「6チームが並走っていうのは珍しいかも」そんな風に私が目をしばたかせていたのは月曜日、リーガ開幕から3試合終わった時点で、順位表の一番上には得失点差と総得点数差で勝ったレアル・マドリーがいるものの、その下、セビージャ、バレンシア、バルサ、アトレティコ、マジョルカまで、同じ勝ち点7なのに気づいた時のことでした。いやあ、毎シーズン、定番の優勝候補、マドリー、バルサ、そして昨今は優勝争いに絡むことも増え、今季はタイトル防衛を目指すアトレティコがいるのは当然なんですけどね。

バレンシアもここ2シーズンこそ、オーナーのシンガポール人実業家、ピーター・リム氏の緊縮財政方針のせいで主力選手が大量に売却され、尾羽打ち枯らした状態でしたが、かつてはCL出場チームの常連。昨季までマドリッドの弟分チーム、ヘタフェを指揮していたボルダラス監督を迎え、今はハネムーン期にあると考えれば納得いきますが、見事としか言いようがないのはマジョルカ。そう、7年ぶりに1部復帰した2019-20シーズンはマドリーからレンタル移籍した久保建英選手もいたものの、力及ばず、19位で最速2部Uターンの憂き目に遭いながら、こちらもヘタフェを2011~14シーズンに率いていたルイス・ガルシア監督の下、昨季は2位で速攻返り咲き。久保選手が2度目のレンタルとなった今季は開幕ベティス戦で1-1と引分けた後、アラベス、エスパニョールに1-0で連勝して、ビッグクラブと肩を並べているんですから、凄いじゃないですか。

その金曜のエスパニョール戦では久保選手がいい働きをしていたと、スポーツ紙などでも評価は高かったんですが、翌日の私は、9月のW杯予選の日本代表で久々に彼とチームメートになる柴崎岳選手のいる2部の弟分、レガネスの試合を見にブタルケへ。ファンをスタンドに迎えてのホームゲームはこのイビサ戦で2週連続とはいえ、やはり応援の声が聞こえるのは気分が上がりますよね。そのせいもあったか、前半は押し気味にプレーしていたレガネスだったんですが、エースのサビン・メリーノのシュートも決まらず、双方、無得点のまま、ハーフタイムに。するとどうしたことか、後半、いきなりイビサが勢いづき、11分にはハビ・ペレスのシュートがレガネスDFに当たり、跳ねたボールをカステルに決められて、先制されてしまったから、さあ大変。

ただこの時は2分も経たないうちにアルナイスが同点ゴールを決めてくれため、大事には至らなかったんですが、とうとう34分、バゲスのクロスをエカインにヘッドで押し込まれてしまうとは、脇が甘い。ええ、そのまま1-2でレガネスは負けてしまい、何せ、2年前に2部降格して、昨季は昇格プレーオフ準決勝で弟分仲間のラージョに歯が立たず、ご褒美を持っていかれてしまった彼らですからね。ファンも今季こそはという期待をして観戦していただけに、初戦はレアル・ソシエダBに1-0で負け、先週もブルゴスとスコアレスドロー。2部Bからの昇格組3チームを相手に1勝もできないというのはさすがにショックだったか、ブタルケでは珍しく、終盤にはホームチームにpito(ピト/ブーイング)が飛ぶなんていう出来事も。

そんな中、私が感心していたのは柴崎選手の成長ぶりで、とりわけ前半など、チャンスに繋がるいいスルーパスもあり、体を張って、敵からボールを取り返すシーンも2、3回見られたことなんですが、やはり日本代表の選考スタッフの目は節穴じゃない?ちなみに帰りがけには丁度、彼の車が駐車場から出て来るところに遭遇し、昨季から在籍しているおかげか、出待ちしていたファンも気安く、「Gaku、Gaku」とサインや写真を頼んでいたんですが、何せリーガ2部は代表戦週間も止まりませんからね。9月4日のエイバル戦は欠場になりますし、7日の中国戦をカタールで終えた後、10日のスポルティング戦に間に合うかどうかといったところですが、アシエル・ガリターノ監督も柴崎選手の離脱は痛いかもしれませんね。

そして先週同様、直帰して、近所のバル(スペインの喫茶店兼バー)でベニト・ビジャマリンでマドリーがベティス戦後半をプレーするのを見た私だったんですが、メトロが地上に出る区間だけ、途切れ途切れに聞こえるオンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の実況で前半は0-0だったことがわかっていたため、焦ることはありませんでした。うーん、あとでアンチェロッティ監督も「En la primera parte hubo algo de falta de intensidad defensive/エン・ラ・プリメーラ・パルテ・ウボ・アルゴ・デ・ファルタ・デ・インテンシダッド・デフェンシーバ(前半はどこか、守備の強度が欠けているところがあった)」と言っていたんですが、きっとハーフタイムにその反省ができたんでしょうかね。

そう、後半は最高の守備は攻撃と言わんばかりに立ち上がりから、フェキル、ペッツェラ、カナレス、ルイバルらが、「estuvimos condicionados por tantas tarjetas amarillas/エストゥビモス・コンディシオナードス・ポル・タルヘタス・アマリージャス(イエローカードのせいで縛られていた)」(ペレグリーニ監督)ベティスに息をつかせない猛攻でスタートしたんですよ。ベンゼマの2本のシュートはどちらもオフサイドだったものの、16分には自陣エリアでフアミが不可思議にもカンテラーノ(RMカスティージャの選手)の左SB、ミゲール・グティエレスにパスを当ててしまったせいで始まったカウンターで、ビニシウスが敵エリア内左奥まで侵入。ラインを割る直前に折り返したボールをベンゼマが受け、そのクロスをvolea(ボレア/ボレーシュート)でカルバハルが決めて先制点を奪うことに。

いやあ、昨季は負傷が続き、あまり出場できなかった彼ですが、スタメン復帰早々、ゴールを挙げるとは幸先がいい。1、2節で3得点したビニシウスをアザールに代えて先発に使ったアンチェロッティ監督も英断でしたけどね。ただ、追加点は生まれず、最後はモントーヤにエリア内からフリーで撃たれ、GKクルトワがナイスセーブして事なきを得たんですが、0-1でも勝ち点3は勝ち点3。とりあえず、これでマドリーも一息ついて、paron(パロン/リーガの停止期間)の間にモドリッチ、マルセロ、クロース、メンディら、現在、負傷のリハビリ中の選手たちの復帰を待てることになったんですが、やはり気掛かりなのは4節のセルタ戦ではカセミロ、ミリトン(ブラジル)、ベルベルデ(ウルグアイ)の帰還がギリギリになること。

ええ、CONMEBOL(南米サッカー連盟)がW杯予選を2試合から3試合にすべく、代表戦日程を延長するのを認めたFIFAの決定の一時停止をラ・リーガはCAS(スポーツ仲裁裁判所)に訴えていたんですが、土曜に棄却の通達があったんですよ。そこで頭を絞って、9月11日土曜午後4時15分に設定されていたマドリーvsセルタ戦を日曜午後9時に変更。もし火曜中に決まれば、エムバペ(PSG)のプレゼンも予定より1日遅れて、その前日、土曜にやることになりますが、同様に土曜午後2時だったエスパニョールvsアトレティコ戦は日曜午後2時に。金曜だったレバンテvsラージョ戦は土曜午後6時30分、日曜だったヘタフェvsエルチェ戦は月曜午後10時にと、計8カードの開催を遅らせたんですが、その翌週、14日火曜にCLグループリーグ1節が入っているため、セビージャvsバルサ戦、ビジャレアルvsアラベス戦は延期って、え、もうこれで最終決定ですか?

更にラ・リーガは木曜のW杯予選が終わった後、南米からチャーター便を飛ばして、「Van a llegar el sábado por la mañana, así que no van a poder jugar/バン・ア・ジェガール・ル・サバドー・ポル・ラ・マニャーナ、アシー・ケ・ノー・バン・ア・フガール(土曜の午前中に着くから、試合に出られないだろう)」(アンチェロッティ監督)という選手たちの帰還を何とか、金曜着に早めようと努力しているそうですが、総勢29名、国もバラバラとなれば、果たして上手くいくのかどうか。ちなみにヨーロッパのW杯予選にもアザール、クルトワ(ベルギー)、ベイル(ウェールズ)、アラバ(オーストリア)、ベンゼマ(フランス)と何人も派遣しているマドリーですが、こちらは3試合目が9月8日水曜のため、週末のリーガにはまったく影響はありません。

そして翌日曜はまず、弟分ヘタフェがカンプ・ノウでバルサと対戦。開始2分にジョルディ・アルバのキラーパスをブライトワイテがスルー、後ろから駆けつけたセルジ・ロベルトに先制点を奪われた時にはお先真っ暗になったものですが、有難いですね。19分には古巣への恩返しに燃えている2選手が発奮。ええ、アレニャ(昨季後半はバルサからレンタル、今季は完全移籍)とのワンツーでエリアに入ったサンドロ(ウエスカからレンタル移籍)がGKテル・シュテーゲンを破り、同点に追いついてくれたため、しばらくホッとできたんですが、それも30分にはデパイに勝ち越しゴールを決められてはねえ。

まだ本調子ではないバルサはそれ以上、点差を広げることはできなかったんですが、何せ、ヘタフェはこのサンドロのゴールがチームの今季初ゴールという程の日照りぶり。結局、再び同点には持ち込めず、2-1で負けてしまったため、これで開幕から3連敗と最悪なシーズンスタートに。うーん、確かにアレニャも「Ahora con Míchel intentamos jugar mucho más en corto pero a la vez tener profundidad/アオラ・コン・ミチェル・インタモス・フガール・ムーチョ・マス・エン・コルト・ペロ・ア・ラ・ベス・テネール・プロフンディダッド(今はミチェル監督の下、より短いパスを繋ぐのと同時に奥行き深くプレーしようとしている)」と言っていたように、今季のヘタフェは以前のサッカーの上手いチームに戻りつつあると思うんですけどね。

とはいえ、リーガでは「un equipo no vive de sensaciones, vive de puntos/ウン・エキポ・ノー・ビベ・センサシオネス、ビベ・デ・プントス(チームは感覚ではなく、勝ち点によって生きている)」(ミチェル監督)というのは冷徹な事実。幸い、バルサ戦後半に負傷で交代したジェネもすぐ回復して、トーゴ代表に旅立ったようですし、ククレジャのブライトン移籍が月曜に正式に決まったとはいえ、あまり各国代表選手の多くない彼らだけに、この2週間はゴールを入れて勝てるチームを作るための有益な時間にしないと。次のエルチェ戦では、アラベスと2チームだけ、まだ1ポイントもないという悲惨な状況をさっさと卒業してもらいたいものです。

え、次の時間帯ではもう1つの弟分、ラージョがエスタディオ・バジェカスで爆発していなかったかって?その通りで、その日の夜はビジャレアル戦を見にワンダ・メトロポリターノに向かった私ですが、前半だけでアルバロ・ガルシア、トレホのPK、エヌテカのゴールで3点リードしていたのが、着いた頃にはコメサニャの追加点も生まれ、最後は4-0でグラナダを撃沈。彼らも開幕にセビージャ、2節ではレアル・ソシエダに連敗していたため、やはり1部の荒波にはついていけないのかと心配していたんですけどね。スタジアム改装工事の都合でチケット発売が遅れるなどの諸事情により、600人弱しか、スタンドにファンが来てくれなくてもその効果は抜群。勝ち点3ゲットで一気に10位に上がったのも次のレバンテ戦に向けて、励みになるかと。

一方、アトレティコはというと、いやあ、これが自分の目を疑う程、彼らはいいプレーをしていて、シメオネ監督も「Ha sido uno de los mejores partidos que hemos jugado en los últimos tiempos/ア・シードー・ウノ・デ・ロス・メホーレス・パルティードス・ケ・エモス・フガードー・エン・ロス・ウルティモス・ティエンポス(昨今でウチがプレーした最高の試合の1つだった)」と自画自賛していた程だったんですけどね。とにかくワンタッチパスがばんばん繋がるわ、レマルがそこここに出現して、敵を翻弄するわ、先日のエルチェ戦程、暑くなかったため、スタンドのファンたちもボリュームを上げた応援をしてくれていたんですが…前半のうちに得点できなかったツケを後半、払うことに。

ええ、レマルのシュートにGKルリが触れ、ゴールポストに弾かれたり、トリッピアーの至近距離ヘッドがゴールライン上の敵DFに当たるなど、運の悪さもあったんですが、相手が何もしないことに胡坐をかいてはいけませんよね。後半7分には左サイドを破られ、ジェレミー・ピナのアシストで、トリゲロスの撃ったビジャレアル最初のシュートを決められているんですから、困ったもんじゃないですか。その時は3分後、敵エリア近くでのスローインを奪取したマルコス・ジョレンテが繋ぎ、コレアがゴール前のルイス・スアレスにラストパス。今季初めてスタメン出場したエースがしっかり同点ゴールを決めてくれたんですが、まさかその彼が左足のケガで交代した後の29分、ヒメネスとサビッチが大ポカをやってくれるとは!

ロングボールをクリアできず、再びピノにボールを奪われると、今度はダンジュマがフィニッシュ。あれだけ優勢だったのに、気がつけばスコアは1-2で負けているって、うーん、「ウチは何度もそういう勝ち方をしている」とシメオネ監督も言っていたんですけどね。前日に突如、オリンピックのブラジル代表で負ったケガが治り、ベンチ入りしたクーニャ(ヘルタ・ベルリンから移籍)もピッチに入り、同点を目指すも空しく、いよいよ試合はロスタイムへ。もう日付も月曜に変わりそうな時間でしたし、席を立って帰りを急ぐ観客も散見、別に2勝1敗のスタートなら、悪くはないと自分で自分を慰めていた時、まさか、あんな奇跡が起きるなんて!!!

それはもうほとんど最後のプレーで、サウールが100万分の1の可能性に懸けて、自陣からロングボールを前線に向けて蹴ったところ、もちろん、コレアのいた位置とは違い、マンディが悠々、クリアできるはずだったんですけどね。まさか、彼からのヘッドでのバックパスをGKルリが予想しておらず、伸ばした手の先をボールが抜けて、ゴールに収まるって、何ですか、これ?咄嗟には理解できなかった私でしたが、シメオネ監督も、ベンチにいた三男のジュリアーノも飛び出してきて大喜び。そう、ビジャレアルのオウンゴールでアトレティコは引き分けたんです。

こんなオチですから、試合後、エメリ監督がなかなか記者会見に現れず、「LLevo media hora en el vestuario dando patadas a la pared, a las botellas/ジェボ・メディア・オラ・エン・エル・ベストゥアリオ・ダンドー・パターダス・ア・ラ・パレッド、ア・ラス・ボテージャス(半時間程、ロッカールームで壁やボトルを蹴っていた)」と言い訳していたのも納得でしたが、まあねえ。バレンシア、セビージャ時代にもシメオネ監督のアトレティコと対戦しての10試合、1勝もできず、待望の初白星ゲットとなる寸前にあの形での失点ですからね。マンディとルリがコミュニケーションに欠けていたのはおそらく、昨季とは違い、スタンドが賑やかなせいで声が届かなった可能性もありますが…とりあえず、ルイス・スアレスもケガの治療でウルグアイ代表には行かないようですし、アトレティコが首位グループをキープしているのは嬉しいですよね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している