「悪いことって続くのよね」そんな風に私が首を振っていたのは金曜日、ジダン監督がコロナ陽性となり、10日間の自宅隔離になったと聞いた時のことでした。いやあ、第3波真っ只中のスペインだけに昨今、コーチングスタッフや選手が感染して、しばらく戦列を離れるのは全然、珍しくないんですけどね。折しも水曜にチームがコパ・デル・レイ32強対決で訪れたアルコイ(スペイン南部)は現在、国内1、2位を争う大流行地帯ではあったんですが、おそらくジダン監督の感染はその前のこと。当人は無症状のようですし、試合前記者会見には第2監督のダビド・ベットーニ氏が登場したため、今季、もう何度目かわからないcrisis(クリシス/危機)に突入したチームへの厳しい質問がなかったのは却って、良かったかも。

え、でもジダン監督がいない間にある2試合、土曜の午後9時(日本時間翌午前5時)からのアラベス戦と来週土曜のレバンテ戦でますます、レアル・マドリーが首位との差を広げることになったら、どうするんだって?うーん、現在、万が一、解任or辞任となった場合、後継候補の一番に挙げられているラウール監督も今週火曜にコロナ陽性が発覚。こちらも自宅隔離で、RMカスティージャの指揮すら、執れていませんからね。ただ、ビトリア(スペイン北部、アラベスのホームタウン)遠征の招集リストを見ると、あまりコパと変わってなくて、先週のスペイン・スーパーカップ決勝前に左ヒザを痛めたセルヒオ・ラモス、その前から欠場していたカルバハルもまだ入らず、感染者との濃厚接触により、アルコイに行けなかったナチョも隔離中。

この冬の市場でレンタル移籍希望のウーデゴールもレアル・ソシエダやアーセナルといったオファーを検討中なのか、いませんし、バルベルデなどは金曜に太もものケガで離脱と、せいぜいバランとモドリッチが加わったぐらいなんですが、いやあ。今季は何故か、あまり強く見えないチームに対して勝ち点を取りこぼし、今はマチン監督がアベラルド監督に代わったとはいえ、それこそアラベスには11月にエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)で1-2と負けているとなると、ホント、心配の種は尽きないんですが…今はまず、ミッドウィークのマドリッド勢の試合がどうだったか、報告していくことにすると。

リーガ19節とスペイン・スーパーカップ参加組のコパ32強対決が混在した水曜、先にプレーしたのはヘタフェ。すでにコパとは2回戦から無縁になっていた弟分はウエスカをコリセウム・アルフォンソ・ペレスに迎えたんですが、ボルダラス監督はエルチェ戦での働きを評価したか、今度はアレニャ(バルサからレンタル移籍)だけでなく、久保建英選手(同マドリー)もスタメンに抜擢してくれたんですよ。その期待に応えようと、序盤から、当人もヘッディングシュートや直接FKでGKアルバロの手を煩わせていたんですが、前半はアランバリのシュートがゴールポストに阻まれたぐらいで、0-0のまま終了します。

とうとう均衡が崩れたのは後半25分、アレニャのスルーパスから、「tuve tres tiros para que entre alguna/トゥベ・トレス・ティロス・パラ・ケ・エントレ・アルグーナ(どれか入るように3回、シュートチャンスがあった)」というアランバリが決め、ヘタフェが1点リードしたんですが、この日は試合直前に左SBのオリベイラとCBカバコを負傷で欠きながら、最後まで頑張って守りましたよね。ええ、後半34分に岡崎慎司選手がウエスカ攻撃陣のリフレッシュとして入った1分後、ポルティージョと交代となった久保選手も「Se ha sacrificado en defensa, ha ayudado mucho a Damián/セ・ア・サクリフィカードー・エン・デフェンサ、ア・アジュダードー・ムーチョ・ア・ダミアン(守備にも献身してくれて、ダミアンを大いに助けてくれた)」とボルダラス監督に褒められていましたっけ。

この1-0の勝利で2連勝としたヘタフェは順位も10位まで上昇、4年前の悪夢が蘇りそうだった降格圏までも勝ち点6差とし、ヨーロッパの大会出場権がもらえる6位まで7差とだんだん、上の方を見る余裕も出てきたんですが、この調子で次節、来週月曜午後9時のサン・マメスでのアスレティック戦もこなしてもらいたいところ。何せ、彼らはコパ早期敗退により、余裕日程となったのに比べ、先週、スペイン・スーパーカップで兄貴分のマドリーを倒し、優勝したばかりの相手は木曜の32強対決でもイビサ(2部B)相手に後半ロスタイム、ウナイ・ニュネスが勝ち越しゴールを挙げて、逆転勝利で16強に進出。その結果、来週木曜にはアルコジャーノ(2部B)との対戦が決まり、ハードスケジュール、この上ないため、体力的優位を大いに利用できたらいいかと。

ちなみにこのアルコジャーノこそ、水曜の夜、マドリーに挑んで大金星を掴んだチームだったんですが、うーん、一応、ジダン監督は当日、参加できないことになったナチョの代わりにチュストと、スタメンのカンテラーノ(RMカスティージャの選手)は1人だけに留め、後はトップチームのいわゆる、Bチームと言われる控え選手にチャンスを与えたんですけどね。時間はかかったものの、ハーフタイム入り直前にはマルセロのクロスから、ミリトンのヘッドが決まり、先制点も取ったんですが、その後がいけません。ええ、後半35分にはCKから、ビニシウスがマークに熱心でなかったソルベスに同点ゴールを決められてしまったから、ビックリしたの何のって。

後半終了間際には、まだこのラウンドではVAR(ビデオ審判)を使っていないことも災いして、ミリトンへのペナルティが見逃されるなんてこともあったんですが、1-1で入った延長戦では、すでに後半途中にマリアーノから代わっていたベンゼマに加え、アセンシオ、クロース、アザールとレギュラー組を投入。これには渾身の10セーブでアルコジャーノの失点を1に抑えていた41才のGK、ホセ・ファンも「la que nos va a caer/ラ・ケ・ノス・バ・ア・カエール(ウチが何点、取られるのか)」と青くなったそうですが、いやいや。延長戦後半10分、ディアキテのラストパスをゴール前からフアナンが蹴り込み、逆に味方がGKルニンのマドリーデビューを苦い思い出に変えているんですから、本当に勝負とはわからない。

そう、1-2でアルコジャーノが勝ち抜けたこの試合、マドリーにとってはクラブ史上5回目となる、2部Bチームを前にしての敗退で、いえ、alcoyanazo(アルコジャナソ)はあまり語呂が良くないため、一世を風靡したalcorconazo(アルコルコナソ/2009-10シーズン、当時2部Bにいたアルコルコンにペレグリーニ監督率いるマドリーが32強対決1stレグで4-0と大敗した黒歴史のこと)程、流行りはしないと思うんですけどね。直近はチェリシェフ(現バレンシア)のalineracion indebida(アリネラシオン・インデビーダ/不正起用)により、1stレグで敗退が決まった2015-16シーズンのカディス(当時は2部B)ですが、その時のベニテス監督も年明けには解任。それこそジダン監督が引き継いだなんてことがあったため、いよいよ彼の2度目のベンチ生活も終わりが近づいてきたのではないかと、世間では議論になることに。

まあ、一応、スポーツ紙などの見立てでは2月終盤に再開するCL決勝トーナメント、16強対決アタランタ戦までは様子見ということになっているんですけどね。ジダン監督自身も「2部Bチームには勝つべきだったが、no es una vergüenza/ノー・エス・ウナ・ベルグエンサ(別に恥ではない)。敗戦の責任は自分にある」とだけで、あまり怒りを見せていなかったのはちょっとねえ。それこそ、このコロナ休養中にリーガで事態が急転して、変なことにならないといいと私が心配してしまう由縁でもありますが、あ、ダメですよ。アトレティコファンがお隣さんのことを笑っては。

シメオネ監督のチームなんて、コパの1つ前のラウンド、2回戦でコルネジャ(2部B)に1-0と軽くあしらわれて敗退しているんですから、先に我が身の不徳を反省すべきなんですが、後悔が残るとしたら、やはり、その試合にルイス・スアレスを連れて行かなかったことかと。それが如実にわかったのが木曜のリーガ、エイバル戦で、いやあ、アトレティコは前半12分にカラスコが乾貴士選手と一緒に先発した武藤嘉紀選手をエリア内で倒し、ペナルティを献上。先日のグラナダ戦でエクスポシトがPKを失敗したため、次のレバンテ戦からキッカーをメンディリバル監督に命じられたというGKドミトロビッチが同業のオブラクを破り、先制点を奪われてしまったんですけどね。

それからもエイバルのキツキツのプレスと累積警告によるコケの出場停止という二重苦に喘ぎ、なかなか敵ゴールに近づけなかったアトレティコだったんですが、驚かせてくれたのは40分。マルコス・ジョレテンテが2度に渡り、セルヒオ・アルバレスのパスを阻止したボールがエリア内に転がったところへルイス・スアレスが詰め、ゴール右前から同点弾を入れているんですから、さすがじゃないですか。レマルとコレアをジョアン・フェリックスとトレイラに代えた後半になっても様相はあまり変わらず、度々、ファールでプレーが中断してばかりの、「En el segundo, fue una batalla, una guerra en la que era complicado crear ocasiones/エン・エル・セグンド、フエ・ウナ・バタジャ、ウナ・ゲラ・エンラ・ケ・エラ・コンプリカードー・クレアル・オカシオネス(後半、あれは闘い、戦争みたいなもんで、チャンスを作るが難しかった)」(スアレス)という展開だったんですが、いやあ、真正のnueve(ヌエベ/背番号9番、CFのこと)がいるって、本当に有難いもんですねえ。

ええ、それは44分、自陣からのロングボールをスアレスが追ったところ、いえ、33才の彼は全盛期のジエゴ・コスタやグリーズマン(現バルサ)程、足は速くないため、敵DFを振り切ったりはできないんですけどね。そこで披露されたのが、ベテランFWのしたたかさ。並走するアルビージャが出した足に丁度、エリアに入ったところで倒されて、土壇場でPKをゲットしているんですから、開いた口が塞がらないとはまさにこのこと?もちろん、PKはパネンカ風(ゴール正面に緩く蹴るチップキック)に当人がしっかり決め、1-2でアトレティコは勝ち点3をまんまとゲットしてしまいましたっけ。

もうこれには首位との引分けという、報償を寸前のところでご破算にされてしまったメンディリバル監督も「No es ni siquiera un pase, porque es un despeje que nace de su área/ノー・エス・ニ・シキエラ・ウン・パセ、ポルケ・エス・ウン・デスペヘ・ケ・ナセ・デ・ス・アレア(あれはパスですらなくて、自陣からのクリアだった)。それでペナルティを引き起こして、ゴールを入れられては」と呆れ顔でしたが、まさしく、こういう試合で決勝点を挙げてもらうべく、アトレティコはスアレスを獲った訳ですからね。折しもその日、2回戦同様、奮闘するコルネジャ相手にコパ32強対決を戦っていたバルサがピアニッチとデンベレ、2人続けてPKを敵GKに止められ、スコアレスドローで延長戦に突入。メッシはスペイン・スーパーカップ準決勝アスレティック戦でのレッドカードによる出場停止でいなかったとはいえ、ペドリやブスケツら、レギュラー陣を投入して、何とか0-2で勝ったなんて聞くと、やっぱり、スアレスがコパでもベンチに控えていてくれればなんて、私もつい、思ってしまうんですが…。

まあ、それも考え方次第で、コパがなくて休めたおかげで、2位マドリーとは勝ち点7差、3位バルサとは10差、しかも消化試合が1つ少ないという、凄まじい絶対首位にアトレティコが立てたとも言えますが、彼らの次のリーガ戦は日曜午後9時からのバレンシア戦。これも相手は日曜のコパ32強対決でマドリッドの2部の弟分、アルコルコンに勝った後、木曜にはリーガのオサスナ戦で1-1と引分け。来週ミッドウィークにはセビージャとコパ16強対決をしないといけないと予定が押しているのと対照的に、シメオネ監督のチームは来週日曜のカディス戦までノーゲームと、優雅なもんですからね。

またしばらくはFA(イングランド・サッカー協会)からの10週間、サッカー活動禁止処分が復活したトリッピアーは出られないものの、今度は練習参加だけはOKになったようですし、コケも戻り、今度こそエレーラも復帰できそうとなれば、ますます優勝候補ナンバーワンの推しが強まるんじゃないかと思いますが、さて。ちなみに来週ミッドウィークのコパでプレーするマドリッド勢は2部のラージョと2部Bナバルカルネーロ。前者は水曜、ここ数日の雨と気温上昇で積雪問題も解決したエスタディオ・バジェカスにバルサを迎え、アルコジャーノと共に2部B、2チームだけの生き残りとなった後者は木曜にグラナダ戦となりますが、そろそろ下位カテゴリーのチームにはリーガとコパの同時進行が辛くなってくる頃でしょうか。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。