「まるで何かの皮肉としか思えない」そんな風に私が首を捻っていたのは月曜の夜。バレンシアで開かれたリーガの2015-16シーズン表彰式でアトレティコが9つの賞のうち、過半数を超える5つを占めたというニュースを知った時のことでした。いやあ、去年は1人も選ばれず、クラブやアトレティコ寄りのマスコミが怒っていたのは何となく覚えていますが、昨シーズンの成績はその前年と同じ3位。それがいきなり、最優秀GKのオブラクから始まって、最優秀DFゴディンと続き、グリーズマンなど最優秀選手とファン投票1位のdoblete(ドブレテ/2冠のこと)で、極め付けがシメオネ監督の最優秀監督賞って、これじゃリーガ優勝しながら、最優秀FWとしてメッシ、最優秀外国人選手としてルイス・スアレスしか選ばれなかったバルサの立つ瀬がないのでは?

そう言ってしまえば、2位だったお隣さんなんて、最優秀新人賞のアセンシオはレンタル先のエスパニョールでの働きを評価されてのものですし、実質、受賞者は最優秀MFのモドリッチしかおらず、会場のパラシオ・デ・コングレソスにはOBのラウールやロベルト・カルロスらがゲストとして招かれていたものの、どこか寂しい感は拭えなかったんですけどね。それでも同日、公表されたフランス・フットボール誌主催のバロンドール賞ノミネート、30人のリストで1チームとして最多の選手を出していたのは6人のレアル・マドリー。クリスチアーノ・ロナウドを筆頭にベイル、クロース、モドリッチ、ペペ、セルヒオ・ラモスと、グリーズマン、ゴディン、コケしか選ばれなかったアトレティコの倍の人数というのは、昨季のミラノのCL決勝でまたしても負けた身の上ですからね。仕方ないかと思いますが、となると、準々決勝で彼らが破ったバルサがメッシ、ネイマール、ルイス・スアレス、イニエスタの4人と、負けているのはちょっと納得がいかないかも。

まあその辺は、昨今はイロイロな賞がありますし、選定基準もよくわかってなかったりするため、あまり気にすることはないんですが…。どうにも困った結果に終わってしまったのは先週末のリーガ。いえ、土曜にメスタージャに乗り込んだバルサが後半アディショナルタイムにメッシがparapenalti(パラペナルティ/PK止め屋)の異名を持つ、GKジエゴ・アウベス相手にPKを決め、土壇場で2-3とバレンシアに勝ったと聞いた時には、先日のアトレティコ戦の時にはグリーズマン、ガビのどちらも弾いていたのにと、少々、悔しい気もしたものの、それでもその時は彼らがセビージャに勝てばいいだけでしたからね。

日曜のお昼過ぎ(スペインのランチタイムは午後2〜4時)のバルでは、定食用に炊き過ぎて余ったのか、cana(カーニャ/グラスビール)につくtapita(タピータ/おつまみ)がパエジャ(スペイン特産のお米料理)だったのにも気を良くして、私も最初は気楽に眺めていたんですけどね。サンチェス・ピスファン(セビージャのホーム)がドシャ降りの雨だったせいで、一張羅のスーツが着られず、公式戦には珍しくシメオネ監督がジャージ姿だった辺りから、違和感は始まっていたかったかと…。ここ最近は連続して右サイドで先発を務めているコレアがチャンスに失敗するのにはもう慣れっこになってきていたものの、まさか、前半を0-0で終え、いつもなら強いチームであるところを見せてくれる後半になって、敵にあんなプレーを成功させられてしまうとは一体、どうしたことでしょう…。

それは最近、「posiblemente me pueda equivocar muy poco en quien ponga, estan todos muy bien/ポシブレメンテ・メ・プエダ・エキボカール・ムイ・ポコ・エン・キエン・ポンガ、エスタン・トードス・ムイ・ビエン(誰を使おうが私が間違うことは少ないだろう。全員が絶好調だから)」と、選手層の厚さに自信をつけてきたシメオネ監督が早くも交代カードを使い切っていた72分。何てことのないセビージャの自陣からのスローインがキッカケでした。マリアーノから受けたエンゾンジが、ビエットを介してアトレティコのゴールに激走。それを防げなかったチアゴは、後で「Me siento un poco responsable por el gol/メ・シエントー・ウン・ポコ・レスポンサブレ・ポル・エル・ゴル(失点の責任をちょっと感じる)。自分があと2メートル後ろにいれば、あのプレーは防げたんだから」と言っていましたが、いえいえ、キャプテンのガビはともかく、若いサビッチもエンゾンジに追いつけず、シュートを撃たしてしまったのですから、ここはやはり連帯責任だったかと。

うーん、このところシメオネ監督も前線はそこそこローテーションしているんですが、ボランチから後ろはヒメネスがまだ負傷中なのもあって、ずっと同じメンバーですからね。先週は水曜にCLロストフ戦のロシア遠征があったため、疲れが残っていたのかもしれませんが…。悪いことというのはもっぱら重なるんですよ。ええ、先制点を奪われ、反撃しなければならなくなってから4分後、今度は5歳からいるアトレティコのカンテラ(下部組織)時代を含め、過去1度も退場させられたことのなかった優等生のコケが、その少し前にはビトロの腰を後ろから掴んで1枚目のイエローカードをもらっていたにも関わらず、ラミにタイミングの遅れたタックルをかけるという愚行を犯してはねえ。2枚目をゲットして、ピッチからいなくなってしまうんですから、困ったもんじゃないですか。

ただ、10人となってもゴディンのヘッドなど、チャンスはなかった訳ではないんですが、結局そのままアトレティコは1-0で敗戦。その時点でリーガ首位の座はセビージャのものになったんですが、マドリッドの新弟分、レガネスがマラガに4-0をボコボコにされた後、最後に笑ったのはやはり雨の中、サンティアゴ・ベルナベウにアスレティックを迎えたマドリーでした。

え、相手は水曜どころか、木曜にアウェイのベルギーでヨーロッパリーグのゲンク戦、しかもエースのアドゥリスを始め、DFなども負傷で大勢欠いていた上、このところ来るたびにgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)を喰らっているチームなんだから、それは当然の結果じゃなかったのかって? まあ、そうなんですが、意外だったのは7分にイスコのアシストでベンゼマがゴールを決め、あっさりリードを奪った後、マドリーが点差を広げられなかったこと。いえ、それどころか、26分にはレクエからエリア内のエラソに渡ったボールをペペもカルバハルもコバチッチもクリアできず、最後はフリーのサビン・メリノに撃ち込まれ、同点にされてしまったから、ビックリしたの何のって。

1-1で始まった後半もなかなか点が取れず、ジダン監督は近頃の定番通り、ルーカス・バスケス、モラタと投入。すると、その関係でベイルが右サイドから利き足の左サイドに回ったことが結果的に吉となりました。ええ、82分にベイルのクロスをモラタがシュートしたところ、一旦はGKイライソスに弾かれながら、相手が背中側に落ちたボールをクリアできなかったのを利用して決勝点をゲット。うーん、途中出場から彼が勝ち越しゴールを入れたのはCL1節のスポルティングCP戦以来、2度目のことなんですけどね。おかげで世間でも最近はモラタ先発を望む声が高くなっているんですが、当人は「Si cada vez que salgo del banquillo marco, ya firmo/シー・カーダ・ベス・ケ・サルゴ・デル・バンキージョ・マルコ、ジャー・フィルモ(ベンチから出る度にゴールを挙げられるなら、それで手を打つよ)」と、あくまで謙虚。

丁度、その日はモラタの24歳のバースデーだったため、家ではイタリア人モデルの彼女、アリス・カンペッロさんと楽しく祝えたようですけどね。負傷でリハビリ中の先輩、ラモスからの「Alvarito, si nos regalas un gol esta noche, te regalo otro corte de pelo/アルバリート、シー・ノス・レガラス・ウン・ゴル・エスタ・ノッチェ、テ・レガロ・トロ・コルテ・デ・ペロ(今夜、ボクらにゴールを贈ってくれたら、また別の髪型にしてやるよ)」という申し出は、おそらくユーロ中のスペイン代表同様、丸坊主にされるのがオチなので、彼女とよく相談してから、受けるかどうか決めた方がいいんじゃないでしょうか。

え、最後は何とか2-1で勝ったマドリーだったけど、その日は両チームのFWが随分、失敗していなかたかって? そうですね、アスレティックもウィリアムズが2度も絶好機に失敗しなければ、勝ち点1ぐらい持って帰れそうだったんですが、これには「Inaki es joven/イニャキ・エス・ホベン(ウィリアムズは若い)。ゴールゲッターは何度も失敗するもの。励ましてやらないと」と、バルベルデ監督から温かい擁護の言葉が。確かにゲンク戦でケガをした35歳のアドゥリスだったら、決めていたかもしれませんが、22歳の彼では落ち着いてフィニッシュできなくても仕方なかったかも。

一方、マドリーはマドリーで31歳のロナウドが失敗しまくっていたんですが、これまでアスレティック戦は14試合16得点とお得意様にしていただけに、最後は本人も意地になったんですかね。終盤にはガンチコでイライソスに挑み、シュートを弾かれてしまったため、フリーでパスを待っていたクロースから抗議されただけでなく、スタンドからもpito(ピト/ブ―イング)を浴びることに。とはいえ、マルセロなどに言わすと、それは「es normal, es un goleador y quiere marcar/エス・ノルマル、エス・ウン・ゴレアドール・イ・キエレ・マルカル(普通だよ。彼はストライカーなんだから、ゴールを入れたいんだ)」とのことで、チームメートたちはあまり心配していないよう。

同様にジダン監督も「a mí también me pitaron/ア・ミー・タンビエン・メ・ピタロン(自分もブーイングされたよ)」と笑っていましたしね。まあ、例年のことを考えれば、そのうちまた固め撃ちが始まったりするかもしれないので、今はまだリーガで2得点しか挙げてないといっても杞憂に過ぎないんでしょうけど、残念ながらこの水曜のコパ・デル・レイ32強対決1stレグで彼がそのキッカケを掴むことはできません。というのも、2部Bのグループを無敗で首位に立つクルトゥラル・レオネサとの一戦にはBBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウドの頭文字)を始め、マルセロ、ケイロル・ナバスにも休養を与えることを監督が決めたから。

それでもモラタやルーカス・バスケスは好調ですし、ハメス・ロドリゲス、イスコ、アセンシオといったところもアピールのいい機会と頑張るはずなので、水曜午後9時(日本時間4時)からの試合で苦労することはあまりないと思いますが、さて。ちなみに今週、コパをプレーするのは彼らだけ。その理由はマドリーが12月にクラブW杯で日本に行かないといけないからなんですが、その間、他のチームは試合のないミッドウィークを久々に楽しむことに。ええ、最終的に先週末のリーガの後、首位マドリー、2位セビージャ、3位バルサ、4位ビジャレアル、5位アトレティコとなったんですが、1位と5位の差は勝ち点3、即ち1試合で引っくり返る距離ですからね。

となると、金曜にレアル・ソシエダ戦でホーム初勝利に再度挑戦するレガネスはともかく、土曜にマラガをビセンテ・カルデロンに迎えるアトレティコも急に数が増えたライバルたちの万が一の躓きに備え、しっかり用意しておかないと。来週はまたCLがあるため、マドリーとセビージャも土曜にアウェイで、それぞれアラベス戦とスポルティング戦、バルサはホームでグラナダ戦。そんなに下剋上の可能性は高くないカードかもしれませんが、ようやく1週間続いた秋雨前線も通過したようなので、どのチームも練習はしやすくなったようですよ。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。