「昔は当たり前だった光景が異様に感じられる」そんな風に私が息を飲んでいたのは火曜日、スペインでユーロは全ての試合がオープン放送と自宅で見られるため、ちょっとTVをつけてみたところ、ハンガリーvsポルトガル戦ではプシュカス・アレナのスタンドが超満員。ソーシャルディスタンスもマスクもなしで、一番上の席まで人でぎっしり埋まっているのを目撃した時のことでした。いやあ、この1年遅れのユーロ2020はUEFAから有観客試合を義務付けられ、コロナ感染予防の観点から、地元の自治体がそれを保証できなかったビルバオ(スペイン北部)とダブリン(アイルランド)では開催できなくなってしまったんですけどね。

とはいえ、キャパの何%まで入場を許可するかは各自治体の裁量に任されているんですが、11都市の開催スタジアム中、フルオープンとなったのはブダペストにあるプシュカス・アレナだけ。聞けば、人口480万人のハンガリーはすでにワクチン供給が860万回分に及び、49%が接種済みで、ここ2週間は10万人当たりの新規感染者数も38人程度とほぼコロナを抑え込んでいるからだそうですが、確かに同スタジアムではイギリスが厳しい入国者隔離政策を採っていた2月3月など、CL16強対決のライプツィヒvsリバプール戦の2試合を引き受けたりもしていましたからね。

その頃から、ちゃんとコロナをコントロールしていたとなると、ただただ感心するばかりですが、やっぱり自分的にはまだ、スタジアムで隣の席に人がいるなんて問題外。先日、1万5000人が入場したワンダ・メトロポリターノでのポルトガルとの親善試合やこの月曜、1万6000人を迎えたセビージャ(スペイン南部)のカルトゥーハでのスペイン代表ユーロ開幕戦、スウェーデン戦ぐらいの観客ポツポツ感が丁度いい気がしますが、え?満員になると、pito(ピト/ブーイング)の音量も増して、可哀そうな選手がいるからっていうのも、まあ、あったりはしますかね。

とりあえず、ユーロの話をする前に先週末の日曜にエスタディオ・バジェカスであった1部昇格プレーオフ決勝1stレグがどうだったのか、伝えていくことにすると。今回は時間的な余裕があったこともあり、クラブのネット販売で問題なくチケットを手に入れた1500人のラージョファンも粛々と入場できたんですが、やっぱり現れたんですよ。次男のGKルカを応援するため、奥さんのベロニクさんと新シーズンはロデーズ(フランス・リーガ2)でプレーすることになった長男のエンツォを連れて、先月、辞任を告げるcarta(カルタ/手紙)を残し、記者会見もなしにレアル・マドリーを離れたジダン監督が。

私ですら期待するぐらいですから、当然、目ざといスペインマスコミが張っていない訳もなく、しっかりGol(ゴル/スポーツ専門TV局)のレポーターに捕まっていましたが、いくら「Tu trabajo es de vergüenza/トゥ・トラバッホ・エス・デ・ベルグエンサ(君の仕事は恥ずべきものだ)」とジダン監督に非難されたとて、別に彼だって、好きでマイクを突きつけている訳でもなし。局から言われてやっているだけではないかと思いますが、レポーターと顔見知りだったジダン監督が何とか、相手を丸め込んで、その映像は終了することに。とはいえ、彼がスタンドから見守っていたジローナとの試合の方はあまりラージョにはいい結果が出なくて…。

いえ、プレーオフ準決勝で同じマドリッド勢の2部仲間、レガネスに連勝した余波もあったか、イラオラ監督のチームは序盤から、積極的に攻めていたんですけどね。その甲斐あって、早くも前半5分にはGKファン・カルロスとDFのクリアミスから、イシが先制点をゲット。正面スタンドとフォンド・スール(ゴール裏南側スタンド)の協議委員会による処分で閉鎖された中央部以外に座ったファンたちも大いに沸いたものでしたっけ。その後もラージョは「hoy nos tuvo encerrados en nuestro campo media hora/オイ・ノス・トォ・エンセラードス・エン・ヌエストロ・カンポ・メディア・オラ(30分間、ウチを自陣に閉じ込めた)」(フランシスコ監督)ものの、ここで追加点が奪えなかったのが、仇になるとは。

昨季もプレーオフ決勝でエルチェに負け、昇格直前で涙を飲んだジローナもその程度では挫けず、41分には自陣からのロングパスをシラが受け、エリア内奥から折り返したボールをフランケサが決めて同点としただけでなく、ハーフタイム直前にもブストスのヘッドがゴールに。幸い、こちらはVAR(ビデオ審判)でシュート時のハンドを取られたため、1-1のまま、後半を迎えたんですが、まさか、再開して1分も経たないうちに今度はフランケサのラストパスをシラに流し込まれ、あっという間に逆転されているって、一体、どうしたらいい?

それ以降はジローナの動きが極度に遅くなり、早く追いつきたいラージョの選手たちはフラストレーションを溜めていったんですが、まあ、彼ら自身も同じことをブタルケ(レガネスのホーム)でやっていましたからね。相手を非難する道理もないんですが、いよいよ、試合も大詰めとなった45分、ポソのシュートが決まりながら、こちらもVARでウジョアのオフサイドがバレて、2-2にできなかったのは本当に残念だったかと。うーん、今シーズンのラージョはremontada(レモンターダ/逆転劇)による勝利が7試合と、2部では一番多かったようなんですけどね。

イラオラ監督も「si hay alguien que lo puede conseguir somos nosotros/シー・アイ・アルギエン・ケ・ロ・プエデ・コンセギール・ソモス・ノソトロス(もし誰か、達成することができるなら、それは自分たち)」と言っていたんですが、果たして今週日曜午後9時からのモンティリビで彼らは0-2以上の勝利を挙げることができるのか。うーん、その日は奇しくもラージョの正GKディミトリエフスキもユーロ初出場のマケドニアのゴールを守り、バジェカスの試合が始まる直前に終わったオーストリア戦で3-1と敗戦。別にルカが悪いGKということはないんですが、シーズン通して、チームのプレーオフ出場に大いに貢献しながら、肝心な1部昇格を決めるための試合に出られないというのも何だか、サッカー界のスケジューリングがおかしいような気がしないでもありません。

その間、ユーロの方も土曜には8月にマドリーに戻って来るのかどうか、6年ぶりに復帰したアンチェロッテイ監督もヤキモキしているだろうベイルのいるウェールズがスイスと1-1で分け、GKクルトワ、アザールがお隣さんのカラスコと肩を並べるベルギーはロシアに3-0と快勝。日曜もサウスゲート監督の下、本職の右SBではなく、左SBを拝命、まさか同僚のベルサイコと真正面からぶつかるとは当人も思っていなかったでしょうが、芸域を広げてシメオネ監督を喜ばせているトリピアーのいるイングランドがモドリッチ率いるクロアチアに1-0で勝った後、月曜にはスペインと同組のスロバキアがレバンドフスキ(バイエルン)のいるポーランドを1-2で破るという波乱が。

その直後、スペインのユーロ初戦が始まったんですが、試合にはスウェーデンのファンも3000人ほど来場。もう地中海沿岸のリゾートタウンは完全に国外からの観光客を迎える態勢になっていますし、早めのバケーションを兼ねてやって来た人も多かったと思いますが、ハンガリーとは異なり、こちらはまだ観客全員がマスク着用、場内の飲食及び喫煙禁止という、ちょっと厳しい規則があるんですよ。何せ、カルトゥーハでは4月に行われた昨季と今季のコパ・デル・レイ決勝ですら、無観客開催でしたからね。スタンドから、応援の声が聞こえるのは選手たちにとっても嬉しかったはずですが、それとももしかして、1年以上、静かな環境でプレーしていたせいで、逆に上がってしまった?

だってえ、完全にボールを支配したスペインは前半11分、ダニ・オルモ(ライプツィヒ)の強烈ヘッドをGKオルセン(エバートン)にparadon(パラドン/スーパーセーブ)されたのから始まって、いえ、エリア内にひょっこり顔を出したコケ(アトレティコ)の2本のシュートが外れたのは仕方ないんですけどね。37分、ジョルディ・アルバ(バルサ)から、ラストパスを受けたモラタ(アトレティコからレンタルして昨季はユベントスでプレー)がまさか、あんないい位置からのシュートを外してしまうとは!その後、40分にはイサク(レアル・ソシエダ)のシュートが枠内に飛び、反射で脚を出したスタメン右SBのマルコス・ジョレンテ(アトレティコ)に当たると、更にポストにも当たってGKウナイ・シモン(アスレティック)がキャッチするというドッキリなどもあったんですが、またしても後半4分、モラタが絶好機で決められなかったことから、不幸が始まります。

ええ、それはワンダ・メトロポリターノでの親善試合とまったく同じパターンで、会場のスペイン人ファンたちから、ブーイングされる破目になったんですが、別に彼だけではないんですよ、「Hemos sido superiores a un rival que ha decidido defender y defender/エモス・スペリオーレス・ア・ウン・リバル・ケ・ア・デシディードー・デフェンデール・イ・デフェンデール(ウチは守って守り倒すことを決めていた相手より上だった)」(ルイス・エンリケ監督)スペインでゴールを決められかったのは。後半21分にブーイングを浴びながらモラガがロドリ(マンチェスター・シティ)と共に退き、サラビア(PSG)とチアゴ・アルカンタラ(リバプール)が入っても大して状況は変わらず、29分にはいよいよ、国産ピチチ(得点王)のジェラール・モレノ(ビジャレアル)、オジャルサバル(レアル・ソシエダ)も満を持しての登場となったんですが、期待の前者もオルセンにヘッドを弾かれていましたからね。

結局、そのまま最後まで点を取れなかったスペインはスウェーデン戦をスコアレスドローで終了。それどころか、後半15分にイサクからのパスをフリーのベリ(クラスノダール)が天に撃ち上げていなければ、負ける危険性さえあったんですが、そのせいもあってか、ルイス・エンリケ監督は試合後、「ピッチはあまり助けになってくれなかった。あんないい選手たちが、ボールコントロールできないのを見せられれば…Necesitamos que el césped esté major/ネセシタモス・ケ・エル・セスペッド・エステ・メホール(もっと芝がいい状態であることが必要だ)」と、時間が経つにつれ、穴ぼこが増えていったのに文句を言っていたんですかね。おかげでカルトゥーハの整備員が夜中の1時まで働かされたなんてこともあったんですが、シュート自体は17本も撃っていたため、やはりポルトガルとの親善試合同様、問題なのは精度の方では?

まあ、その辺はツキもありますし、モラタだって、アトレティコ時代のCL16強対決リバプール戦2ndレグ延長戦で殊勲の決勝ゴールを挙げたFWですから、「en el próximo partido igual mete tres y calla la boca a todos/エン・エル・プロキシモ・パルティードー・イグアル・メテ・トレス・イ・カジャ・ラ・ボカ(次の試合では3ゴール入れて、世間を黙らせるかもしれない)」(ラポール/マンチェスター・シティ)という可能性もない訳じゃないんですけどね。ただ、こうも味方であるファンからブーイングが続くと、いくら18才でスペイン最年少のユーロ出場を遂げたペドリ(バルサ)が、「creo que Morata sabe sobrellevarlo y el próximo partido marcará/クレオ・ケ・モラタ・サベ・ソブレジェバールロ・イ・エル・プロキシモ・パルティードー・マルカラ(モラタは耐えることを知っていると思うし、次の試合ではゴールを入れるよ)」と持ち上げてくれたとて、当人は落ち込んでいるかも。

実際、ユーロは短期決戦のため、ルイス・エンリケ監督が土曜のポーランド戦でCFをジェラール・モレノに代えたとしても全然、不思議はありませんからね。でもそうなったとて、去年の夏、コロナによる中断をはさんだ後のCL準決勝ライプツィヒ戦でスタメンに使われなかったせいで、シメオネ監督が自分を信頼してくれないとアトレティコをあっさり見限り、ユベントスに移った時のようにスペイン代表から、おいそれと他の国の代表に変われる訳もなし。ダメでもダメでも挑戦し続け、最後はリーガ優勝に繋がるゴールを入れて英雄になった、昨季まで同僚だったコレアのような選手だっているんですから、ここはモラタにも気をしっかり持ってもらわないと。

え、今回のユーロも参加24チーム中、8チームしか、グループリーグでは敗退しないという、決勝トーナメント進出檄甘の大会なんだから、初戦で勝てなくても痛くも痒くもなくないかって?まあ、それはその通りで実際、同形式だったユーロ2016で優勝したポルトガルもグループリーグでは3引き分けで3位通過。そんな例もあるため、コケなども「Mucha gente no confía en nosotros y eso nos va a hacer más fuertes/ムーチャ・ヘンテ・ノー・コンフィア・エン・ノソトロス・イ・エソ・ノス・バ・ア・アセール・マス・フエルテス(多くの人々はボクらのことを信じてなくて、それが自分たちをより強くするだろう)」なんて、完璧にアトレティコが優勝争いしていた時と同じ台詞を言っていたんですけどね。

とはいえ、いつの間にやら、前回王者のポルトガルは後半39分から実力を発揮。ジョアン・フェリックス(アトレティコ)がベンチから見守る中、ラファエル・ゲレロ(ドルトムント)が口火を切った後、42分にはクリスチアーノ・ロナウド(ユベントス)がPKを決め、ロスタイムにも自身2点目を挙げて、0-3で圧勝と、どんなにプシュカス・アレナがハンガリーのファンでいっぱいになっても、強いチームにとっては問題ないということを証明していましたしね。

その後のフランスvsドイツ戦も結果はフンメルス(ドルトムント)のオウンゴールにより、2018年W杯王者が1-0の僅差勝利だったとはいえ、オフサイドで認められなかったエムバペ(PSG)とベンゼマ(マドリー)のゴールを見るだけで、スペインとの決定力の差がヒシヒシと伝わってくるんですが…いえいえ、まだユーロは1節目が終わったばかり。月曜の試合後はすぐにラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会施設に戻り、ポーランド戦に向けての練習を始めたチームにはブスケツ(バルサ)がコロナ隔離明けで水曜には合流できるという話もありますし、若い選手が多い今回は短期で急激に成長してくれるかもしれませんよ。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している

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