ブラジル代表に続き、世界トップクラスの力を持つベルギー代表を相手に善戦した日本代表。「大きなライオンを倒すところまでいった」とヴァイッド・ハリルホジッチ監督が語ったように、ブラジル戦に比べれば前半から戦えていた。

しかし、欧州遠征2試合を見れば2連敗。仮にこれがワールドカップの本大会だったとするならば、日本のグループステージでの敗退は限りなく濃厚になったと言える。運良く3チームが1勝ずつで並ぶ可能性はなくはないが、厳しい状況には変わらない。手放しでは喜べない結果だ。

◆前半からハイプレスが機能
Getty Images
ブラジル戦は前半から押し込まれる展開となり、「蛇に睨まれた蛙」とでも表現できるパフォーマンスだった。気がつけば3失点と試合の大勢を決められてしまった。

しかし、ベルギー戦は立ち上がりからプレスがハマり、決定機も作れていた。失点シーンはシュートを警戒しすぎたのか、ボックス付近で簡単に突破を許してしまったが、それ以外は水際で体を張ってブロックするなど、守備面での改善は見られた。

特にメンタル面で崩れることが少なく、「選手たちはブラジル戦の後、ブラジルと対等とまではいかないが、戦えるということに気付いた」とハリルホジッチ監督が明かしたように、最後まで戦う姿勢を見せていた。

1試合を通してのハイプレスは難しいが、プレス強度をベルギー戦では使い分けていた。しかし、選手の距離感はまだ怪しい部分も多い。さらに、先発したメンバーと途中出場のメンバーでは、プレスのクオリティに大きな差が出たように感じた。ハイレベルの相手との試合では、途中から試合に入る難しさはあるだろう。しかし、その力は本大会で必ず必要になるだけに、守備面での意思統一はこの先も強化しなければいけない。

◆一瞬の隙が命取りに
Getty Images
前半を何とか無失点で終え、後半も無失点で試合を進めていたが、一瞬の隙を突いてやられた。ボックス手前でボールを持ったシャドゥリが一気にスペースを突いて4人を置き去りに。クロスに対し、ルカクが飛び込んで先制点を許した。

シュートを打たれる意識があったからか、このシーンではプレスがかかっていなかった。突破されても…という考えがあったのかは分からないが、深くえぐられてのクロス。そして決め切るルカク。一瞬の判断ミスが、失点を招いた。

DF槙野智章を中心に、守備面で粘り強さを見せられていただけに、もったいない失点でもあった。ただし、W杯になれば一瞬でも隙を見せると命取りになる。そのことをこの2試合で体感できたことは、少なからずプラス材料だろう。

◆足りないのは「スピード」
Getty Images
その他にも気になったポイントは横パスだ。1点ビハインドとなってから、日本は選手交代も含めてギアチェンジ。全体的に攻撃に比重をかけていく。ベルギーは自陣に引いて守備をする場面もあったが、横パスや緩いパスを常に狙い続け、インターセプトから一気にゴール前まで持ち込むシーンも見られた。

また、交代直後のFW杉本健勇が粘って独走し、シュートまで持ち込んだシーンも同様だ。抜け出しまでは良かったものの、最後のところでのスピードアップができなかった。そして、ストライカーとしてシュートの判断は悪くなかったが、より判断のスピードが上がれば、並走していた原口元気も見えたはずだ。W杯本大会ではより少なくなる可能性がある決定機。それを逸することの大きさを感じただろう。

Jリーグが悪い、レベルが低いという訳ではない。しかし、ヨーロッパのトップリーグと比べれば、1つ1つのプレーのスピード、判断のスピード、局面が展開するスピードは大きく違う。「普段なら問題ないプレー」がW杯で戦うのであれば、「問題あり」になってしまう。様々な面で、日本サッカー界全体としての「スピードアップ」はこの先の大きな課題だろう。

◆12月は世界で戦える選手の選考
Getty Images
「この12月の中で国内組から代表に入るかどうかの決断をする」とハリルホジッチ監督は試合後に語った。12月に国内で開催されるEAFF E-1サッカー大会。国内組で構成される日本代表は、本当の意味でのサバイバルになる。

ハリルホジッチ監督の下で合宿を経験している選手、国内組として常に代表に招集されている選手、そして日本代表としては未知数な選手…。Jリーグでのパフォーマンスを下に、新たな顔ぶれも少なくは無いはずだ。しかし、そこで求められるのは“世界”で戦えるかどうか。国内だけで通用する選手では、本大会のメンバー入りは難しいかもしれない。

今回の欧州遠征には、これまで日本代表を支えてきたMF香川真司やFW岡崎慎司、MF本田圭佑は招集されなかった。ある程度計算できる部分もありながら、満足行くパフォーマンスでないことはそれぞれの選手も理解しているだろう。

しかし、ヨーロッパのトップリーグでの経験値は高い。フィジカル面、テクニック面もさることながら、メンタル面ではより“世界”で戦えるはずだ。その部分も上回れる選手が国内組から現れるならば、日本代表としては本大会に向けて明るい材料になるだろう。基準は“世界”。その点を踏まえ、12月の大会を楽しみに待ちたい。
《超ワールドサッカー編集部・菅野剛史》