「本当にネタがなかったのね」そんな風に私が苦笑いをしていたのは木曜日、昨今は悲しいぐらいに薄くなったAS(スポーツ紙)の各クラブ情報ページで、「5月以降にEL16強対決ローマ戦1stレグがサンチェス・ピスファンであれば、暑さに慣れているセビージャが有利」という記事を見つけた時のことでした。いやあ、この月曜にはUEFAもヨーロッパ中が新型コロナウィルス禍に席巻されていることを考慮し、1度は5月末から6月末にずらしたCLとELの決勝日程を状況が落ち着くまで未定とすることを発表。よって、そこに至るまでの試合がいつ再開されるかもわからないんですけどね。

2年前の夏には日影で47.3度という最高気温を記録したセビージャ(スペイン南部アンダルシア地方)の夏の暑さは、イタリア南部とはいえ、まだいくらか涼しいローマから来る選手たち相手にもその先、ヨーロッパの他の国から来るライバルたちにも大きなハンディキャップになるはずって、いや、ロペテギ監督のチームだって今、スペイン全土のEstado de Alarma/エスタドー・デ・アラルマ(警戒状態)が4月11日まで、更に2週間延長されたことを受け、食料品や薬の補給以外の外出ができず。暑さへの耐久力をつけるどころか、まったくグラウンドでの練習ができていないことをすっかり、忘れていない?

え、そんな話でもしない限り、本当だったらこの木曜日、ワンダ・メトロポリターノでルイス・エンリケ監督復帰後第1戦となるはずだったスペインとドイツの親善試合も中止。リーガも2節前から止まっているとあって、ファンも贔屓のチームが何をしていたのか、記憶が曖昧になってきているとなれば、そこは生ぬるい目で見守ってあげないといけないって?そうですね、実際、4月後半や5月初旬の再開を検討していたリーガも月曜には、「政府からOKが出るまで試合はやらない」という方針に移行。サッカー協会のルビアレス会長もスペインの感染者数が4万、5万、6万人と日々、更新されていく中、5月中の再開は不可能だと思うとコメントしていましたしね。

かといって、残り11節、6月頭から、全チームが48時間おきにプレーという強硬策を取って、クラブと選手の契約の区切りである30日までに終わらせるというのも実現は難しそうだったところ、木曜にはFIFAが今季に限り、契約を満了する選手もシーズン終了まで現在のチームに留まることを提案。更に試合中断により派生するTV放映権料や入場料、オフィシャルショップやミュージアムの営業停止による減収を鑑みて、選手たちの給料を半分にカットすることも言っているんですが、リーガでどこよりも早く、その奥の手に出たのがバルサだったというのはちょっとビックリだったかも。

ええ、スペインにはERTE(エルテ/一時的雇用調整法)という法律があって、業界不況などの際には従業員の時短や雇止めができるため、コロナ騒動が始まって以来、一般の企業でもその手続きを始めるところが急増。先週から、どうやらバルトメウ会長もメッシ、ピケ、ブスケツら、キャプテンたちと給料減額の話し合いをしていたようなんですけどね。結局、7割カットを主張する経営陣と3割ぐらいまでならと渋る選手たちと折り合いがつかぬまま、木曜夜にはバスケットやハンドボール、女子サッカーなど、他のスポーツ部門の選手、スタッフ、それ以外の従業員全てをひっくるめて、スペインの警戒状態が続く間、一律給料7割減を理事会で決定したのだとか。

ただこれは、クラブの予算内でサッカーのトップチーム選手の年棒がかなりの部分を占めるバルサだけの専売特許ではなく、翌日にはここ2年、リーガのサラリーキャップすれすれでやりくりを続けているアトレティコもERTEを発動。こちらは選手の給料の何割をカットするのかは伝わっていないんですが、セレソ会長はラジオ・マルカ(スポーツ専門局)へのインタビューで、「Hemos hablado con nuestros jugadores y ellos son conscientes de lo que está pasando/エモス・アブラードー・コン・ヌエストロ・フガドーレス・イ・エジョス・ソン・コンシエンテス・デ・ロ・ケ・エスタ・パサンドー(選手たちと話したところ、彼らは今何が起きているのか、よく知っていた)。彼らともコーチングスタッフともトラブルにはならないのはわかっている」と言っていましたからね。

シメオネ監督を始め、#LoDamosTodo(ロ・ダモス・トードー/全力を尽くそう)のハッシュタグの下、SNSで赤十字への寄付を呼び掛けているコケらも一時的に収入が減るのは納得しているんだと思いますが、それにしても何で最近、アトレティコは丸刈りにする選手が増えている?いやあ、先日、YouTubeに自身のチャンネルを開いたジョアン・フェリックスは変わりないんですけどね。最初はヒメネスに驚かされ、今週は零細企業とフリーランスの援助に肩入れいていたサウールもいつの間にか髪がなく、コレアもガンと闘病中の母親を応援するため、剃ってしまったそうですが、大丈夫。練習や試合に彼らが戻って来るのにはまだまだ時間がかかるため、きっとその頃には皆、髪も伸びているんじゃないでしょうか。

そしてこんな状況でも、2022年完成予定の改装工事が進行中のサンティアゴ・ベルナベウを医療物資の一時保管施設として、マドリッド市に提供、太っ腹な寄付もして、市長から感謝されていたお隣さんはというと。いやあ、先週の土曜には1995年から2000年にレアル・マドリーの会長を務め、クラブに32年ぶりとなるSeptima(セプティマ/7度目のCL優勝)とOctava(オクタバ/8回目のCL優勝)をもたらしたロレンソ・サンツ氏がコロナによる肺炎で73才の生涯を閉じ、ファンは悲しい思いに包まれていたんですが、どうやら経営面での心配とは無縁のよう。

そう、というのも2018-19シーズンには収入が7億5700万ユーロ(約910億円)とバルサの8億3600万ユーロ(約1000億円)には及ばなかった彼らですが、うち人件費はライバルの5億4200万ユーロ(約650億円)に比べ、たったの3億9400万ユーロ(約473億円)と控えめ。予算に占める割合が52%と68%という差が大きいんですが、今季も最高年棒がセルヒオ・ラモスとベイルの1450万ユーロ(約18億円)に留まるのに比べ、バルサはメッシ、ルイス・スアレス、グリーズマンの3人にその何倍もの額を払っているのが効いているとなれば、クラック不在も悪いことばかりではない?

おかげで給料カットの懸念もなく、リーガが中断となって早々、F1のネットゲームに参戦していたGKクルトワなど、先日はツイッターでファンの質問に答えたりして、時間を潰していたようですが、いやもう本当にヒマなんですかね。折しも今、マルカのホームページを開いてみたところ、2ndレグが延期になっているCL16強対決マドリーvsマンチェスター・シティ戦をFIFA20のゲームでブライムとクルトワがそれぞれ、ラポールとジンチェンコと対戦。Twichで実況中継していたんですが、そういえば先週末はリーガのチームがそれぞれ代表選手を出して、オンタイン対決トーナメントなんかもやっていましたからね。

そちらは昨年7月から、ヒザの靭帯断裂のリハビリを続ける傍ら、復帰も近づいてきた今はeスポーツでも名人ぶりを発揮するようになったアセンシオが決勝で弟分、レガネスのルイバレスを破り、マドリーが優勝していましたが、はあ。普段、ゲームとは縁のない私など、最近はプレーヤーのリアクションもよくできているし、変な時間稼ぎもなく、ケガする選手もいないしと、結構、楽しく見入ってしまったりしたんですが、いやあ、マンチェスター・シティ戦の結果が1stレグは0-2でブラヒムが負け、2ndレグもクルトワが3-2で負けてしまったのはともかく、これで勝負が決まるようでは誰もあんな高額年棒を選手たちに払ったりはしないですよね。

【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。