ニューヨークでは近年、業種が混合したお店が増えている。たとえば、日本にもよくあるようなカフェと本屋の混合はもちろんのこと、カフェと洋服屋やバーと花屋など。ほかにも、カフェと銀行、カフェとボクシングクラス、靴屋とアイスクリーム、質屋とレストラン、レストランとコワーキングスペースと雑貨屋など、ユニークな組み合わせの混合店も見かける。



混合店はここ数年のトレンド



「混合店がニューヨークのここ数年のトレンドになっているのは確か」と教えてくれたのは、流行の発信地、ブルックリンにある「Upstate Stock」のオーナー、ブラム・ロビンソンさん。ブラムさんの店は、キルティング倉庫だった古い建物を改造して作った、クリエーティブで個性的なアパレルとカフェの混合店だ。アパレルブランドを2012年に立ち上げ、カフェスペースを開いたのは昨年のこと。観光などで店に立ち寄った際、洋服や雑貨を見たあとにコーヒーを飲みながら休憩できるのは、なんともありがたい。



「Upstate Stock」。手前がカフェ、奥が洋服や雑貨コーナーになっている。

「Upstate Stock」。手前がカフェ、奥が洋服や雑貨コーナーになっている。




カフェを併設した主な理由として、「レンタル(賃料)だよ」とブラムさんは一言。なるほど、アパレルだけの売り上げでは、ブルックリンの高い賃料を賄うのが難しいのだろう。ニューヨークでは不動産価格が高騰し続けており、賃料の高さは経営者には頭の痛い問題なのだ。



わかりにくい混合店も



マンハッタンにも、毎夜賑わう混合店がいくつもある。そのうちの一つが「Beauty And Essex」だ。表向きは質屋。しかしその奥にあるドアを開くと、ゴージャスなレストランバーとバーエリアが広がっている。店内はとにかく広い。そして、まるで禁酒法時代を思わせるような雰囲気だ。





一見、ただの質屋だが・・

一見、ただの質屋だが…。






「Beauty And Essex」の質屋の奥は、このようなレストランが広がる。

「Beauty And Essex」の質屋の奥は、このようなレストランが広がる。




質屋から入ってレストランまでの間は、バーになっている。

質屋から入ってレストランまでの間は、バーになっている。




なぜ混合店にしたのか、オーナーシェフのクリス・サントスさんに聞いてみると、「フードから内装まで、ほかのどこにもないような店を作りたかったから」とのこと。フード類においても、大皿単品料理が定番だったこれまでのアメリカの食の常識を打ち破り、タパスのような「小皿メニュー」を取り入れており、それらのマーケティング戦略が大当たりして、今やニューヨーク以外にラスベガスやロサンゼルスにもお店が拡大している。



「混合店やめました」も



経営上のファイナンシャルを助け、話題作りにもなる混合店は、ニューヨークで今後も増え続けていくのだろう。しかし中には、混合店をやめた店もある。



「The Last Word」の店内は、2週間前に壁がなくなり開放的になったばかり。

「The Last Word」の店内は、2週間前に壁がなくなり開放的になったばかり。




クイーンズにあるクラフトカクテルが人気のバー「The Last Word」。この店は2016年にオープンしたばかりで、表向きは工具店だった。しかし、マネージャーのヴェロニカさん曰く「実は2週間前に経営方針を変えて、工具店スペースをなくしたばかり」とのこと。その理由として、「工具を買いに来るお客さんが結構いたのだけど、実際に工具を売っているわけではなかったから、申し訳ないという気持ちと、以前の隠れ家的な店では、怪しいと訝る人も少なくなくて...」。



今ではごらんのとおり、工具店は跡形もなくオープンエアで開放的な店に様変わり。まだリニュアルオープンから数週間だが、売り上げも多少以前よりは良いそうだ。





創作カクテルに定評がある「The Last Word」。写真は「Polynesian Putdown」(13ドル)は飲みやすくておいしい。

創作カクテルに定評がある「The Last Word」。写真の「Polynesian Putdown」(13ドル)は飲みやすくておいしい。






賃料が高く、競合店も多いニューヨーク。生き残るために混合店にする?やっぱりやめる?どの経営者も試行錯誤を繰り返している。ニューヨーク観光の際は、そういう視点でお店を覗いてみるのも一興だろう。



(文:安部かすみ fromニューヨーク)



■店舗情報



Upstate Stock

公式サイト



Beauty And Essex

公式サイト



The Last Word

公式サイト




■取材国:アメリカ

安部かすみ(あべ・かすみ)



2002年に渡米し、在ニューヨークの新聞社でのシニアエディター職を経て、2014年からフリーの編集者、ライターに。ニューヨークから食やエンタメ、テック系などのトレンドを発信中。編集者歴は日米で20年。



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