
2021年7月の土石流災害で、崩れずに残った盛り土の撤去を「行政代執行」により進めている静岡県は、28日から本格的な土砂の搬出作業を開始した。
県は、土石流発生の起点となった熱海市伊豆山の逢初川の源頭部に、約2万立方メートルにのぼる盛り土が崩れずに残っているとして、2022年10月から、盛り土を造成したとみられる前の土地所有者に代わり、撤去の準備を進めていた。そして28日…。
(日吉 勇人 記者)
「こちらは逢初川源頭部の盛り土付近です、土砂の搬出作業が始まりました」
28日は、土砂が詰められた土のうをクレーンで釣り上げ、ダンプカーで運んでいた。1日あたり、約200から300立方メートルの土砂を搬出する計画だが、盛り土の一部に土壌汚染が確認された事から通常の残土処理とは異なり、いったん熱海港の仮置き場まで運び、最終的には、ほとんどの土砂を県外の施設へ運んで処分するという。
(熱海土木事務所 伊豆山地区復興支援課 池谷 拓巳 課長)
「ここまでやっとたどり着いた。早期に不安定な土砂を撤去し、逢初川流域の住民に対し安全性の確保をしていかなければならない」
残った盛り土が崩落する危険があるとして、いまだ自宅周辺への立ち入りが禁止されている「警戒区域」の皆さんは…。
(被災者 太田 滋さん)
「土砂がなくなって今まで通りの伊豆山逢初川がきれいになれば、少し気持ちも落ち着くのかなと思っている」
(被災者 小松 こづ江さん)
「安心なまちをつくるのであれば、今までの土を全部とってもらい、盛り土がなかったようにしてもらいたい」
県は、2023年5月末までに撤去を終える計画で、「警戒区域」の住民は夏ごろから順次、帰還する予定。
一方、盛り土を造成したとみられる前の土地所有者で神奈川県の不動産管理会社の元代表は私たちの取材に対し、「行政代執行で土砂を搬出するのは県の判断。こちらは措置命令の取り消しを求める裁判を起こしているので、判決まで審理を見守りたい」とコメントした。
また、14億円にのぼるとみられる代執行の費用については、「措置命令の取り消しを求めている以上、現在は支払うつもりはない。判決が出てから最終的に判断する」とコメントした。