「こっちになったのはラッキー」そんな風に私が喜んでいたのは月曜。その朝から、ヘタフェが施設入口から近い方のピッチで練習しているのを見つけた時のことでした。いやあ、先週まではずっと、アトレティコ・バレアレス(2部B)との親善試合ですら、奥のグラウンドを使っていたため、このまま通っていると、ビーチにも行っていないのに手足が真っ黒になってしまうと心配していた私でしたけどね。ミニスタンド付きのこちらは屋根のおかげで日影がある上、腰を下ろして見学できるため、午前9時半から始まったセッションが11時50分までと、予想外に長かったにも関わらず、まったく苦にならなかったって、まあそれは10人程、その場にいたファンの話。

もちろん、フィジカルメニューがたっぷり詰まった内容は柴崎岳選手を始め、お日様のギラギラ照りつける中で練習していたメンバーとっては大変だったと思いますが、コリセウム・アルフォンソ・ペレスにあるロッカールームに戻る途中、ボルダラス監督と話したところ、この日はさらに夕方にもセッションがあると言うから、え、そんなに練習したら、熱中症にならない? 曰く、「リーガ開幕まであと1週間、もうあまり時間がない」そうですが、確かに昨季プレーオフで昇格を決めた彼らはプレシーズンを始めたのも最後でしたからね。今のところ、10人に上る新加入選手はリーガ1部経験者が多いものの、これから獲る予定のCFやボランチを含め、チームとしてまとまるにはやっぱりできるだけ沢山、トレーニングしておく必要があるのかも。

ちなみにそのヘタフェは先週末、土曜にプエルトジャノ(マドリッドから車で南に2時間半の内陸都市)で同じ昇格組のジローナと対戦したんですが…。いえ、私はもう1つのマドリッドの弟分チーム、レガネスがいつの間にか、格下になっていたラージョ(2部)とエスタディオ・デ・バジェカスで顔を合わせた試合を見に行っていたんですけどね。丁度、こちらの試合のハーフタイムに、柴崎選手が80分に決めたゴールでヘタフェが1-0で勝利したという報を知り、驚いたの何のって!! そうボルダラス監督に言ったところ、「彼に得点力がないと思っていた?」とからかわれてしまいましたが、いやいや。

というのも、後で映像を探し出して見てみたところ、そのゴールはジローナDFからボールを奪って個人技で決めるというgolazo(ゴラソ/スーパーゴール)だったんですよ。折しもその試合の日、監督が「Le faltan conceptos de lo que es la Primera pero nos dará cosas/レ・ファルタン・コンセプトス・デ・ロ・エ・エス・ラ・プリメラ・ペロ・ノス・ダラ・コーサス(1部というもののコンセプトがまだ欠けているが、ウチにイロイロ貢献してくれるだろう)」とマルカ(スポーツ紙)のインタビューを読みましたしね。あまりにタイミングバッチリで、しかも地獄の暑さだったというピッチで先発して終盤の決勝点となれば、当人の体力アピールにも大いに役立ったかと。

そんなヘタフェはこの水曜にまた、もう1つの2部の兄弟分、アルコルコンとサント・ドミンゴで午後8時から親善試合。このスタジアムはセルカニアス(近郊路線)C-5線のLas Retamas(ラス・レタマス)駅から歩いてすぐ、入場料も5ユーロ(約660円)と格安なので、たまたまマドリッド観光に来ているファンは覗いてみても面白いかと思いますが、今週金曜午後8時30分には改装されてキレいになったコリセウム・アルフォンソ・ペレスでのチームプレゼン試合も開催。兄貴分の胸を借りるアトレティコ戦もありますからね。そちらの方が1部復活を遂げた彼らの現在の実力を計るにはお勧めかもしれません。

え、それでラージョとレガネスのバジェカス杯はどうなったんだって? いやあ、今季も2部でプレーするにも関わらず、忠実に応援を続けていたホームサポーターには気の毒だったんですが、1部2年目のアシエル・ガリターノ監督のチームはサッカーで一番大事なところでカテゴリーの差を披露。それはずばり得点力で開始1分、ディエゴ・リコのゴールで先制すると、その後はずっと相手にボールを持たれて攻められながら、73分にはガブリエウがPKを獲得して2点差に。そのまま0-2で勝利すると、先日のアウディカップ(バイエルン主催の夏の親善大会)程、豪華ではありませんでしたが、キャプテンのマントバーニが堂々、トロフィーを掲げています。

何せ、今季も降格候補に挙げられてしまうであろうレガネスですからねえ。こういう堅実な勝利で選手たちが自信をつけるのが一番なんですが、そのいい例が兄貴分のアトレティコ。ええ、アリアンツ・アレナでナポリ、リバプールを下し、優勝杯を持ち帰った後の金曜日、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に夕方のセッションを私が見に行ったところ、これが「Cuando hay ilusión, siempre encuentras cosas para motivarnos/クアンドー・アイ・イルシオン、シエンプレ・エンクエントラス・コーサス・パラ・モティバルノス(夢がある限り、常にモチベーションを上げる何かを見つけられる)」(シメオネ監督)ということなんですかね。物凄い迫力で指導していた当人を筆頭に、ロンド(輪になって中の選手がボールを奪うゲーム)時の選手たちのエキサイトぶりときたら! しかもその日は午前中にも練習していたとなれば、今季も体力的には申し分ない仕上がりになっているのは間違いない?

その一方でサッカー的にどれ位、上達したのか、練習で判断できないのは再び彼らのセッションが開始から15分のみ見学可に戻ってしまったためなんですが、大丈夫。その成果は日曜のブライトンとの親善試合で目にすることができました。いえ、相手がプレミアリーグ昇格組ということで、先日の今季CLプレーオフ出場チームを相手にした時はまったく違い、主導権を握っていたアトレティコでしたけどね。得点こそ、なかなか生まれなかったものの、41分にはガイタンのミドルシュートがGKライアンの手をすり抜けて先制。ただこれは61分、ブライトンのFKにガイタンが足を出し、軌道を変えてゴールにしてしまったため、すぐ追いつかれてしまったんですが、ここで大御所が登場します。

ええ、67分にファンフランのクロスをノーマークだったフェルナンド・トーレスがヘッドで決め、勝ち越し点を挙げてくれたんですから、これならジエゴ・コスタ(チェルシー)が来年1月までプレーできなくても心配しなくていい? ところが予想外だったのはブライトンも意地を見せ、78分にはマーチのクロスをシドウェルが同じように頭で易々ゴールにしてしまったことで、どうやら守備の面ではまだまだ課題が残っているよう。うーん、最後は89分にグリーズマンのシュートはライアンに弾かれてしまったものの、ふくらはぎ痛でお留守場となったフィリペ・ルイスの代わりにその日、左SBを務めていたルーカスが押し込んで、2-3と勝利したアトレティコだったんですけどね。

サビッチなどは「失点しようがしまいが、lo más importante es que el equipo gane y lo hizo/ロ・マス・インポルタンテ・エス・ケ・エル・エキポ・ガネ・イ・ロ・イソ(一番大事なのはチームが勝つことで、それはできた)」と言っていましたが、どこぞのgoleada(ゴレアダ/ゴールラッシュ)体質のチームと違い、彼らはいつでも2点3点と挙げられる訳ではなし。ここ3試合、国外のプレシーズンマッチではナポリ戦のremontada(レモンターダ/逆転劇)、リバプール戦のPK戦勝利、そしてこの日の土壇場の決勝点と、お隣さんのお株を奪うような勝ち方をしてきたとはいえ、油断は禁物です。

そして月曜は休養、火曜の夕方から練習を再開するアトレティコは、後は金曜にヘタフェ、土曜にレガネスと、弟分との2連戦でさらに自信をつけて(?)プレシーズンマッチを終える予定なんですが、実はもうそんな悠長なことは言っていられないチームも…。もちろんそれはレアル・マドリーで、先週はアメリカツアーから帰還後、土曜、日曜、午後5時という一番暑い時間にバルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場でトレーニングすると、月曜にはUEFAスーパーカップに備え、もうマケドニアに飛ぶことに。

え、あちらはタイトルが懸かった試合だから、マドリーが真剣になるのはわかるけど、コンフェデレーションズカップのポルトガル代表参加でバケーション入りが遅れ、チーム合流からたった2日しか経っていないクリスチアーノ・ロナウドを連れて行くとはかなり切羽詰まっていないかって? まあ、確かにアメリカでのインターナショナル・チャンピオンズカップ(夏に行われる国際親善大会)の初戦では今回の相手、マンチェスター・ユナイテッドと1-1で引き分けた後、稀に見る悲惨なPK戦2-1で負けていますけどね。試合前日会見で話したジダン監督は、「彼はフィジカル的に2カ月前のCL決勝の時と同じ。Si está con nosotros es que está para jugar/シー・エスタ・コン・ノソトロス・エス・ケ・エスタ・パラ・フガール(我々と一緒にいるのはプレーできる状態ということ)」と言っていましたが、現実問題、そんなことってありえるんでしょうか。

まあ、体質は人それぞれですし、当人はマドリッドと同じぐらいのスコピエの猛暑も平気なのかもしれませんけどね。マドリーはUEFAスーパーカップをこのところ2連覇しているものの、その時はどちらも相手がセビージャ、今回はマドリー打倒に闘志を燃やすモウリーニョ監督のチームと相まみえるとあって、ジダン監督発言には牽制の意味もあるのかもしれませんが、こうなるとますますわかりにくくなるのが試合のスタメン。

そう、ロナウド参戦まではスタメンにベイルを使うのか、昨季終盤からこのプレシーズンも輝きを維持しているアセンシオを抜擢するのかが論争になっていましたが、こうなると普通にBBC(ベイル、ベンゼマ、ロウドの頭文字)先発という目も出てくるかと。ちなみにケガ人が1人もいないマドリーはルーカス・バスケス、コバチッチ、セバージョス辺りからも誰か、スタンド観戦になる可能性があります。

一方、ユナイテッドはバイリーやショーといった出場停止の選手もいるものの、この夏獲得したルカクを先頭にラッシュフォード、ポグバ、ムヒタリアンといった豪華メンバーが前線に並ぶ予定。うーん、カリフォルニアでの対戦ではどこか、手札を隠していた感もあったモウリーニョ監督ですからね。AS(スポーツ紙)などでは5人DF体制もありうるなんて書かれていましたが、果たしてこの勝負、軍配はどちらに挙がるのやら。そんなUEFAスーパーカップのキックオフは火曜午後8時45分(日本時間翌午前3時45分)。ようやくまともな時間に見られるマドリーの試合ですし、パッとしなかったアメリカでのイメージを払拭するためにもいい結果に終わってくれると嬉しいです。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ 南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。