早見和真のベストセラー『イノセント・デイズ』。主人公の周りの人々の物語が展開するうちに主人公の実像が浮かび上がってくるという、多層構造の小説だ。



元恋人の妻とまだ1歳の双子の姉妹の命を、放火によって奪った田中幸乃。確定死刑囚として刑の執行を待つ幸乃だが、たった一人、彼女の無実を信じる男がいた。幸乃はなぜあの夜、火を放ったのか。男はなぜ幸乃の無実を信じられるのか。彼女を知る人々の追想から浮かび上がる“田中幸乃”のさまざまな過去。そして、哀しい真実が明らかになる!



幼なじみの弁護士が幸乃の再審を求めて奔走するが、当の彼女は…。支援者たちの声は彼女の心には届かず、ただ「死ぬために生きる」幸乃。その深い孤独を思うとき、読者は慟哭を禁じ得ない。これは単なるミステリーではなく、極上のヒューマンドラマだ。



(文:松本理惠子)