー・文:山本加奈子、撮影:MASA(PHOEBE))




「LIFE」オーナーシェフ

相場 正一郎



イタリアのトスカーナ地方で料理修行をした後、2003年に代々木公園にカジュアルイタリアン「LIFE」をオープン。現在、「LIFE son」「LIFE Sea」など全国に5店舗を運営する。店舗では、イベントの開催、オリジナルプロダクトの制作、地元の情報を集積したフリーペーパー『PARK LIFE』の発行など、カルチャーの発信地としても多くのファンを持つ。最近、渋谷の東急本店に抜ける長い一本道「奥渋谷」に話題の店が続々と増えているが、その走りとなったパイオニア的な店が「LIFE」と言える。



著書は『世界でいちばん居心地のいい店のつくり方』(筑摩書房)、『LIFEのかんたんイタリアン』(マイナビ)、『LIFE OF THE MIND』(ネコ・パブリッシング)など。



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