1990年代に全世界で社会現象的ヒットとなったドラマ「ツイン・ピークス」。最終話に出て来た「25年後に会いましょう」という台詞どおり、25年後を描いた新シーズンが7月22日(土)からWOWOWでスタートした。今月11日には主人公のFBI捜査官デイル・クーパー役のカイル・マクラクランが来日。新作の魅力を聞いた。



川辺で発見された謎の遺体。それは町の人気者、ローラ・パーマーだった。ローラは誰に殺害されたのか。カナダ国境にほど近い、自然豊かな田舎町ツイン・ピークスを舞台に、個性あふれる住民たちのドラマの中、その謎が解き明かされる――。オリジナル・シリーズの最終話で、ただならぬことになったデイル・クーパー。そんな彼が、また私たちのもとへ帰って来る。



―新シーズンのクーパーについては?



長年演じてきたデイル・クーパーの25年後ですから、彼がどうなっているか想像しました。もともと道徳的で、自信や好奇心に溢れ、世の中の動きに敏感で観察力にすぐれたキャラクター。そこは変わりません。でも今回は、また新たな方向性という感じ。僕はいくつかの役を演じているんですよ。



“TWIN PEAKS”: (c)Twin Peaks Productions, Inc. All Rights Reserved.

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―そのひとつが悪いクーパー(イーブル・クーパー)ですね。オリジナル・シリーズの最終話を観ると、なぜこうなっているのかがわかる姿なのですが、日焼けして乱れた長髪のカイルさんが衝撃的でした(笑)。



ダーク・クーパーですね(笑)。やっていて楽しかったですよ。新シーズンが始まる時、デヴィッド(リンチ)からはそんなに説明がなくて、ちょっとこれまでと違うことをやってもらうよという感じだったんです。実際に脚本を読んでみたら、ああ、なるほど、こういうことかと思いました。



―今回は脚本が最後まで出来上がっていたそうですね。



そうです。このシリーズを振り返ると、まずファースト・シーズン(7話まで)は、7話すべてを撮り終えてから放送が始まったんです。セカンド・シーズン(8〜29話)は、放送しながら撮影するという従来のスタイルでした。今回は最後まで全部、脚本が書かれていて、すべて撮影したものを18話に編集してからの放送なので、18時間の劇場映画を撮ったみたいな感覚ですね。デヴィッドが18話すべてを自分で演出していますし。ただ、脚本は最後まであったのですが、スタジオから持ち出せなかったので、最初に読んだ時は6時間スタジオにこもって全部読みました。



―実際に仕上がった映像は、脚本に書かれていることから、どのぐらい膨らんでいるんですか?



アドリブも多少はあるけれど、だいたいは脚本どおりです。ただ、面白いのは脚本の解釈ですね。僕が想像もしなかった風にデヴィッドが考えていて、思っていたのとは違う演じ方になることはよくあります。でも、台詞はほとんど変えないので、脚本に忠実に撮っていると思います。あと、スタジオじゃなくてロケ撮影も多いから、現場の状況次第で変わることもあります。



“TWIN PEAKS”: (c)Twin Peaks Productions, Inc. All Rights Reserved.

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―カイルさんは『デューン/砂の惑星』(84)からデヴィッド・リンチ監督の作品にたくさん出演されていますけれど、カイルさんからご覧になったリンチ監督は?



(関係の良さが伝わる笑顔で)デヴィッドのこと? すごくフレンドリーです。そして、ユーモアのセンスが楽しい。非常に具体的な監督だし、その分、要求は多いです。撮影中、すごく楽しんでいるし、ものの見方が面白い。独特の視点を持っている。というか想定外です(笑)。



―印象に残っている“想定外”はありますか?



いろいろありますよ。最初のシリーズの時には、マイケル・オントキーンさん(クーパーと一緒に捜査にあたる保安官役)の鼻を掴めっていきなり言われたこともありました(笑)。僕がまったく予想していないことを言われるから面白い。新シーズンでは、僕の演じるもうひとつのキャラクター、ダギーですね。もう、いろいろありますよ。例えば、彼がある銅像を見る場面があるのですが、それはデヴィッドのお父さんのレプリカなんです(笑)。その足を触ってみてとか、同じポーズをしてみてとか、要するに現場でアイディアを思いつくんですね。そういうことがけっこうあります。



―思わず笑いが止まらなくなることも?



僕が笑い出すこともあるし、カメラの向こうでデヴィッドが笑い出してしまう時もあります。すごく楽しそうに。彼は『ツイン・ピークス』の世界が大好きなんだと思いますね。自分もキャストとして、その世界に入ってしまうぐらいですから。



“TWIN PEAKS”: (c)Twin Peaks Productions, Inc. All Rights Reserved.

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―リンチ監督はクーパーの上司に当たるゴードンを演じていますね。機密事項をデカい声で話すゴードン、相当にいいキャラクターですが、役者としてのリンチ監督は?



すばらしいよね。記憶に残るゴードン・コールというキャラクターを作り上げていて。今回のシリーズでは、すごくダイアンに思いがあるのを感じます。(今年亡くなった)ミゲル・フェラー(検視官アルバート役)との共演を楽しんでいたのも印象深いですね。あと、ゴードンはクリスタ・ベル演じるタミ―(ゴードンの部下でシーズン初の女性FBI捜査官)に相当、惚れ込んでいると思います(笑)。



―新シーズンで、カイルさん自身がお好きなシーン、印象的なシーンはありますか?第3話では、カイルさん、コンセントの差込口(ソケット)から出てきましたね(笑)。



出てきましたね。忘れられないシーンです(笑)。本当にたくさんありますね。ソケットはもちろん、第3話でイーブル・クーパーが車の中で吐く場面もけっこう強烈でした。あと、第2話で、モーテルの部屋である人と激しい揉み合いになる場面があるんです。あそこも緊張感のあるスゴい場面でした。



―これまでのクーパーにはない行動ですね。個人的には第3話で、カイルさん演じるダギーがカジノに行く場面が好きです。「ハロー」の言い方と仕草がいいです(笑)。



あのシーン、なんで「ハロー」が必要なのか、さっぱりわからなかったんです(笑)。そうしたら、デヴィッドがああいう風に言っていて。それを真似して、ああなりました。



“TWIN PEAKS”: (c)Twin Peaks Productions, Inc. All Rights Reserved.

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―リンチ監督ならではですね。そういう面白さでいうと、第2話でクーパーがジャックという男の頬を無言でつかむ場面があります。よくある喧嘩シーンみたいに、ジャックの両頬を片手でぎゅっと掴むのですが、なぜかそのまま無言でいつまでも頬を揉み続けるというシュールなシーン。ああいう変な間と遊びは『ツイン・ピークス』の好きなところです(笑)。あれ、リンチ監督に揉み続けてくれって言われたんですか。



そう。揉み続けてくれと言われて、ずっと揉み続けていたんだけど、全然カットがかからないので、ずっとやり続けました。かなり奇妙なひとときでした(笑)。



―そういうリンチ監督の不思議な指示には、もう慣れていらっしゃる?



そうですね。時々、挑戦状を突き付けられているのかな……と思いますね。最初に笑うのは誰だ!?という(笑)。



―そういう撮影中の色々を経て、仕上がった映像をご覧になると驚かれますか?



本当にそうです。どう編集されるかわからないから、本当に僕も視聴者の皆さんと一緒で、テレビを観て初めてわかるんです。特に裕木奈江さんとの場面は、デヴィッドが1か月ぐらい編集で色々なことをしたので、ああいう形になっていて、僕もびっくりしました。



―裕木奈江さんとのシーンは、いかがでしたか?



ヘンな感じでした。というのも、朝、スタジオに行ったら、彼女はすでにあのメイクをしていて、目の部分を覆い隠していたので、撮影中は彼女の目が見られない状態だったんです。ずっと後になってから、彼女がどんな目の人なのか、わかりました(笑)。撮影中はずっとあの状態だったから、大変だったと思いますよ。



−他の映画にはないシチュエーションですね。



本当にそうですね(笑)。



―ところで、このシリーズには赤い部屋のシーンがたびたび出てきます。逆から読んだ台詞を逆再生して奇妙な感じを出している音声(リンチ監督が担当)も面白いですが、撮影はどんな感じなのでしょう。



すごく混乱する場面ですね。あのとおり、床の模様は目がチカチカするし、カーテンのどこに切れ目があって、どこから出られるのかもよくわからないし、あの部屋で誰と対面するのかもわかりませんから。待合室や控室みたいな、どこかに移動するための部屋みたいな感じですよね。俳優としては、本当に想像力を働かせないといけないシーンです。



“TWIN PEAKS”: (c)Twin Peaks Productions, Inc. All Rights Reserved.

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―私たちも夢の中に亡くなった祖父母が出て来て、お告げ的なことを言われたりするじゃないですか。クーパーは亡くなったローラともこの部屋で会うわけで、赤い部屋は夢の中なのかなとも思ったりもするのですが、カイルさんの解釈はいかがですか?



デヴィッドは明言したことがないんです。だから、いろいろな解釈があっていいのだと思いますが、僕はどこか煉獄みたいな気がしています。天国と地獄の間、二つの世界の狭間みたいな。監督に尋ねたことがないから、わからないですけどね。



―赤い部屋はもちろん、オリジナル・シリーズに出て来た“チベット式捜査法”みたいな精神世界的なアプローチも『ツイン・ピークス』の世界の型にはまらない面白さですね。



デヴィッドの熟知した世界ですね。彼と仕事していると、自分の理解を超えたところに深い意味があるんじゃないかという気持ちにさせられます。彼との仕事は本当にエキサイティングなんです。今回、久しぶりに彼とがっちり組めて、うれしかったですね。いつかまた『ツイン・ピークス』の世界に戻ってきたいと思っていましたから。でも、新シーズンはオリジナル・シリーズに戻る懐かしさというより、また新たな方向性を楽しめるようになっています。皆さんにもぜひその面白さを味わっていただきたいです。僕の役もすごいことになっていますから(笑)。



ユニークで個性的な登場人物たち。そして細部までこだわった独自の映像美。無意識化で映画好きのハートをつかむ要素が満載の『ツイン・ピークス』シリーズ。新シーズンを観る前にオリジナル・シリーズを観ると、さらに楽しめるだろう。おなじみのキャラクターに加え、新シーズンにはローラ・ダーン、アマンダ・セイフライド、ナオミ・ワッツ、アシュレイ・ジャドといった豪華キャストも登場。物語の筋だけでは語れない、予定調和とは無縁の、豊かな愉しみ尽きない世界。一度聴いたら耳から離れない魅惑的なテーマ曲と共に、ふたたび幕を開ける。



(取材・文:多賀谷浩子)


新作『ツイン・ピークス』

WOWOWプライムにて7月22日(土)スタート(第1話無料放送)<全18話

毎週土曜 夜9:00(二カ国語版)/毎週金曜夜11:00(字幕版)

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