【袴田事件】検察が“特別抗告”を検討
いわゆる「袴田事件」で今週、東京高裁が裁判のやり直しを認めた決定について、東京高検が特別抗告をする方向で検討していることがわかった。特別抗告されれば、審理の長期化は避けられない見通しだ。

いわゆる「袴田事件」で今週、東京高裁が裁判のやり直しを認めた決定について、東京高検が特別抗告をする方向で検討していることがわかった。特別抗告されれば、審理の長期化は避けられない見通しだ。

(街頭の声)

「袴田さんは心を病んでしまいましたが、無実を証明するために全身全霊をかけて生きてきました」

東京高検の前で必死に声を上げる袴田巌さんの弁護団と支援者たち。

「特別抗告」の断念を求める抗議活動は連日続いている。

(村﨑修弁護士)

「高裁決定を特別抗告をするなんて、どうひっくり返ってもできないでしょ 本当にこれは犯罪ですよ犯罪」

(支援者らのコール)

「検察は再審妨害をやめろ〜」「検察は再審妨害をやめろ〜」

いわゆる袴田事件をめぐっては3月13日、東京高裁が袴田巌さんの再審=裁判のやり直しを認めたが、検察がこの決定に不服がある場合20日までに「特別抗告」すれば裁判をやり直すかどうか再び最高裁判所で審理されることになる。

関係者によると、東京高検は最高裁に特別抗告する方向で検討しているという。

この報道を受け17日、弁護団は急きょ会見を開いた。

(角替清美弁護士)

「そういう報道はあるけれども間違いですよね。特別抗告は絶対にしないでくださいと申し入れを行うために集まった なんとなく組織の流れで、別に認められなかったらいいや うまくすれば認めてくれるだろうというぐらいでやっているのか もしそんなことであればそれは本当に大間違い」

そもそも「特別抗告」は憲法違反や判例違反を理由に申し立てができるものだ。弁護団は「検察は特別抗告する理由がない」と強く批判した。

「何が一番問題なのか。特別抗告をする理由がない それなのに特別抗告という規定が刑訴法にあるからやろうとしている 本当に無実の人が救われていない このことをとっても日本はいかに人権劣国なのかと 腐った検察官 日本が本当に世界に恥ずかしいとなる」

そして、会見が終わるとその足で東京高検に向かい、特別抗告を断念するよう東京高検の検事長だけでなく検察官全員に対する申入書を提出したのだ。

袴田巌さんは87歳、姉のひで子さんは90歳。検察が特別抗告すれば審理はさらに長期化することになる。

検察が特別抗告を検討しているという報道に対して、姉・ひで子さんは「まだ特別抗告されていないのでコメントのしようがございません」と話している。

元東京地検特捜部副部長などを歴任し、検察の事情に詳しい若狭勝弁護士は、検察が特別抗告を検討しているのは東京高裁が一歩踏み込んだ判決を下したことが影響していると話す。

(若狭勝弁護士)

「東京高裁の決定の中で、やはり捜査機関側が証拠をつくった、まさに証拠を捏造したような決定の内容になっている」「そうすると、今回特別抗告をせずにそのままにしてしまうと、まさに証拠を捏造していたということがありきというような形になってしまうので、東京高等裁判所の決定を受け入れるような形で何も特別抗告をしないわけにはいかない」「そういう思いが根底にはあるんだろうと思う」

「特別抗告」は憲法違反や判例違反がある場合のみ認められていて、期限となる3月20日までに検察が「特別抗告」をしなければ静岡地裁で再審が始まるが、「特別抗告」をすれば裁判をやり直すかどうか、再び最高裁判所で審理されることとなる。

若狭弁護士は、検察が判例違反を理由に特別抗告をする可能性があるとしたうえで、こうした主張は再審の場ですべきと話す。

(若狭勝弁護士)

「今度は再審という本来の土俵があるわけなので、その再審裁判のなかで自分らの主張をすればいい。そこにおいて証拠が捏造されていることは決してないということを、きちんと再審裁判で主張すればいいので、それをやはり今の段階で最高裁判所に特別抗告をしてまた時間を費やすということは、やはり正義の観点からあってはならないと私は思う」

SNS上でも検察に対する批判の声が高まっている中、若狭弁護士は「検察は特別抗告することで時間を稼ぎ、こうした世論の動きを 抑えたいという思いもあるのではないか」と話す。

静岡地裁の再審開始決定から9年。裁判がさらに長期化することになるのか・・検察側の判断が待たれる。