「初めて見るラージョのメガプレゼンなのに」そんな風に私が溜息をついていたのは木曜日、マドリッドの天候が回復したのに伴って、前日にはエスタディオ・バジェカスでファルカオの入団プレゼンが開かれることが決定。1時間ぐらい前に着いた時にはもう、入場を待つファンの列の終わりが見えない程になっていたのにはビックリしたものですけどね。それとは別にチケット売り場にも人垣ができていたのは、昨季の1部昇格プレーオフで有観客試合が始まって以来、クラブのシステムがトラブル続き。その日も午前9時から販売が始まった土曜のヘタフェ戦のチケットを買いたくても買えないファンがたむろっていたんだと後でわかりましたが、プレゼン用のステージが設けられたfondo(フォンド/ゴール裏)のスタンドにはおよそ2500人余りが駆けつけることに。

黄青赤の横縞国旗や代表のイエローユニを着ていたファンも多かったため、その半数近くはファルカオを母国の誇りと慕う、スペイン在住のコロンビア人だったと思うんですが、まさか、彼を紹介するためにプレサ会長が現れた途端、試合中でもお馴染みのカンティコ(節のついたシュプレヒコール)、「Presa, vete ya/プレサ、ベテ・ジャ(プレサ、もう出て行け)」の合唱が大声で始まるとは。入団前、アトレティコで一緒だったマリオ・スアレスと、「estuvimos hablando y me transmitió lo que es el club/エストゥビモス・アブランドー・イ・メ・トランスミティオ・ロ・ケ・エス・エル・クルブ(話をしていて、このクラブがどんななのか伝えてくれた)」というファルカオも会長がなかなかスピーチできないのに困惑していましたし、大体、彼が入団したことで、にわかラージョファンとなったコロンビア人たちまでが一緒になって歌っているって、どういうことなんでしょう。

これじゃ、コロナ禍が始まって以来、一切、ファンに開かれた入団プレゼンをしなくなってしまった兄貴分たちの向こうを張るように、ファルカオのサインしたボールを11個もスタンドのファンにプレゼント。ラージョにしては珍しい出血大サービスまでしていたのも空しくなりますが、どこにでも場をわきまえないファン、そして大勢に流されやすいファンはいますからねえ。折しも同日、マハダオンダ(マドリッド近郊)の練習場に車で通勤してきたジョアン・フェリックスに、「Joao, lesiona a Griezmann, como el que no quiere la cosa/ジョアオ、レシオナ・ア・グリースマン、コモ・エル・ケ・ノー・キエレ・ラ・コーサ(ジョアン、グリーズマンをケガさせちまえ。こういうの、気に入らないんだからさ)」と言ったアトレティコファンがいたとか。

それには「Deberías tener más respeto por Griezmann/デベリアス・テネール・マス・レスペト・ポル・グリースマン(グリーズマンをもっとリスペクトすべきだよ)」と、良識ある言葉でジョアンは返していたんですが、まあ、水曜のワンダ・メトロポリターノで当人をpito(ピト/ブーイング)で迎えたのは決して少なくない人数。アトレティコ残留の意志をドキュメンタリーまで制作して示した後、1年後にはあっさりバルサに移籍したという経緯を踏まえれば、それも理解できるんですけどね。ただやっぱり変なファンもいて、試合前、一応、見ておこうと、ここ2年間はよくゴミが積まれたりしていたグリーズマンの100試合以上出場した選手プレートのところに行くと、やはりマスコミも同じこと、考えるんですね。

その周りには複数のTVカメラとレポーターが集まっていたため、キレいな状態でしたが、いきなりゲリラ的に出て来たファンがプレートの上にポチテをまき散らし、空き缶を投げていくって、うーん、これは単なるウケ狙い?といっても、CLポルト戦がキックオフすると、ブーイングはほとんど元お隣さんのペペに集中していましたし、後半途中からの出場となったグリーズマンが移籍前、カンプ・ノウでプレーしたヘタフェ戦の時のようにずっと、ピーピーされているということはなかったため、そんなに本人も気にすることはないはずですが…困ったのは試合の結果の方なんですよ。

そう、先週末のエスパニョール戦でルイス・スアレス、グリーズマン、コレアの3弾頭を並べた布陣があまり効率的でなかったのを反省したシメオネ監督は今回、FWをルイス・スアレス、ジョアン・フェリックスだけにして、後半ロスタイム10分にお手柄の勝ち越しゴールを挙げていたレマルを先発に。調子に乗っているその彼が前半36分、筋肉系の負傷で早くもデ・パウルと交代せざるを得なかったのがケチの付き始めだったかと。

過剰なほど、アグレッシブにボールを持った選手に詰めてくる相手に、「Tenemos que subir la velocidad en el juego, generar más intensidad en mitad de cancha hacia delante/テネモス・ケ・スビール・ラ・ベルシダッド・エン・エル・フエゴ、ヘネラル・マス・インテンシダッド・エン・ミタッド・デ・カンチャ・アシア・デランテ(プレーの速度を上げ、中盤から前線に向かって、もっとプレーの強度を高めないといけなかった)」(シメオネ監督)にも関わらず、それができなかったせいでしょうかね。前半のアトレティコはルイス・スアレスがエリア外のシュートとFKで敵ゴールに迫ったぐらいで終了。

後半10分にはエスパニョール戦の2匹目のドジョウを狙って、コケ、エルモーソ、ジョアン・フェリックスを一気にコレア、ロディ、グリーズマンに交代、システムも5人DF制から4人にしてみたんですが、あまり変化はありませんでしたねえ。それどころか、34分には呆気に取られるようなアクシデントが発生することに。ええ、ロディのバックパスをあれ?何でコンドグビアは見守っているだけなんだと思いきや、そこにタレミが突進。GKオブラクが体で防いだんですが、ボールは倒れ込んだポルトのFWに当たって、ゴールの内側へ。こんなポカで先制点を奪われてしまうなんて、また古き懐かしのマヌケなアトレティコに戻ってしまったのかと、私も頭を抱えていたところ…。

大丈夫、ここでVAR(ビデオ審判)が発動してくれたんですよ。ボールがたまたまタレミの手に当たっていたため、「Han pitado la mano, de un error nuestro casi nos marcan/アン・ピタード-・ラ・マノ、・デ・ウン・エロール・ヌエストロ・カシー・ノス・マルカン(ハンドを取ったんだ。ウチのミスのせいで点を入れられるところだったよ)」とオブラクもホッと胸を撫でおろすことに。そして0-0のまま、この日も7分という長いロスタイムが与えられたんですが、残念ながら、ここ2試合続いた奇跡はリピートできず。いやあ、ゴールにボールを持って向かったグリーズマンをエムベンバが倒し、レッドカードで退場した後のFKはゴール右前のいい位置だったんですけどね。ルイス・スアレスの蹴ったボールは惜しくもネット上部に落ちてしまったため、試合はスコアレスドローで終わってしまいましたっけ。

ちなみに後でデータを見てみると、ポルトはファールが21回もあって、イエローカードも6枚。アトレティコがファール14回でイエローカード3枚ですから、やっぱり向こうの方が乱暴だったんだと納得しましたが、「Una pena, siempre quieres ganar en tu casa. Con ese ambiente/ウナ・ペナ、シエンプレ・キレス・ガナール・エン・トゥ・カサ。コン・エサ・アンビエンテ(いつだって、ホームでは勝ちたいから残念だよ。あれだけのムードがあるんだから)」(コンドグビア)というのはともかく、彼らのいるグループBは強敵揃いですからね。28日(火)の2節にはその日、アンフィールドでリバプールに3-2と惜敗したミランにサン・シーロで立ち向かうとなれば、不安がこみあげてくるのは仕方ない?

まあ、当面のアトレティコの課題は、土曜の午後4時15分(日本時間午後11時15分)から、再びワンダでのアスレティック戦ですけどね。相手はここまで2勝2分けの5位で、首位グループの彼らとは勝ち点差2があるんですが、金曜の夜にはレマルだけでなく、コケまでポルト戦で負傷していて、この試合に出られないというショックなニュースが。いや、別にキャプテンがいなくても中盤はコンドグビア、デ・パウル、エレーラで組めますから、穴が開くという程ではないものの、前線もまだ、ルイス・スアレスの横にどのFWを置けば、一番効率良く得点できるのか、結論が出ていませんからね。CL戦4試合出場停止のサビッチが戻り、トリッピアーも腹痛から回復したDF陣がしっかり守り、ここは最少得点差でも白星を挙げて、今度こそ、ファンを喜ばせてあげてほしいものです。

そしてアトレティコと平行して、水曜の夜にはそれこそサン・シーロでインテル相手に戦ったレアル・マドリーはどうだったかというと。いやあ、実はこちらもなかなか点が入らず、前半はGKクルトワがラウタロウやジェコのシュートparadon(パラドン/スーパーセーブ)で凌ぐなど、結構、危ないシーンもあったよう。それがカンテラーノ(RMカスティージャの選手)のミゲール・グティエレスにはCLの大舞台はまだ荷が重いということで、アンチェロッティ監督がナチョを左SBに、アラバをCBとして起用したせいかどうかは、ワンダにいて試合を見られなかった私には何とも言えないんですが、オンダ・マドリッド(ローカルラジオ局)の2元中継から、「Goool!」の絶叫が、マドリッド勢は揃ってスコアレスドロースタートかと思われた後半44分になって、聞こえてくるとは。

そう、この日はアザールをベンチに置いたマドリーは後半21分に先発したルーカス・バスケスをロドリゴに交代。更に35分にはモドリッチに代えて、カマビンガを投入したんですが、彼ら、若手選手たちがやってくれたんです。23才のバルベルデのパスを18才のカマビンガが受けると、ワンタッチでエリア内の20才へ。昨季のグループリーグの2試合に続き、インテル相手に自身3点目となるゴールをロドリゴが挙げて、0-1の勝利を引き寄せてくれたとなれば、当人が「Me encanta jugar y marcar goles en la Champions/メ・エンカンタ・フガール・イ・マルカル・ゴーレス・エン・ラ・チャンピオンズ(ボクはチャンピオンズでプレーして、ゴールを挙げるのが大好きだ)」と言っていたのも当然だったかと。

え、マドリーがCLグループリーグ白星スタートするのを見るのは久しぶりな気がするって?そうですね、2期目のジダン監督はCLスロースターターで、2019-20シーズンはPSGに、昨季はシャフタールに敗戦。途中で挽回して、決勝トーナメントには進出していますが、とにかく早めに勝ち点を貯めてしまえば、11月、12月に楽ができますからね。ちなみに彼らのグループリーグ2節は昨季、2試合共負けてしまったシャフタールをその日、2-0と破って波乱を起こした初出場のシェリフ(モルドバ)。無観客でエスタディオ・アルフレド・ディ・ステファノ(RMカスティージャのホーム)でプレーしていたのも今ではいい思い出、28日にはサンティアゴ・ベルナベウでファンの応援を受けて戦えますし、とりあえずは順風漫歩に見えなくはないとはいえ…。

やっぱり気になりますよね、今季も引き続き、マドリーが負傷者続出なのは。週末のリーガ戦、日曜午後9時(日本時間翌午前4時)から、2万9000人の観客が待ち受けるメスタジャでのバレンシア戦にはまだメンディもマルセロも戻れず。他にも恥骨炎のクロース、東京オリンピックで足首の靭帯を断裂したセバージョス、ハムストリングスを痛め、全治1、2カ月の離脱となったベイルらがいるため、当分は若いメンバーに頑張ってもらわないといけないんですが、相手のバレンシアも同じ3勝1分けの首位グループの一員ですからね。今週、ヨーロッパの大会をプレーしていないのも体力的に有利ですし、ここ2試合で7得点と決定力を上げているのも気になるんですが、今季から指揮するボルダラス監督はヘタフェ時代、マドリーとの兄弟分ダービー8試合で勝ち星なし。直近6試合は得点もしていないのは、果たして影響するのでしょうか。

そしてこの週末、ファルカのデビューが期待されるラージョvsヘタフェの弟分ダービーは土曜午後2時(日本時間午後9時)から始まるんですが、ええ、彼はガラタサライで今季をスタートして、9月のコロンビア代表戦にも出場。体調は完璧なため、イラオラ監督も「Lo vamos a meter en la convocatoria/ロ・バモス・ア・メテール・エン・ラ・コンボカトリア(招集リストに入れるつもりだ)」と言っていましたしね。2012年のヨーロッパリーグ決勝ではアスレティックのキャプテンとして出場し、これぞゴールの鬼と言わんばかりのファルカオの2得点などで、アトレティコに3-0で負けたイラオラ監督にしてみれば、無条件に信頼できるFWの加入には大感激している?同じく移籍最終日に加入したもう1人のFW、セルジ・グアルディオラ(バジャドリーからレンタル)も前節のレバンテ戦で土壇場に同点ゴールをゲットと、自信をつけているだけに、現在12位の彼らのことはあまり心配してないんですが、いやあ、ヘタフェの方がねえ。

というのも彼らは開幕から4連敗していて、まだ勝ち点1も獲得できておらず。アラベスも同じ0ポイントなんですが、あっちはビジャレアル戦が延期されて、1試合少ないんですよ。おかげで早くもミチェル監督解任説まで出てきた程で、更に中盤の要、アランバリがハムストリングスの肉離れで2、3週間離脱という悪いニュースも。また、前節のエルチェ戦のようなパスが2回と続かないサッカーを見せられてはたまらないんですが…ちなみにやはり苦境にある、お隣さん、柴崎岳選手がいる2部の弟分レガネスも土曜には今季初勝利を期してアモレビエタ戦。もう1つのお隣さん、アルコルコンなど、一足早く金曜にアルメリアに0-4と大敗し、2部の最下位2席をマドリッド勢が占めているのも何だか、先が思いやられます。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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