2017年7月19日(水)、第157回(2017年上半期)芥川龍之介賞(芥川賞)、直木三十五賞(直木賞)の選考会が築地・新喜楽で行われた。



昭和10年制定の歴史あるこれら文学賞に、今回芥川賞に4作品、直木賞には5作品がノミネート。芥川賞には『影裏(えいり)』(沼田真佑 著)が、直木賞には『月の満ち欠け』(佐藤正午 著)に決定した。



『影裏』は、第122回文学界新人賞に続く受賞、佐藤氏は作家デビュー34年目にしての受賞となる。受賞コメントは以下の通り。


芥川賞受賞作『影裏』(沼田真佑)



第1作目にして文学界新人賞、そして芥川賞を受賞した沼田氏。受賞についての今の気持ちを聞かれたところ「1本しか書いていない、ということがあるので、ジーパン1本しか持ってないのにベストジーニスト賞に選ばれたみたいな感じ」と素直な感想を述べられた。



現在岩手在住である沼田氏だが、選考委員である髙樹のぶ子氏が「震災の描き方を評価していた」との話を受けて、震災小説を書いたその思いを聞かれたところ、「ああいうこと(震災)があると、他のものが書きたくても1回自分の中でも書かないと、他のものも軽薄になる。岩手に住んでいるので禊のような感じで書きました」とコメントした。



直木賞受賞作『月の満ち欠け』(佐藤正午)



これまでいくつもの賞を受賞しているものの、作家生活34年目にして直木賞を受賞することとなった佐藤氏。この度の受賞については、「いろんな作家がいて、作家の人生はいろんなコースがあると思う。僕なりの作家人生を歩いていたら出合った」とコメントした。



また、佐藤氏はこれまでの作家活動を「マイペースで、編集者の方にご理解頂いて、良い編集者と巡り合って、良いペースで書いてくることができた」と振り返る。今回、選考委員から文章のみずみずしさを評価された氏だが、流されないマイペース姿勢が瑞々しい文章を生み出し続けている理由の一つかもしれない、質疑からはそんな作家像も垣間見られた。









第157回芥川賞 受賞作



『影裏(えいり)』(沼田真佑 著、「文學界」5月号)




医薬品を扱う会社の岩手支店に勤める30代の男性と、元同僚である友人。2人で釣りにでかける仲であったが、会社を辞めてからの友人は生活が乱れてゆき、東日本大震災をきっかけにその友人の知られざる一面も明らかになってくる……。



品のある文章と豊かな自然の描写が光る、第122回文学界新人賞受賞作。












第157回青木賞 受賞作



『月の満ち欠け』(佐藤正午 著、岩波書店 刊)




あたしは、月のように死んで、生まれ変わるーー。目の前にいるこの7歳の娘が,いまは亡き我が子だというのか? 三人の男と一人の少女の、三十余年におよぶ人生,その過ぎし日々が交錯し,幾重にも織り込まれてゆく数奇なる愛の軌跡。さまよえる魂の物語は、戦慄と落涙、衝撃のラストへ。





◆ノミネート作品

【第157回芥川龍之介賞候補作品】

今村夏子『星の子』(「小説トリッパー」春号)

温又柔『真ん中の子どもたち』(「すばる」4月号)

古川真人『四時過ぎの船』(「新潮」6月号)



【第157回直木三十五賞候補作品】

木下昌輝『敵の名は、宮本武蔵』(KADOKAWA 刊)

佐藤巖太郎『会津執権の栄誉』(文藝春秋 刊)

宮内悠介『あとは野となれ大和撫子』(KADOKAWA 刊)

柚木麻子『BUTTER』(新潮社 刊)



過去の受賞作品



第153回〜156回芥川賞受賞作








第156回 「しんせかい」(山下澄人 著、『新潮』)



文学界の異端者が描く、自らの原点




19歳の山下スミトは演劇塾で学ぶため、船に乗って北を目指す。辿り着いた先の“谷”では、俳優や脚本家志望の若者たちが自給自足の共同生活を営んでいた。苛酷な肉体労働、“先生”との軋轢、地元の女性と同期の間で揺れ動く感情―。思い出すことの痛みと向き合い書かれた表題作のほか、入塾試験前夜の不穏な内面を映し出す短篇を収録。



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第155回 「コンビニ人間」(村田沙耶香 著、『文學界』)



人間の本質に切り込む衝撃作




焼き鳥が好きだから、死んだ小鳥を焼いて食べよう。けんかを止めたいなら、暴れる子の頭をスコップで殴ればいい。何を間違えているのかわからないけれど、両親や妹からも「違う人間」と識別されてしまう主人公だが、コンビニでのアルバイトは違う。マニュアル通りに振る舞うことで、正常な人間としていられるのだ。しかしそこでも、ある時期を境に「普通じゃない」と思われはじめ…。



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第154回 「死んでいない者」(滝口悠生 著、『文學界』)



テンポ良い文章で綴られる、ある親族の人間模様




秋のある日、大往生を遂げた男の通夜に親類たちが集った。

子ども、孫、ひ孫たち30人あまり。

一人ひとりが死に思いをめぐらせ、互いを思い、家族の記憶が広がってゆく。生の断片が重なり合って永遠の時間がたちがある奇跡の一夜。



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第154回 「異類婚姻譚」(本谷有希子 著、『群像』)



「夫婦」という形式への違和感を軽妙洒脱に描いた表題作




子供もなく職にも就かず、安楽な結婚生活を送る専業主婦の私は、ある日、自分の顔が夫の顔とそっくりになっていることに気付く。「俺は家では何も考えたくない男だ。」と宣言する夫は大量の揚げものづくりに熱中し、いつの間にか夫婦の輪郭が混じりあって…。



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第153回 「スクラップ・アンド・ビルド」(羽田圭介 著、『文學界』)



閉塞感の中に可笑しみ漂う、新しい家族小説




「早う死にたか」毎日のようにぼやく祖父の願いをかなえてあげようと、ともに暮らす孫の健斗は、ある計画を思いつく。日々の筋トレ、転職活動。肉体も生活も再構築中の青年の心は、衰えゆく生の隣で次第に変化して…。



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第153回 「火花」(又吉直樹 著、『文學界』)



笑いとは何か、人間とは何か




売れない芸人の徳永は、天才肌の先輩芸人・神谷と出会い、師と仰ぐ。神谷の伝記を書くことを乞われ、共に過ごす時間が増えるが、やがて二人は別の道を歩むことになる。



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第152回〜156回の直木賞受賞作








第156回 『蜜蜂と遠雷』(恩田陸 著、幻冬舎 刊)



才能と運命、音楽を描く青春群像小説




3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた。数多の天才たちが繰り広げる競争という名の自らとの闘い。

第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか?



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第155回 『海の見える理髪店』(荻原浩 著、集英社 刊)



喪失の痛みとその先に灯る小さな光が胸に染みる家族小説集




伝えられなかった言葉。忘れられない後悔。もしも「あの時」に戻ることができたら…。母と娘、夫と妻、父と息子。近くて遠く、永遠のようで儚い家族の日々を描く物語六編。



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第154回 『つまをめとらば』(青山文平 著、文藝春秋 刊)



時代小説の新旗手が贈る、傑作武家小説集




太平の世に行き場を失い、人生に惑う武家の男たち。身ひとつで生きる女ならば、答えを知っていようか―。



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第153回 『流』(東山彰良 著、講談社 刊)



台湾生まれ、日本育ち。超弩級な才能による圧倒的物語




1975年、偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。17歳、無軌道に生きるわたしには、まだその意味はわからなかった。大陸から台湾、そして日本へ。歴史に刻まれた、一家の流浪と決断の軌跡。



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第152回 『サラバ!』(上)(下) (西加奈子 著、小学館 刊)



ベストセラー作家が放つ記念碑的長編




父の出家。母の再婚。サトラコヲモンサマ解体後、世間の耳目を集めてしまった姉の問題行動。大人になった歩にも、異変は起こり続けた。甘え、嫉妬、狡猾さと自己愛の檻に囚われていた彼は、心のなかで叫んだ。お前は、いったい、誰なんだ。



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◆選考委員

【芥川賞】

小川洋子・奥泉光・川上弘美・島田雅彦・髙樹のぶ子・堀江敏幸・宮本輝・村上龍・山田詠美・吉田修一



【直木賞】

浅田次郎・伊集院静・北方謙三・桐野夏生・髙村薫・林真理子・東野圭吾・宮城谷昌光・宮部みゆき



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